第26話
「追撃の手を緩めるな! 沿岸に追い詰めて押し潰せ!!」
木の上で矢を放ちながらブラームが大声でそう叫んだ。
盾を構えたまま走るベルトムント軍ではあったが焦っている為に行きにかからなかった罠を踏んで負傷者を増やしていた。
「負傷兵は後ろに下がれ! 槍兵前に出るぞ!」
矢筒の中身が空になったブラームはそう叫ぶと木の上から飛び降り槍を構えた。
木の棒を削って穂先を焼いて固くしただけの槍だが、当てられれば十分殺傷力がある。
ブラームは先頭に立ち他のズウォレス兵を鼓舞しながら槍を振るう。
盾の隙間に見える足を突き刺し、逃げ遅れ地面に倒れたベルトムント兵を背中から突き刺して止めを刺す。
立ち向かってくるベルトムント兵も勿論居たがそんな勇敢な兵士は複数人に囲まれ倒される。
負傷するズウォレス兵もいたもののほぼ一方的にズウォレス軍が追撃していた。
「シセルは見えるか!?」
「いいえ見えません!」
「分かった!」
ーー死ぬなよ、シセル。
心の中で姿の見えないシセルに祈りを捧げた後、ブラームは再び槍を全力で振るいだした。
「無事な矢は……7本か」
シセルのいる海岸は既に人気は無く彼は射殺した死体から矢を含め使えそうな物を物色していた。
矢羽根が取れていたり途中で折れたり、または矢尻が消えていたりするものを除けば使える矢は少ない。
そして物色しながら戦闘中であるにも関わらず、シセルは死体の持っている槍や剣を見て感心した。
ーー全部鉄で出来てる。これだけの人数の槍や剣を全部鉄で作るなんてな。
シセル達の国では槍の穂先や剣を作る際、主に青銅を使う。
鉄を作れないわけではないが炭の消費が激しいからだ。
「……いかんいかん。つい集中してしまった」
薬の効いているシセルは今のところ吐き気も何もないがそれもいつまで続くか分からない。
早く戦闘に戻らなければ……
「一本貰っていくぞ」
結局長剣一本だけ腰に差したシセル。
髪にくっつけた海藻やカキ殻を取り、元の黒髪をさらけ出した。
弓を握る手にも自然と力が入る。
ーー待っていてくれよ。ブラーム。




