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元弓兵は帰れない。  作者: 田上 祐司
第二章 呪われた黄金
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第41話

 さて、ズウォレス兵に案内されフロリーナと直接面会することができたシセルと老人だったが、シセルはフロリーナに近づくや否や両肩を掴んで鳩尾に膝蹴りを叩き込んだ。


「かはっ……いきなりやってくれるな……シセル」


 他のズウォレス兵やブラーム、ラルスの居る前でこの始末。


 周りの兵士達は剣を一斉に抜き、それをブラームがなだめ、ラルスと老人は止めに入ろうと割って入った。


「おおい待て待てシセル! 鳩尾に膝はやめとけ! 下手すりゃ死ぬ!」


 もう一発叩きこもうとしたシセルを老人が止める。


 そしてシセルの顔を覗き込んでみると……彼は仮面のような無表情。


 死んだ青い瞳を細めながらフロリーナを見ていた。


「平和を維持するために尽力すると言っていたな、あれは嘘だったのか? ここに来るまでに子供が弓を持っていたぞ。あれがお前の言うところの平和の維持のための策か? 答えろフロリーナ」


「何か誤解しているよシセル。私は……」


「ズウォレス側からシェフィールに戦争を仕掛けたと聞いている。お前の指示だろう。目的は一体なんだ領土か? それともシェフィールで奴隷狩りでもするつもりか?」


 答えによっては殺す、シセルの顔にはそう書いてあった。


「待ってくれシセル。それは違う。それは……」


「俺のせいだ」


 あわてふためくブラームを押しのけ、赤毛の男が姿を現した。


 ラルスだ。


「ズウォレスの北西部で金が見つかってな。俺はその金を使ってシャルロワから兵器を買いあさった。そして村の人間が近くに最近出没していたシェフィールの船を沈めた。それがこの戦争の始まりだ」


「お前が……」


 ーー南部の部隊を率いていた程の人間がこの始末とは。


「シセル、今回の件はフロリーナの責任じゃない。無論指導者としての責任はあるが……」


「そんなクソッタレな理由で、また国が灰になるのか」


 しかも今度は逃げる敵を追いかけるだけではない。


 向かってくるシェフィール軍を倒さなければならないのだ。


「シセル、また力を貸してくれないか? 今は1人でも強い兵士が必要だ」


 腹を押さえながらフロリーナはそう言ってきた。


「……また人殺しか」


 2年前のベルトムントとの戦争で散々人を殺してこの始末。


 フロリーナに関わってもろくなことがない。


 だが今さらアーメルスに戻っても死ぬだけ。


 それにシェフィールには恨みがある。


「飯と酒、それと薬を保証してくれ。あと金も」


「兵士にはどれも支給される、心配するな」


 シセルの答えにフロリーナは笑った。


 





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