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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第一章 炎と灰の戦い
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第41話

 ーーああ、いた……


 夕陽に照らされたシセルが次に狙うのは青年のベルトムント兵。


 他の仲間達数名と共に盾を構えて落ち着きなく辺りを警戒している彼はおそらくまだ経験が浅いか単に怯えているかの二択だろう。


 少ない兵士を散開させてシセル達を探しているのだろうが仲間がすぐに助けに来れない状況はシセル達にとって願ったり叶ったりだ。


 ーーおれのこきょうがこうさせるんだ……これはおれのせいじゃない。


 影が地面に映らないよう、足音のひとつも出ないようにシセルは慎重に屋根を移動する。


 そうして射るのに最適な場所まで移動し、初めて矢を射るのだ。


「おい上だ! 隠れろ!!」


「え?」


 ーーけどられた……


 下に居る兵士に気取られた。


 だが狙いを定め弓を既に引いているシセルに支障はない。


 叫びながら盾を構える前のベルトムント兵にただ放つのみだ。


「ああッ!! 足が……ええい糞!! 助けてくれ!」


 盾を構えるも間に合わず、シセルの矢がベルトムント兵の太ももを抉る。


 今度は狙った場所に当てられた。


 だがこれでは足りないとばかりにシセルは痛みでうずくまった兵士のもう片方の足に矢を打ち込んで動けなくさせる。


 まだ若い、青年の兵士だった。


「待ってろ今行く!」


「やめろ行くな!」


 負傷した青年兵士を助けようと飛び出した仲間。


 だが彼は次の瞬間には頭を撃ち抜かれてその場に倒れ伏した。


「出たら的になるだけだ! 屋根の上に上がれ!」


「待ってろ!」


 建物の中から屋根へと上がろうとした仲間だったがそれもすぐには出来ない。


 その間にもシセルは仲間を殺そうと移動と射撃を繰り返してくる。


 建物の中に隠れようにも少しでも盾から体を出せば射抜かれてしまう。


 完全に縫い留められてしまった。


「全力で走れ! 俺たちは逃げるぞ。後は登った奴らに任せろ! 行くぞ」


 盾でシセルの矢を防ぎながら青年の仲間たちは一塊になって全力疾走。


 ベルトムント兵の何人かはシセルに射抜かれて負傷してしまった。


「待ってくれ!! 行くな!! 行かないでくれ!!」


 青年の悲痛な声は聞くに堪えないもので涙を誘うものであったが……どうやらもう彼に餌としての効果は無いようだった。


「戻ってきてくれ!! 助けーー」


 古い餌は取り除いた。


 ーーやののこりは……やづつふたつあわせて13ほんか……


 シセルは矢筒の中身を確認したあと追手をかわすために屋根の上を全力疾走してその場を去った。


 後に残ったのは悲痛な顔に涙を浮かべたままの青年の死体のみだった。

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