第12話
突撃するベルトムント軍を見て覚悟を決める兵士達。
「ここを通すな!! こいつらだけは何が何でも全滅させるんだ!」
砂煙を巻き上げながら右翼へと迫ってくるベルトムント軍の歩兵達。
穂先を揃え盾を装備した彼らに対し、ズウォレス軍は矢と槍で応戦する。
だが……
「くそ!! 盾が邪魔で矢が通らねぇ!」
「勢いが止まらんぞ!」
ベルトムント兵が装備した盾のせいでズウォレス兵の放つ矢がほぼ無効化されていたのだ。
一応盾を貫通した矢もあり、敵の腕や肩に当たって負傷させることには成功しているものの、死亡者は殆どいない。
その上に士気の高さも厄介だ、死に物狂いでズウォレス軍の包囲を突破しようと迫ってくる。
「ん? あいつは」
突破されそうな状況で一人のズウォレス兵がベルトムント軍の先頭を走る人間に目をつけた。
「先頭を走ってる奴! あいつが指揮官だ! あいつだけは何が何でもぶっ殺せ!!」
先頭を走っている豪華な装飾が彫られた鉄鎧を身に着けたベルトムント兵。
その存在が味方であるベルトムント兵の士気を上げているようだった。
「射かけろ!」
無数の矢を放ち、先頭を走るベルトムント兵に攻撃を仕掛けるが……
「盾が邪魔だ!」
見事なまでに盾に阻まれ負傷させることも難しい有様だった。
「どうにかしないと」
「どいてろ」
「え?」
隣で声がしたかと思うのとほぼ同時、弓の弦が鳴った。
隣を見れば居たのは長い黒髪の男がいて……
「ぐわっ!?」
もうすぐお互いの槍と槍が触れる、そんな時に先頭のベルトムント兵が転倒した。
「一体何が……?」
「ぼさっとするな! 敵は目の前だぞ!」
そうズウォレス兵を叱咤する人物こそ、先ほど矢を放った人物。
弓を携えたシセルの姿がそこにはあった。
「そ、そうだ! 槍兵ふんばれ! 味方が来るまでな!」
「側面に回り込め! 味方を射るなよ!」
「長剣を抜け! 突破させるな!」
各々の判断で武器を抜き放ち目の前の敵に食らいつく。
シセルの一射で、ズウォレス兵達は正常に機能し始めた。
「げぼっ……ま、まだ倒れるなよ」
吐きそうになるのをぐっと堪え、シセルは目の前の敵を倒すことに集中することにした。
「なんだあの男は、覚悟を決めたら別人じゃないか」
シセル達が戦っているのを最中、フロリーナ達はホルウェ港へと侵入していた。
船を奪取するために侵入したのだが当然港にも住民がいる。
「ズウォレス人だ! 逃げろ!!」
こうして悲鳴を上げながら逃げて行く者や向かってくる者、様々な反応を見せる住民たち。
彼らに対するフロリーナの指示は……
「向かってくる者だけ殺せ! 戦闘員以外は船を出す準備をしろ! 急げ!」
基本的に無視だった。




