第33話
「クソッ! どこに消えた!?」
吹雪の中、シセルを追いかけていたシェフィール兵3名。
途中まで確かに追跡できていたはずだったが、ライデン城から少し離れた辺りでシセルは姿を消した。
周りに見えるのは氷の張ったライデン城の周囲を囲む堀とその周囲に広がる開拓された畑のみ。
だが雪で視界が悪く殆ど何も見えない。
「雪で何も見えーー」
「おいどうした!? 何がーー」
「ジョージ? オリバー?」
キョロキョロと周りを見ていると不意に仲間の声が消えた。
そして残ったシェフィール兵が仲間は何処や?と右に左に視線を動かしていくと……
「なっ!?」
矢が刺さった状態で倒れている人間が2人……
2人とも正確に額を矢で射抜かれている。
ーークソッ!何処だ!?何処にいやがるんだ!?
シェフィール兵は長剣を構えながら、恐らくは何処かに隠れているであろうシセルを探すが彼の目に映るのはだだっ広い畑と、そこにある黒い岩のみ。
「うん?」
シェフィール兵は、岩に目を向けた。
ーーあんなところに岩なんてあったか?
長剣を構えて近づこうとするが、既に遅かった。
「がっ……」
突如岩が姿を変えたかと思うと、兵士の額目掛けて矢が飛んできた。
だが矢は額ではなく喉からうなじに向かって貫通する形で当たった。
即死出来なかったのは彼にとって不幸だったことは言うまでもない。
「ふ、ふごっ……がっ……」
「じゃあな」
もう彼を気にする必要はない。
シセルはゆっくりと死にかけの兵士の横を過ぎ去った。
その頃、老人は……
「7人目っと……賞金でも出ればもっと気分よく殺せるんだがなぁ」
吹雪に白髪をなびかせ、移動を繰り返しながら短弓で敵の指揮官のような人間を片っ端から狩っているが……あまり効果はなさそうだった。
「シセルの野郎は何処にいやがるんだ。年老いた師匠だけで一体どこまでやらせるつもりだ」
城の外から攻撃していた老人だったが、そろそろ限界だ。
敵であるシェフィール兵が老人がいる方角を目指して大挙してきた。
シェフィール兵の数は……およそ500はいるだろうか?
ーーたかだか2人程度にここまでやるとはな。
シセルと合流する予定の場所までは多少距離があるうえ、囲まれてしまえば逃げられなくなってしまう。
急ぐ必要があった。
「楽しみは次に取っとくか。またな、名も知らぬシェフィールの指揮官殿」




