第46話
最初に戦いが始まったのはフェーンの北側にある森だった。
空が曇り始めた正午、シェフィール軍の別動隊が北側の森から侵入。
雪の積もった森のなかを進むズウォレス軍と出くわした彼等は交戦を開始した。
「なんでこんなところにシェフィール兵がいるんだ!?」
「向こうもおんなじこと考えてたんだろ! いいから射れ!」
ズウォレス軍は50名程度に対し、シェフィール兵は約1000。
槍と長弓で武装したシェフィール兵は少しずつ犠牲を出しつつも確かにフェーンに向かって進軍していった。
シセル、老人はなんとか押し止めようと弓を射るものの、既に矢は残すところあと2本、射る相手は選ばないといけない状況だ。
「ジジイ、これはもう無理だぞ!」
「いいやまだだ! 突っ込めシセル! 大将の首をとってこい!」
「無茶言うなできるか!」
シセルも老人も大声で叫ぶ。
「ああもう仕方ない退け! 儂に考えがある!」
「最初ッからその考えとやらを実行しろクソジジイ!」
木から飛び降りたシセルと老人は一目散に後退していった。
一方シェフィール軍……
「狼煙が上がっています。どうやらズウォレス軍と交戦した模様」
北側の森の中から空に高く上がる煙を見て、兵士はエルフィーに報告を入れた。
「よしよし、こちらも行くぞ。矢と石の雨が降るだろうが気にするな。突撃せよ」
南側に陣取ったエルフィーは北側の森から攻めいった部隊がものの見事にズウォレス軍と接触したのを聞いて喜んでいた。
「さてこれで北側は封じた。次はどう出てくるか? こちらに攻め込んでくるか? それとも森の戦力を下げてフェーンに籠るか? はたまた地下から来るか? まぁ地下水道跡もここにはないし、新たに掘るような時間も無かろう」
エルフィーは目の前に広がる戦場を見ながら思案を巡らせていた。
ズウォレス軍がとるであろう次の戦略はなんぞや?と……
他にとる道はなんぞや?と……
「おい、誰か使者を送れ。私の親しい『友人』にな」
しばらく考え込んだあと、エルフィーは近くの兵士に伝令を頼んだ。
「何をお伝えしましょう?」
「『シャルロワを押さえろ』それでいい」




