第18話
旧ベルトムント王国首都、ヴェスト。
雪の降り始めたその地には、エムレ河付近よりは多少マシな光景が広がっていた。
かつて王が住んでいた城は徹底的に破壊され、今は瓦礫が残るのみ。
周囲の建物は悉く取り壊されて土地は畑にされ、痩せたベルトムント人が作物の世話をしている。
「これが……かつてのヴェストだというの……?」
かつての首都の有り様を見て、ディートリンデは驚愕していた。
「お嬢ちゃん、一体どうしたんで?」
「こいつの故郷らしいからな。ここは」
荷車に乗り、頭巾の男と話をしながらシセルは周りの景色を見ていた。
空は灰色に曇り、大地は死体になりかけのベルトムント人で埋め尽くされ、白い雪が積もる。
「…………」
「どうだトルデリーゼ、ここがお前の故郷だ」
一緒に乗っているトルデリーゼはというと、特に驚くでも、悲しむでもなく普通の顔をしながらシセルの話を聞き流す。
「そういやシセルさんは何をしにここに来たんです? 観光……なわけはないか」
「この餓鬼……フロリーナの子供に故郷がどうなったのか見せてやろうと思ってな」
「え!? フロリーナ様の子供!? そ、そりゃちょっと不味くないですか!?」
「まぁ、フロリーナにとっては都合が悪いだろうな」
おまけにシセルはフロリーナがこの状態になるように指示したと教えてしまっている。
フロリーナが怒るのは間違いないだろう。
「あー……シセルさん。言いにくいんですが私は……」
「ああ、俺達はここで降りる。お前は行け」
おそらくここが頭巾の男の目的地ということはないだろうが、面倒事の気配がしたのだろう。
巻き込むつもりのないシセル達はそのまま降りる。
「さて、今晩はまた泊まりだな」
ひとまずシセル達は夜営の場所を探し始めた。
シセル達は宿を探すついでに色々な場所を見て回ったが、どこも殆ど変わらず酷い光景が広がっていた。
頭巾の男曰く、犯罪も多いらしい為野宿はやめておいたほうがいいと言われていたが……シセル達に金はないし、泊めてくれるような友人もここにはいない。
だから……
「さっさとやるぞトルデリーゼ。夜になっちまう」
「ああ」
シセル達はヴェスト近郊にある林で一泊するようにした。
まだ若い針葉樹を根本から切り倒し枝を重ねて天井を作る。
後は下に来ていた毛皮を敷いたら寝床の完成だ。
「トルデリーゼ、雪をとってきてくれ。俺は火を起こす」
よく分からない針葉樹の枯れた小枝を片手に、シセルは火起こしを始めた。




