第14話
ライデン城の貴賓室に使者を招き入れたフロリーナとブラーム。
一応手入れもしていたし最低限の調度品も置いておいたが、質素なその部屋にシェフィールの使者は眉根を寄せた。
金糸の豪華な服に身を包んだ使者は小柄な男で、正直道化のように見える。
「お待たせして申し訳ない。今回はどのようなご用件で?」
赤い生地を張り付けた胡桃の椅子に使者とフロリーナは深く腰掛け、話を始めた。
「単刀直入に申しますと、我がシェフィール公国と同盟を結んで頂きたいのです。かつてのズウォレスとシェフィールの関係に戻る為に」
使者からの言葉に、フロリーナは心の中で舌打ちをした。
「同盟……」
「先の大戦では申し訳ないことを致しました。我々も出兵の準備を進めておりましたが戦争には間に合わずーー」
ーー『先の大戦』ね……
2年前の事か?
それとも7年前、ズウォレスが一度滅びたあの戦争か?
どちらにせよシェフィールからの支援は受けていない、同盟を結んでいた7年前ですらも。
使者はなにやらその事について言い訳を続けていたが、フロリーナは目だけは使者に向けたまま、彼の言葉はほとんど聞き流していた。
「いかがでしょうか? ズウォレスの復興にはそれなりの資金も技術も必要でしょう。我が国の優秀な技術者を派遣することも可能となりますが」
ーーそうやって自国の人間を送り込んで、やがては自分の国の一部にするつもりだろうが。
フロリーナの怒りが増す。
「わかりました。お返事はまたこちらから差し上げます」
「いえ、この場で頂きたい。私も手ぶらでは帰れないのです」
ーー殺してやろうか?
喉から出そうになった言葉を飲み込みながら、フロリーナは笑顔で返す。
「ご厚意はありがたいのですが、我々には対価として支払えるものがありません。支援が必要となる時は来るでしょうが今は我が国だけでこの国を盛り立てるときと考えております。ですので今回のお話は……」
「我々の申し出は受け入れられないと?」
「そうなります」
使者は不機嫌さを隠そうともしていない、隣で立っているブラームも恐らくは内心腸が煮えくり返っていることだろう。
無表情を装ってはいるが。
「ふむ……では港を開放し交易を再開するというのはいかがでしょうか?」
「そちらに輸出できるものが何一つないのです。ですので……」
ーー我が国に足をつけさせてなるものか。
のらりくらりと使者からの声を躱し続けるフロリーナ。
「致し方ありませんな。今日の所は失礼させていただきます」
「また貴国の支援が必要とする時は、よろしくお願いいたします」
舌打ちをしそうな勢いで立ち上がった使者。
力の全くこもっていない握手を交わした後、彼は去って行った。




