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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第一章 炎と灰の戦い
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第54話

 橋で捕虜の虐殺が行われている間、フロリーナと5人の兵士と共に城の後方へと隠れながら侵入していた。


 そして目的地の手前にある整備された林……その中でシセルと合流した。


「呼んだか? フロリーナ」


「ああ呼んだよ。シセル」


 茂みの中でかたかたと震えながら待っていたシセル。


 使った大麻は既に効果を失っていて、後には手の震えが残っていた。


 それでもここに来るまでに何人かのベルトムント人を射殺したというのだから、流石と言うべきであろう。


「残念だが俺でもこの城の攻略は無理だぞ。大人しく兵糧攻めか力攻めしたほうがいい」


 シセルもフロリーナも、ベルトムント兵に気付かれないよう声をひそめる。


 そしてシセルの言葉はもっともで、彼の弓は城壁の前には無力だ。


「兵糧攻めに力攻めか……残念だがどっちもお断りだね。兵糧攻めは特に。ただでさえ少ない食料と武器をこんな序盤で消したくない」


「じゃあどうするんだ? まさか城壁を素手で登るなんて言わないよな?」


「私についてこい。……時にシセル」


「ああ?」


「泳ぐのは得意か?」


 この台詞と似たような言葉をシセルはどこかで聞いたことがある。


 ーーああそうだ、地下水道に逃げた時だ。


 それを思い出した瞬間、嫌な予感が頭をよぎった。






「じ、冗談じゃねぇ……」


「声を落とせ、なるべく波音をたてるな」


 シセル達は現在、フロリーナの後に続き堀の中をゆっくりと泳いでいた。


 無論鎧も剣も付けたままであるため水を吸ってとんでもなく体が重いのだが……


 ーー水の中も……こりゃひどいな。ヘドロが溜まってる。


 堀の下にはヘドロが堆積している上、よく見れば人が入れるような大きさの壺まで設置されている。


 沈めば足をとられて水死することは間違いない。


「城壁の手前で潜水してくれ、まさか水中で目を開けられないなんていう奴はいないな?」


 ーー馬鹿にするな。


 心の中で苦情を言いながら、徐々に徐々に城壁へと近づいていくシセル達。


 城壁の上には松明が掲げられている。


 見張りの兵士が気付いたら一巻の終わりだ。


 ーーよしいまだ!


 何とか城壁の手前まで泳いだシセル、先頭を行くフロリーナに続いて潜水した。


 そして潜水した後は濁りに濁った水の中でかろうじて見えるフロリーナの後を追いかける。


 そうしてついていくと、何か鉄柵のようなものがおぼろげに見えてきた。


 ーーなんだこれは?


 頭に疑問符を浮べるシセルをよそに先頭を行くフロリーナ。


 恐らく腐っているのであろう鉄柵を蹴り破って先に行く。


 フロリーナに付いていきながら周囲を注視すると……どうにも前方に灯りが見える。


 ーー内部に続いているのか? 


 だがここで疑問が残る、なぜフロリーナはこの侵入経路を知っているのか……と。

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