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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第一章 炎と灰の戦い
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第27話

「船を出せ! 早くしろ!」


「置いていかないでくれ!!」


 ついに海岸にたどり着いたベルトムント兵達、ズウォレス兵の追撃を振り切った彼等は我先にと船に乗り込み次々と海へ逃げ延びていた。


 その姿たるや筆舌に尽くしがたい醜さだった。


 定員を超過しそれでも乗ろうとした兵士を船から蹴り落とすのはまだマシだ、なんと剣で仲間を斬り殺してまで出発する船もあった。


「まごまごしてる奴等と向かってくる奴だけ狙え!! 海に出た奴等は放っておくんだ!」


 先頭に立って戦うブラームは周りの兵士に指示を出しながら、槍を振るう。


 彼の手に握られていたのは死体から奪い取ったベルトムント兵の槍。


 その鋭い穂先が穿つのは敵ではなく持ち主の仲間というのは実に皮肉な話だが……


「おおっ!?」


「せめて道ずれにしてやる! ズウォレスの豚が!!」


 そんな中砂浜に突っ伏していた死体が起き上がり、ブラームの足に剣を突き立てた。


 ベルトムント兵の死に損ないが居たのである。


「大人しくくたばってろ! ベルトムントの犬!!」


 痛みに顔をしかめながらそう叫び突き刺してきたベルトムント兵に槍をくれてやろうとしたが……間に合わない。


 ブラームの足から引き抜かれた剣が、今度は彼の心臓めがけて迫る。

  

 ーー間に合わん! だが刺し違えてでも殺す!


 肉を切らせて骨を断つ、ブラームは死ぬ覚悟を決めた。


 だがそんなブラームの覚悟は次の瞬間には不要になった。


「ぐわッ!?」


 風を切る音と共にどこかから飛来した矢がベルトムント兵の額を射抜き、本物の死体に変えた。


「これは……シセルか。あの野郎やりやがる」


 矢の飛んできた方向に視線を送ると、無表情で弓を構えるシセルの姿があった。


 長い黒髪を束ねず風に流し、淡々と弓を射る彼の姿はまるで獲物を狩る狩人のようだった。


「ベルトムント兵の船は殆ど消えたぞ! 海岸の敵の掃討を急げ!」


「狩れ狩れ!」


 日が沈み始めた時、メラント島の戦いは終局を迎えた。


 最後の一人が倒れた後、ズウォレス兵たちは皆一様に槍を掲げ声を張り上げた。


 我々こそが勝利者であると、あのベルトムント軍を追い返した強者の集まりであると。


 




 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1ページ平均1000〜2000文字で展開も早く、とても読み易い。 主人公は神から特別なチート能力を貰ったわけでもなく、あくまで人間として無双しているのが良い。 主人公の武器が弓というのもな…
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