第17話
埋葬されることもなく路上に放置された死体を避けつつシセル達はベルトムントの首都を目指した。
「……ん? シセルさん? ああやっぱりシセルさんだ!!」
ベルトムントの地を進むシセル達に声をかけてくる人物がいた。
雪を被った石畳を踏みあらしながら馬に牽かれた荷台に乗る頭巾の男……
ーー誰だコイツは?
黒い頭巾を被ったこの男にシセルはとんと覚えがない。
「覚えてらっしゃらない? まぁ致し方ありませんな。私はルメール村での決戦の時、生き残った兵士です」
「あの時か……」
ルメール村……2年前の戦争でズウォレス領北部の部隊がほぼ全滅したあの戦いだ。
「今は物資の輸送をやってましてね。ああシセルさんはどこに行くんです? よろしければ乗って下さい。『ズウォレスの黒狐』が一緒なら道中安心だ」
にこにこと腐臭漂う場所に似つかわしくない人好きのする笑みを浮かべる頭巾の男。
「首都のヴェストに行くか?」
「今から向かいますよ。さぁ乗った乗った。お連れさんもね」
頭巾の男の言われるままに荷台に乗り込む3人。
砂埃が非常に不快だが、歩くよりは楽でいい。
「さぁ出発だ! 今日はズウォレスの英雄さんも一緒だ!」
その頃、アーメルス村では……
「待て待て待て待て待て待て待て!! 頼むからちょっと待て!! いくらズウォレスの黒狐と言われた儂でもちょっとそれは無理だ!!」
焦りに焦る老人と、建物の中を埋め尽くすズウォレス兵達……
老人は一匹の羊を抱えた状態で、木造の建物の隅で震えていた。
ズウォレス兵達が向けてくる槍に対して。
「こっちにフロリーナの子供が歩いてくるのを見たという奴が居てな。正直に話してくれるよな? 俺は忙しいんだ」
革鎧を着込んだブラームが机に座り短剣を建物の壁に投げて遊んでいる。
だが老人は語調で理解した、今のブラームは怒りの臨界点に達している。
「わ、分かった!! 話す!! シセルとお嬢ちゃんとトルデリーゼはベルトムントに向かった!! だから頼むから槍を下げろ!」
「もう少し早く喋ろうな? おいお前ら行くぞ」
ブラームが顎で指すと、建物の中にいたズウォレス兵達が去っていく。
ーーシセルの野郎、こいつらが来るのわかっててわざと儂だけ残したな!!
おっかないズウォレス兵が去ったあと、老人は羊を抱き締めた。
……何故だか羊に対して妙な愛情がわいた。




