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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第一章 炎と灰の戦い
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第86話

 シセルが目覚めて翌日、雲の切れ間に月が見え始めた夜……


「前方に動きあり! ベルトムント兵です!」


 村の入り口で見張りをしていた兵士が声をあげる。


 視線を向ければ無数に光る松明と、夜の風に乗ってやってくる馬蹄の音が嫌でも耳に入ってくる。


 ベルトムントの騎兵隊、それもフェーンに居た『人狩り隊』だ。


「弓兵前へ! できる限り数を減らせ! 迎え撃て!」


 対するフロリーナ率いるズウォレス軍はルメール村で掘りと柵の後ろから弓で攻撃を加える。


 かつてのズウォレス王国の伝統的な戦術の一つをとった。


「まだだ! 引き付けろ!」


 徐々に近づいてくる馬蹄の音。


 周囲の兵士達が固唾を飲む。


「おいフロリーナ……敵か?」


「シセル!? 寝てないとだめだろう!?」


 外の騒ぎを聞きつけたシセルが建物の中から鞘に収まったままの長剣を杖にしてやってきた。


 上半身裸で血まみれで、暗闇でもわかるほど目は虚ろだ。


「見せろ」


「お、おいシセル!」


 フロリーナを押しのけ前に出たシセル、松明を掲げながら迫りくるベルトムント軍に目を向ける。


 ーーおかしい。


 シセルが彼らを見てまず違和感を覚えたのが敵の姿だ。


 暗闇で見にくいが、騎手の居ない空の馬が殆どなのだ。


「あれは偽装だ。何処かに本隊がいる」


「何?」


「先頭の黒い鎧の野郎とまばらにいる兵士は本物だろうが……間違いない」


「……分った。周囲を警戒しろ! 動きがあれば報告するんだ!」


 正面に置いた兵士はそのままに、兵士達数名は散っていく。


 とはいえ兵士達は不服そうだが。


「いくらシセルさんでもまともに夜見えるわけがない。きっと見間違いに……ん?」


 1人の兵士がふと手掘りで作られた堀を見てみる。


 堀の中に見えたのは複数の人型の影……


「おい敵だ!! ここにーー」


 焦った兵士が叫ぶが、間に合わなかった。


 不幸な彼は首に剣を突き立てられて人生を終えた。


「進め者共!! ズウォレス人に戦争の仕方を教えてやれ!!」


 叫びながら出てきたのは鎧と顔と盾を泥で汚したベルトムント兵。


 その叫びを皮切りにルメール村に大量のベルトムント兵が雪崩れ込んできた。


「フロリーナ様! 正面から1騎……いや10騎だ! 黒い鎧の兵士を先頭にして騎馬が突っ込んできます!」


「挟まれた!」


 先攻はベルトムント兵が圧倒的有利な状態で、この戦いは幕を開けた。



 

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