第53話
ズウォレス軍が攻撃を開始し10日が経過したころ、北部の部隊は初めての障害に阻まれた。
城だ。
ハルリン港から南下した場所にあるその城は名前をライデン城と言った。
周囲を水を入れた堀で囲み、頑丈な石造りの高い城壁に守られたそこは弓や槍、剣などといった軽装備のズウォレス軍の侵攻を阻む。
おまけに城につながる道は跳ね上がる鋼鉄の橋が一つのみ、無論これはベルトムント軍によって上げられ現在は使えない。
「状況はどうなってる?」
報告を受けて100名の仲間と共にライデン城へ到着したフロリーナ、彼女は攻めあぐねている自軍を見て眉根を寄せた。
「周囲の街や建物は殆ど落としたんですが俺達が攻めている間、この城にベルトムント兵達が立てこもりまして……攻めあぐねているのです。矢は届きませんし泳いで渡ろうものなら……」
「……」
そのまま無理やり堀を泳いで渡河して攻め込もうかとも思ったが城の周囲にいるズウォレス兵は200程度、フロリーナの連れて来た部隊100を合わせても300しかいない。
犠牲は避けたかった。
「狭間から射られて死ぬのは嫌だからな。いいだろう夜まで待つ。それまでにするべきことをしようか」
「するべきこと?」
ああそうだ、フロリーナはそう答えると妖しく微笑んだ。
夜……
空はすっかり暗くなり、ライデン城の周囲を松明の光だけが照らしていた。
そして周囲の街から殴られ蹴られ、あらん限りの暴力を受けたベルトムント人達が城に続く橋まで連れてこられ、ズウォレス兵の手にした剣で今まさに殺されようとしている。
捕虜を脅しの材料にするつもりなのだ。
「聞こえるか腰抜けのベルトムント兵共! 民の命が惜しくば橋を降ろし助けに来い! それとも貴様等は仲間の命など惜しくも無いか!?」
ズウォレス兵の一人が城の中にいるベルトムント兵に向けて声を張り上げる。
見張りの兵士が城壁の上から見ているだけだがそれでも十分、中にも声は届いているはずだ。
「よしやれ!」
ベルトムント兵が城から出てこないのを確認すると、ズウォレス兵は一斉に捕虜の首を切った。
夜の空に木霊するのは悲鳴と鮮血の滴る音……
見張りに城壁の上に登っているベルトムント兵が歯噛みしているのがよくわかる。
「お前たちが出てくるまで何度でもやる用意がある! そこで肉の山を作るのを見ているがいい! よし次だ! 後列の奴等を立たせろ!」
「やめてくれ! 助けてくれ!!」
失禁しそうになるほど怯える捕虜を無理やり立たせ、殺すために前に出す。
まだまだ始まったばかりだ。




