第7話
「列に並べ! 順番にぶち殺してやる!」
爪や牙で身体中に傷を作り、血を流しながらシセルは短剣を手に狼達を殺しにかかる。
カルラに襲いかかっていた狼を倒し、残りは目に見える範囲で5頭、ひょっとしたらもっといるかもしれないが……
──ベルトムントとの戦いの時、一切助けてくれなかった神様。今が仕事時だぞ。
とうの昔に信仰をやめた神に祈りながら、シセルは果敢に立ち向かった。
「うぉっ!? ええい獣臭いんだよお前らは!」
飛びかかってきた狼の腹に何度も何度も短剣を突き刺す。
「キャウンキャウンッ!」
たまらずシセルから離れた狼。
狼の腹から流れる血を見ながら、シセルはニヤリと笑う。
「そら次はどいつだ? 早くかかってこい! ほら早く!」
狼相手に啖呵をきるが、どうやら襲うのを躊躇っているようだった。
──今のうちだ。
襲ってこないのを感じとったシセルが短剣を手にしたまま駆ける。
背中を見せるのはよろしくないがこの際知ったことか。
シセルの背後から土を蹴ってこちらに向かってくる音が聞こえる。
「しつこい奴等だな。頼むからどっかに行ってくれよ」
アーメルス村、シセルの家にて。
「カルラちゃん? 一体どうしたんだ? 怪我してるじゃないか」
「ご先代様!? なんでここに!? いえそんな事よりシセルさんを助けてください!」
家にはなぜか老人が灯りをつけて本を読んでシセルを待っていたのだがそこに現れたのはシセルではなく医者の娘であるカルラだった。
息を荒げ、一大事であろうことを伝えようとしているが一切老人には伝わっていない。
「落ち着け、一体何があった? シセルは?」
「林で狼の群れに襲われたんです! 助けてあげてください!」
カルラの言葉を聞いた瞬間、壁にかけていた弓と矢筒を持って外に走った。
「シセルさん……」
「離せ! うっとおしい!」
足に噛みついた狼の口に短剣を突き刺して剝がしながらシセルは今も抵抗を続けていた。
家まで行けば籠城もできる、助かる。
だがあと少し走ればいいだけなのに一歩が踏み出せない。
狼もあと3頭残っている。
「頭を下げろシセル!」
絶望しかけた時、不意に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その通り頭を下げるシセルの頭上を、風を切る音が駆け抜けていく。
「キャウンッ!?」
瞬く間に狼が倒れていく。
狼たちの首や腹にはシセルが使っている物とは違う短めの矢が突き刺さっている。
「ジジイか……?」
「おうシセル、しっかりしろ! 走るぞ!」
肩を貸しながら、シセルと老人は家まで急いだ。
シセルの身体は噛み傷だらけ。
本人もかなり疲弊していた。




