第11話
翌朝……
「あ、う……」
傷に巻かれた包帯をさすりながら、ディートリンデは目を覚ました。
丸太がそのまま天井と屋根を兼ねていて、窓は開かれ青空が見えている。
「あれ? 皆は?」
周囲に人気が無いことに気が付いたディートリンデ。
焚火の火も無く、毛布はもぬけの殻。
昨日居たはずのシセルにトルデリーゼ、老人は何処に行ったのか?
ディートリンデは外に出てみた。
「おお、起きたか。傷は痛むか?」
外に出て、物音がする家の裏へ歩いていくと老人が居た。
シセルもトルデリーゼも居ないがなにやら肩に手拭いを乗せて、雪の積もった地面を掘っている。
「ありがとうございました。手当していただいて」
「なに、気にしなさんな」
老人は地面に視線を向けたまま、背中を向けてそう答えた。
「……何をしてるんですか?」
「野菜を掘り起こしてる。手伝うかい?」
「役に立てるかは分かりませんが……」
ディートリンデに農業の経験はない。
土いじりをしたこともだ。
「手で掘り起こすだけだ。お嬢ちゃんでもできるさ」
手招きする老人の所へ、ディートリンデは歩いていく。
「何の野菜ですか……これは?」
「ビーツだよ。お嬢ちゃん」
雪の下からひょっこり顔を出しているのは赤いカブのような根菜。
葉は緑で根が赤い、奇妙なカブだ。
「シセル達は罠を見に行くと言ってたから、多分夕暮れまで戻らん。道の整備もするだろうしな」
「そうなのですね」
ーー朝早くからこんな仕事をするんだ……
ディートリンデには初めての経験だった。
いつもしっかりベッドで眠り、朝食をとり、勉強するだけの自分とは違う。
「冷たい……」
「それぐらいは我慢してもらわんとな」
苦笑いをする老人の隣に腰を下ろし、雪をかき分けてビーツを探す。
大きい物、小さい物、いびつな形をしている物、様々だ。
「シセル達が雑に育てたせいで不細工になっちまったな」
「取った後はどうします?」
「この籠に入れてくれ。一杯になったら帰ろう」
ーーもう既に8割くらい入ってるんですが……
とはいえ入れろと言われたならそうするべきだろう。
「………………」
微笑を浮かべる老人に、ディートリンデは不思議な感覚を覚えた。
「終わったらこれでスープでも作ってやろう。暖まるぞ」




