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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第三章 薬から始まる侵攻
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第19話

 背中に大量の石を詰めた袋を背負って夕暮れの森の中を全力疾走するシセル。


 両手には弓と矢筒を持って、つけ慣れた革鎧に汗が滲み息は荒い。


 ──よし、あとは4つ。


 落ち葉を踏み散らしながら走り続けるシセル。


 急に立ち止まったかと思えばシセルは間髪入れずに弓に矢をつがえ、森の中のある1点に向けて矢を射る。


 軽い音が森に鳴り響く。


 シセルが射った矢は赤い塗料が塗りたくられた板……自作した的に当たった。


『弓の腕はある程度戻ってきた。だから次は体力だ』


 シセルは自分の訓練の内容に体力づくりの項目を付け加え、現在はこうして訓練に明け暮れている。


 とはいってもまだまだ元の状態には程遠い。


 筋肉が減り、馬力も落ちている。


 今のシセルは本来の7割ほどの速さで走るのが精一杯だ。


「シセルさーん! 頑張ってくださーい」


「ええい話しかけるな!」


 森の中を走り回るシセルへ無邪気に手を振りながら応援するカルラ。


 何かあった時すぐに救護するため、そう言って彼女は付いてきたが今のところ彼女の出番はなさそうだ。


 ──よし、最後だ。


 次々と目標に当て続けるシセル。


 ようやく最後の的が見えてきた。


 周りを木の枝で囲って他の物よりもかなり小さくした的にシセルは挑む。


 弓を構え、矢を限界まで引き、そして放つ。


「あっ……」


 カルラが気まずそうに声をあげたのは次の瞬間だった。


「……まだまだか」


 シセルが放った矢は僅かに逸れ、的の周りを囲っていた枝に阻まれて終わった。


「あっ、でももうこれだけ当てられるようになったんならもう本調子といってもいいんじゃないですか?」


「これは狭間から矢を射かけてくる相手に対して攻撃する為の訓練なんだ。外してしまったら意味がない」


 少し機嫌を悪くしながら矢の回収に向かうシセル。


 最近になってようやく癇癪を起こさなくなってカルラも安心して見ていられるようになった。


 だんだんと成長していくシセルの姿もみてとれる。


「次は当たりますよ。大丈夫」


「そうなるといいが……何はともあれ訓練だな」


 折れた矢を捨てながら、そう言った。


「じゃあ今日は帰りましょう。ご飯を食べて、しっかり寝て……その繰り返しです」


「そうだな、帰ろうか」


「ええ」


 袋の中に入れていた石を全て捨てて、シセルはカルラと共に帰路についた。


 


 

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