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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第一章 炎と灰の戦い
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第40話

 夕暮れ時のホルウェ港にて……


 シセルとブラームは仲間に指令を伝えた後ホルウェ港へとたどり着いたがそこで問題が発生した。


 ベルトムント軍が居たのである。


「数は少ない。200人前後だ。斥候だろうよ」


 シセルが目を細めながら港の偵察をしている。


 現在シセル達はホルウェ港の廃屋と化した建物に隠れつつベルトムント軍をやり過ごしているが……このままでは船が使えない。


 無理矢理船をだそうとしても矢を射かけられそこで二人は終わる。


 果たしてどうするか?


「このまま待っても意味はない。弓をとれシセル。相手は兵士だ。尻込みなんてしないよな?」


「……ああ勿論」


 ブラームの言葉は先ほどの事を考えての発言なのだろう。


 敵の兵士を殺せ、容赦するな。


 そう言っているように感じた。


「やってやる。さっさと奴らを殺して戦争を終わらせてやる」


 そう言ったシセルが手を伸ばしたのはフロリーナから貰っていた麻の小袋。


 中に入っているのは乾燥させた芥子の樹脂……阿片だ。


「お前それは……」


「口から摂ると効きが遅いらしいが火がうかつに使えないんだから仕方ない」


 口に含んだシセルが顔をしかめる。


 口一杯に苦味が広がり、とんでもなく不快な気分だ。


 だがそれももうすぐ終わる、普通では得られないような快感が罪悪感も恐怖も洗い流してくれるだろう。


 当然殺人への嫌悪も。


「死ぬなよシセル。俺は向かいの建物からやる。こっちは任せる」


「ああ……任せろ」


 握りしめた弓を持って、ブラームは外へと出て行った。


 

 



 ホルウェ港の建物は多くが2階建て、高いものでは5階建ての建物もある。


 そんな場所であるため上から矢を射るのはとても楽なのだ。


「くそったれ! ズウォレス兵だ! 上から来るぞ。気をつけろ!」


 沈みゆく夕日を背にして、シセルは存分に眼下に見えるベルトムント兵目掛けて矢を射かけた。


 長い黒髪を靡かせ、無情に矢を射かける彼の姿を見てベルトムント兵は歯噛みした。


 ベルトムント兵が持つ弓は短く扱いが容易な代わりに射程が短い。


 それに加え頭上の有利もある、彼らはシセルに対しろくに矢を当てることができない状況になっていた。


「負傷者は屋根の下に行け! 俺達は屋根のーー」


 射られた矢が指示を出していたベルトムント兵に突き刺さった。


「お、おのれ……」


 矢はシセルが放ったものだったが、急所を外して肩に当たってしまった。

 

 わざと……ではない。


 ーーなんではずした? ねらいはしっかりしていただろう? なんでだ?


 シセルは心の中でそう思いながら、夕陽で眩しい中でも目を見開いて敵を睨んでいた。

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