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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第一章 炎と灰の戦い
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第78話

 大量の矢筒を持てるだけ持ったシセルがまずとった行動は、偵察をするために木の上に登ることだった。


 ーー糞が、フロリーナのお陰で後退する羽目になっちまった。


 内心毒づきながらあっという間に木の上に登るシセル。


 矢の残量は……30本と少々。


 これだけあればある程度は戦える、無論シセルが死ななければの話だが。


 




 その頃森の中に潜んでいるベルトムント軍は……


「敵が逃げるぞ、どうする?」


「追撃はするなと言われてる。このまま待機だ」


「けどよ、あいつらを全員殺せれば敵に損害を与えられる。それに褒美だってあるかもしれん」


「駄目だ。王の命令だぞ? そむいたら何を言われるか分からん。それに俺たちの役目はあくまで民間人がベルトムントに逃げるまでの時間稼ぎなんだからな」


 暗い森の中で短弓を手にして木の陰に隠れるベルトムント兵。


 彼らの意見はものの見事に割れていた。


 追撃するか、それともこの場に留まるか。


「待機だ。いいな?」


「ッチ……分ったよ」


 仕方なく引き下がるベルトムント兵、歯噛みしながらズウォレス兵が逃げた方角へと視線を向ける。


 広がる暗い森の中、人気は全くと言っていいほど無い。


 だが……


 ーーなんだ?誰かに見られてるような気がする。


 どこからなのかは分からないが、ベルトムント兵の何人かは視線を感じていた。


 だが周囲には木以外ほとんど何もないし、物音も小型の獣がはい回る音だけ、人間の動く音などは聞こえてこない。


「ん?」


 不意に、一人の兵士が何かに気が付いた。


 森の奥で何かが光ったのだ。


「なんーー」


「うおッ!?」


 声を発しようとした瞬間、強制的に外からの力によって黙らせられる。


 光った物、その正体は矢だ。


 僅かに降り注ぐ月の光に照らされたそれがベルトムント兵の額を正確に射抜いた。


「アルノーがやられた!」


「声を出すな!」


 慌てて木の陰に身をひそめるベルトムント兵達。


 矢の刺さった角度から察するに真正面から射って来ているのだろうが完全に分からなかった。


 いまだ姿を見せない敵は自分たちの視界の外から狙って射ってきているのだ。


 ーーええい何処に居やがる。


 木の影から少しだけ身を乗り出す。


 だが先ほどと何も変わらない光景が広がっているだけ、木の上にも誰も居ない。


「ぐうぅッ……右だ! 右から射られた!」


「馬鹿な……」


 最初は正面、次は右……


「左だ! アダムが死んでる!」


「くそ! ズウォレスの糞野郎共は何人いやがる!?」


 最初に被害者が出た後から、被害が大量に報告され始めた。


 四方八方から矢を射られ、射手は見えずにただ被害だけが増えている。


「まさか……『ズウォレスの黒狐』……」


「馬鹿言うな! あんな話でたらめだ!」


 ーーまさか、あいつがここにいるのか?


 傷ついた仲間を手当てしながら指示役の兵士は考える。


 どうすれば被害を抑えられるのか?


 徐々に増えていく仲間の死、焦りながら考えた末に出した結論。


 それは前進だ。


「お前等! 一塊になって前進しろ!」


「ふざけるな! 死にに行くようなもんだぞ!?」


「もうこれしかない! ここを素通りさせたら本陣まで空だぞ!? 突撃してあいつらを皆殺しにするんだ!」


「そんなにいうならお前ーー」


 反論した兵士の頬に穴が開いた。


 どこかから放たれた長い矢によって……


「あ、ああ……」


「突撃! 一斉にかかれ!」


 号令をかけて一斉に突撃するベルトムント兵、彼らにとって最悪となる夜が始まった。



 

 


 

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