第17話
翌日早朝、メラント島南部の森の中にて。
「こんなところに川があるとはな」
「メラント島は島とはいえちょっとした都市が2つすっぽり入るくらいには大きいからな、そりゃ川もあるさ」
シセルとブラームは島の南部に流れる川へと来ていた。
メラント島の水源のひとつでもあるその水は様々なものに利用されているのだが、森を入ったばかりの所にある下流では主に水浴びなどに使われている。
そして二人も水浴びのために来た。
「俺達は平気なんだがなぁ、軍隊経験も長いし、臭いも慣れてるから」
そうボヤくのはブラーム、これにはシセルも頷きながら同意。
が、フロリーナの前でこの発言をしたところ顔を真っ赤にして激怒された。
『身体は清潔にできる時にしっかり洗っておけ!! 不潔が元で病気になったらどうするつもりだ? 周りの人間にも感染するかもしれないんだぞ。ああ分かったともお二人がそのつもりならそのままいて病気になるといい、私が責任をもってお二人をこんがり中までじっくりしっかり焼いてやるとも。流石の病気といえども火には勝てないだろうからな! お二人が焼けて香ばしーー』
とまぁこのように子供をしかりつける……というには言い過ぎなほどに責められた。
「まぁ、確かに水浴び自体は悪いことじゃないしな。やっとくか」
「ああ」
そういいながら脱ぐ二人。
二人とも素っ裸になって川に入った所で、水の冷たさに震えながらお互いの身体を見て一言。
「「お前の身体変だな」」
同じことを同時に口にしていた。
まずはシセルから。
「元弓兵って聞いてたがなんだその戦傷、ほぼ全身にあるな」
ブラームの身体はというと、古い治癒した戦傷とみられる傷ばかりでとても痛々しい。
続いてブラーム。
「お前もおかしいだろうその身体、左半身は糸屑みたいな筋肉してるのに右半身は……別人の身体くっ付けてるのか? 弓兵は筋肉の付け方が特殊とは聞いてるがそれほどのはみたことないぞ」
ブラームの言う通り、シセルはかなり異様な身体をしていた。
右半身だけ凄まじく鍛え上げられ、まるで鋼のような筋肉が隆起しているのに対し左半身がかなり貧弱に見える見た目をしている。
「流石は『ズウォレスの黒狐』最初から最後まで弓で戦い続けたわけだな」
茶化すようにブラームはそう言って小突いてくるが、これにはシセルも複雑な表情を浮かべた。
「残念だがその異名は俺の物じゃない、受け継ぎはしたが俺は認めていない」
「なんだそれ? 意味が分からん」
「説明すると長くなるんだがな。まずはーー」
ブラームに説明しようとしたその時、何か液体を川へと注ぐような音がして後ろを振り返った。
二人から少し離れた上流で小便をしている兵士が居た。
その後二人は小便兵士を川に投げ込んだ。
「ああクソ……小便頭から被ったのと同じじゃねぇか」
「もうちっと上流に行こう。そしたら多少はマシなはずだ」
そういいながら上流へと向かおうとした2人。
「シセルさんブラームさん。どうやらフロリーナ様が演説するみたいだ! 集まってくれってさ」
シセルとブラームは全裸のまま固まった。




