第11話
ズウォレス軍の攻撃が始まったホルウェ港……
「くそったれ!! 反乱を起こしたズウォレス人は少数じゃなかったのか!?」
「数もドンドン増えてきてる! 撤退しろ!」
「駄目だ囲まれてる!! 逃げ場がねぇ!! 住民も逃がさなきゃならねぇのに!!」
周囲をズウォレス軍に囲まれてしまったベントムント軍は建物の後ろに隠れ降り注ぐ矢の雨から身を守っていた。
だがそれはいずれ終わるだろう。
ズウォレス軍が徐々に包囲の輪を縮小してきているからだ。
「将軍!! いかがしましょう!?」
護衛と共に佇む鎧姿の将軍に作戦の指示を乞う。
「全員集結させろ、一塊になってここから離脱する」
「じ、住民は?」
兵士の問いに、将軍の表情が曇る。
「……仇は討つ」
「……そう……ですか」
重々しい口から出た言葉で港に元々居た住民の運命は決まった。
「敵は恐らく突破しようと突っ込んでくるか、あるいはそのまま持久戦を仕掛けてくるだろう。間違いなくね」
一方でのフロリーナ陣営はというと、弓を用いての戦闘を繰り広げていた。
敵の姿が見えれば射かけ、敵が建物の影に隠れている間に少しづつ槍兵と合わせて前進する。
ホルウェ港の制圧は時間の問題だった。
「シセル、答えを聞こうか。貴方はどう決断した? このまま戦争に参加するか? それとも臆病者のままでいるか?」
余裕のできたフロリーナがシセルに問うた。
「……やるよ。もうこうなったらさっさと戦争を終わらせて最小限の犠牲で終わらせてやる」
「移り気の激しい男だな。まあいいが」
満足そうに青い瞳を細めるフロリーナを横目に、シセルは戦場と化したホルウェ港に目を向けた。
恐らくはフロリーナの言う通りどちらかの作戦をベルトムント軍はとってくるだろうが、どうなることか……
「敵が出てきたぞ!! 右翼に行った!!」
「来たか。シセル、腕の見せ所だ。頼んだぞ」
「ああやってやる。見てろ」
敵の居るホルウェ港を見れば建物から出てきているベルトムント兵が見える
そして彼らは矢尻型のような陣形をとりつつ突破しようと突撃してきている。
全員が巨大な盾と槍を持ち、砂塵を巻き上げ突撃するその様は雄牛のような勇猛さだ。
「シセル、これを使え」
「ん?」
敵の進軍する方へと行こうとしたとき、フロリーナは矢筒に何本かの矢を入れてきた。
「これは?」
「残念だがそれだけしかない」
渡された矢を見てみると矢尻が鉄で出来ている。
おまけに返しがない。
「鎧を貫通させるための矢だ。返しが付いている物より貫通しやすい。おそらくシセルが一番の弓の使い手だろうからこれは貴方に託す」
「分かった」
「幸運を」




