第27話
フェーンに居るブラームの前にその一団が現れた時、ブラーム含むズウォレス人達は怒り狂った。
「久しぶりに会うな。ご機嫌いかがかな? クソアマ」
ブラームの視線の先に居るのは指の欠損した白髪の女、トルデリーゼ。
笑顔で怒るという器用なことをしているブラーム、そんな彼に対し、トルデリーゼは微笑みながら話しかけた。
「約束だ。こちらに引き渡してもらおう」
「いいだろう」
トルデリーゼは部下に命令するとあっさりとフロリーナの子供、ディートリンデとイグナーツを解放した。
だが違和感が残る。
ブラームの言った約束とは一体何なのか?
周囲の兵士達の視線が集まる中、ブラームは説明……いや宣言をした。
「これより俺達ズウォレス軍はベルトムント人と共闘体制をとる!」
その言葉にズウォレス人はもとより、人狩り隊の人間すらも唖然としていた。
「馬鹿な! なぜ我々がこのような糞共と共闘などせねばならんのですか!?」
トルデリーゼの隣で黙って立っていた兵士が詰め寄る。
「元々私はそのつもりで動いてきた。今回の戦争で我々が協力する代わりにベルトムント領内で自治を認めてほしいとな」
「なっ!?」
当然聞かされていないのだろう。
「ここに集うズウォレス兵も聞け! これよりベルトムント兵は友軍となる。私闘の類は禁止だ! 分かったか!?」
ブラームとトルデリーゼの言葉に、周囲の兵士達は黙り込んだ。
「さて、具体的な話をしよう。ついてこい」
「ああ」
ブラームはそう言うと、トルデリーゼを連れて歩いていった。
「それにしても。お前がこんな交渉を持ちかけてきたときには驚いたぞ」
建物の中に入ったブラームはトルデリーゼを見ながらそんなことを言った。
「『人質の解放、戦争の協力、戦力の提供、これらと引き換えにベルトムントに自治区を作らせてほしい』か、最初は疑っていたが色々と便宜を計り、情報も提供してくれた。お陰で随分と動きやすかったよ」
「約束は守ってもらうぞ。ブラームとやら」
いつだったか、丁度黒布隊をシェフィールに派遣したあたりだろうか?
トルデリーゼから協力をしようと打診され、そこから今に至るのだが……何とも奇妙な感覚だった。
ブラーム、いやズウォレス人からしても、ベルトムント人からしても敵同士だった人間と手を組んでいるのだから。
「さて、前置きはこのくらいにして。話をしよう。作戦は2つ。これからによってこの2つの作戦のうち一つを選択して実行することになる」
「ほう?」
ブラームが話し始めて暫く、外で騒ぎが起きていた。




