第48話
エルフィー率いる南側の部隊。
冷え始め、露出した手をさすりながらフェーンの方を睨んでいたエルフィーだったのだが……
「ほう……毒をばらまくか。だが風向きからして森からフェーンに流れておるではないか。味方の犠牲は織り込み済みか? ズウォレスの指揮官よ」
北の森から流れた煙は森だけではなくフェーンの方角に向かって流れていく。
ーーこれでは味方も死ぬだろうに、よほど切羽つまった状況だということか。
白髪交じりの茶髪をいじりながら、エルフィーは突撃を指示する。
「よろしい。諸君そろそろ幕引きだ! 側面からの奇襲はない。安心しろ! 全軍突撃」
もう伏兵はいないと踏んでエルフィーは突撃の指示を下した。
シェフィール兵達はやっと出番かと言わんばかりに好戦的な笑みを浮かべながら次々と抜剣、フェーン目掛けて全力疾走していく。
ーー前衛の犠牲は多少出るかもしれんが、バリスタも投石器も向こうに向いたまま、こちらへの攻撃は薄かろう。
総勢2万9千人の歩兵が一斉突撃、鏃型に展開されたシェフィール軍は真正面にいるズウォレス兵からの攻撃にひるむことなく突き進む。
流星の如く降り注ぐ矢の雨に加え、数機のバリスタがシェフィール軍の方を睨む。
だが遅い、もはやズウォレス軍が何をしようと正面の兵士は手遅れだ。
「さて、ここを落とせば後はシャルロワか。少々時間がかかったな」
安全な後方で白髪交じりの茶髪をいじりながら、エルフィーは満足そうに笑みを浮かべた。
「本国への連絡が楽しみですね」
「まだ前哨戦だ。気を抜くな」
嬉しさを隠そうともしない兵士を嗜めながらもエルフィーも既に戦争が終わった後の事を考え、自分の利益はどれほどかと計算を始めていた。
フェーンにいるズウォレス軍……
「退け退け! ごっほごっほ建物の中に隠れろ! ああくそ喉が……」
「フロリーナ様の言われたとおりにするんだ。急げ!」
石造りの建物の中に急いで入り床板を外して地下室に隠れるズウォレス兵達。
といってもズウォレス各地に広がる地下水道跡地のように大規模に穴を広げているわけではない。
土を叩いて固めただけのそこはせいぜい武器や食糧を隠す倉庫の役割しかないのだが……それでも一時姿を隠すことはできる。
「頼んだぜシセルさん。御先代様」
「ああ、それとあとは南部の連中次第だ」
同じ地下室に隠れ潜んだ仲間と祈りながら、彼等は矢筒の補充を始めた。




