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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第一章 炎と灰の戦い
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第81話

 フロリーナ達が撤退している最中、ベルトムント王国南部ではエムレ河を挟んでシャルロワ王国との戦争が勃発していた。


 ベルトムント軍6万に対してシャルロワ王国が10万と優勢。


 互いに持ちうる戦力の限界が、ベルトムント南部に集結していた。


 先攻をとったのはシャルロワ軍。


 盾と槍で武装し南部に広がるトウヒの森に潜むベルトムント軍、それに対しシャルロワ軍はエムレ河の対岸から投石器、バリスタを大量に投入し攻撃を仕掛ける。


 ベルトムントとシャルロワを繋ぐ橋は落とされていた為、シャルロワ軍は泳いで渡河を始めた。


「正面突破だ! 積年の恨みを晴らせ!」


 後方で椅子に座りながら葡萄酒の入った盃を片手に、シャルロワ軍を指揮する将軍、ヨハン・マースはそう叫んだ。


 本来なら敵が正面に居る状況で河を渡河するなど無謀でしかないだろうが、数で無理やり押し通る。


 先頭のシャルロワ兵に被害が出始めたものの被害は軽微であった。


「あとはズウォレス軍……いや革命軍ですかな? あれがどう動くか」


 側近がそう耳打ちしてきた。


「最初はたかが5千の素人集団と思っていたが……まさか正規軍に勝利した挙句ベルトムントを国境付近まで追い詰めるとはな。いやいや驚かされた」


 シャルロワ軍は最初、フロリーナの言葉を小娘の戯言程度にしか考えていなかった。


 だが実際に戦ってみればズウォレス軍はかなり善戦している。


「そしてベルトムントとの戦争が終われば次はズウォレスですな。領土が沢山増える」


「いや、それは無いだろうな」


 将軍の答えに、側近はきょとんとしながら問い返した。


「な、なぜなのです? ズウォレスは弱りきっているでしょうに」


「シェフィールもそう思うだろうな」


 シェフィール、つまりはシェフィール公国はフロリーナが支援を要請した国。


 ズウォレスの北西に位置する島国だ。


「あいつらは金の匂いに敏感だ。間違いなくズウォレスに行く。そこに我々が行けば奴らと直接戦わなければならん。どうだ面倒だろう?」


「は、はぁ……」


「ズウォレスには間に入ってもらって、せいぜいシェフィールを削ってもらおう」


 将軍は盃を投げ捨てると側に置いていた剣を手に取り立ち上がる。


「さて行くか」


「ご武運を」


 投石機やバリスタを撃ち続けるシャルロワ兵達、その支援もあってエムレ河を渡河した兵士達が出始めた。

 

 初戦は順調だ。

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