第13話
2週間後……
穏やかな日常が流れるズウォレスと違いシェフィールは新たな脅威に対して立ち向かう必要があった。
「ええい一体どうなっている! 今度は麦角だと!?」
「は、はい……そのようで」
執務室にいるエルフィーは怒りをあらわにしていた。
その原因となったのは報告に来た側近の言葉。
『麦角による中毒者が大量に出た』というものだ。
麦角とはライ麦、麦などの穀物に付く黒い角のようなもので食べれば中毒を起こす。
死ぬことは少ないが手足が腐り落ちることもあるという恐ろしいものだ。
「自分たちで食う麦くらいしっかり選別しろというのだ全く」
「対応はどういたしましょう? 下手をすればズウォレスの工作かも」
「仮にズウォレスがやったならもっと致死性の高い毒を使うだろうから今回は違う。麦角が出たところに使いを出せ。選別をしっかりやれとな」
「承知しました」
その場を去って行く側近を黙って見送りながらエルフィーは思案を巡らせる。
──仮にこれがズウォレスの攻撃だとしたら、奴らは何を考えている? 次に奴らが打つ手はなんだ?
シェフィールの南東部、ノリ―村にて。
ここは麦角が発生した村であり被害者は既に30名を越えていた。
被害者が大勢出た後でようやく麦穂を調べるようになったがそれははっきり言って無駄だ。
何故ならば畑から取れた麦に麦角など入っていないのだから。
「『アレ』を飯に入れて、その後症状が出始めて、患者が大勢出た後さらに3日かかって報告か……遅いな」
シェフィール人と同じ服を着てノリ―の近くにある木立の影から様子を伺う男達が居た。
彼らはズウォレス人であり、ブラームが組織した『黒布隊』の兵士達だ。
村の食料庫の中に砕いた麦角の粉を大量に入れたのは彼等だ。
「あいつ等本国にいて攻撃を受けるなんてことは思ってないだろうからな。それでシェフィールの領主様の動きは?」
「そっちは別の奴が行ってる。一旦俺たちは退くぞ。これ以上攻撃するなと先代からの命令だ」
彼らは実地訓練ということである程度簡単とされる任務をいくつかこなしていた。
今回のこれも任務のうちだ。
「ああとっととあいつらをぶち殺してぇ……」
「なに、俺たちの訓練期間ももうすぐ終わる。そうすりゃ思う存分殺せるさ。さぁ行くぞ」
嬉しそうな顔をしながら、黒布隊はその場を後にした。




