第14話
子供達とカルラが見守る中、静かにシセルは弓を降ろす。
シセルが見据えていた先には木で作った的、そこに何本かの矢が突き刺さっている。
多くは当たっていても端のほうというのが殆どであったが2本だけ真ん中に当たっている。
「やったじゃないですか! ついに当たるようになりましたよ!」
隣ではカルラが飛び跳ねるような勢いで喜んでいた。
「半年やってようやく当たるようになったか。えらく時間がかかったよ」
そして矢を射たシセルはというと冷めた表情を浮べようと努力しているが……おもいっきり口角が吊り上がっている。
「シセルせんせーすごーい」
「ありがとう」
子供たちは矢を拾い上げに行ったシセルに後ろから賞賛の言葉を送る。
「シセルせんせーすごーい」
「ああ、ありがとう」
「シセルせんせーすごーい」
「応援感謝するよ」
「シセルオジサン、最近風呂入ってないからかちょっと匂うよねー。あとビール頂戴」
「誰だお前は」
子供たちの声に混じってやたらと野太い……そして茶化すような口調の声が混じる。
シセルが振り返った先に居たのは快活に笑う男、ブラームの姿がそこにはあった。
「ブラーム……」
「ようシセル、随分瘦せたな。だがまぁちょっとはマシな顔するようになったじゃないか」
笑いながらブラームは手に持った瓶を振っていた。
家の中にずかずかと入ってきたブラームは勝手に杯を2人分出して勝手に飲み始めた。
「腐っても国の主だろうお前は。こんな場所に来て大丈夫なのか?」
「腐ってもは余計だこのやせっぽちが」
どっかりと椅子に座ったブラームに、シセルはチーズを出した。
「弓の腕は戻ってきたみたいだな。まだまだ粗削りだが」
「まだまだ時間はかかりそうだ」
「お前の師匠のように、長弓捨てて短い弓に変えたらどうだ? その方が扱いやすいだろう」
そんなブラームの言葉に、葡萄酒を飲んでいたシセルは眉根を寄せた。
「短弓? あんなものを使うのは子供か、それかベルトムント人だけだ。俺はとっくに弓兵を辞めたがそれでも誇りまでは捨てちゃいないぞ」
「変わらんなぁ中身は。それこそフロリーナと一緒にベルトムントとやり合った時から」
いつの間にか、ブラームの顔から表情が削げ落ちていた。
杯に映る自分の顔を睨んだまま、彼は固まっている。
「お前の師匠から話は聞いてるな?」
「……ああ。聞いたさ。あのアマをぶんなぐってやろうとも思ってたが……それももう叶わんな」
皮肉たっぷりにそう言いながら、シセルはブラームを黙って見据える。
続きを言え、そう言わんばかりに。




