第46話
大量の樽に入った食糧、既存の干した肉や油漬けのタラ、シセルが考案した食料も少量入っている。
そしてその他防具に、槍や矢などの武器類。
それらを積み込んだ船が、護衛と共にメラント島を出てある場所を目指して向かって行く。
目指す場所はホルウェ港よりも西にある港、ハルリン。
そして補給部隊兼援軍の指揮をとるのはブラームだ。
「後続に追い付かれるなよ! 先に戦闘を始めてる部隊をなるべく待たせないようにすすめ!」
ブラームがメラント島をでたあと、フロリーナは旧ズウォレス領に送る援軍の部隊1000を南部の船着き場に集結させていた。
砂浜に雑多な防具と武器で武装した彼らは島の守りを除いた今フロリーナ達がもてる全勢力。
統一性が全くない彼らだが腕に付けている旧ズウォレス王国の旗が彼らをズウォレス軍だということを教えてくれる。
「現地では破壊工作が主な任務になる。荷運びは自発的に行うか捕虜を使え! 井戸水は必ず確認して飲め! 死体が投げ込まれて汚されている場合がある!」
砂浜の岩や船の渕に座る兵士達に作戦や注意事項などを武装した兵士たちに伝えるフロリーナ。
彼女自身も戦装束に身を包んでいる。
ベルトムント兵から奪った鎧と剣を身にまとい、背中にはズウォレス人の象徴とでも言うべき長弓を背負う。
「ああそうだ言い忘れていたことがあった、ベルトムント人の女はやめておけよ。獣姦になる」
茶化したように言うフロリーナに、その場に居たズウォレス兵達は笑った。
「そういえばシセルさんは? あの人はいらっしゃらないんですか?」
「そうだ! まだお顔を見ていない。フロリーナ様。あの方はどこに?」
ふと一人の兵士はシセルが居ないことに気が付いた。
フロリーナの知らない間に、シセルの噂は様々な場所に伝播しているようだった。
ーー使うと実績と不安を残し、使わないと不安だけを残すか。
ブラームからの報告を思い出しながらフロリーナは少しだけ思案を巡らせる。
「寝坊助だな。シセルは北部の方に居るはずだ。少し迎えに行ってやってくれ」
「なんだよ寝坊かよ! 仕方ない奴だな! はっはっは」
「じゃあ俺達が行ってきますよ。フロリーナ様」
本当は連れていくつもりはあまりなかったが、その方が味方の士気が上がるならとシセルを呼びに行かせた。
「さて、残りの者は早く船に乗り込むんだ。ぼやぼやしているとブラームに何を言われーー」
フロリーナが突然黙り込んだ。
それとほぼ同時、周囲の兵士が悲鳴をあげた。
フロリーナを黙らせたもの、それは……
彼女の背中に突き刺さった矢だ。




