8話
ーーキーンコーンカーンコーン
テストの終了を告げるチャイムが鳴った。
『あ〜終わったー!』
『このあと遊びに行こうぜ〜』
クラスメイトたちのそんな会話が聞こえてくる。
高校三年生とはいえやはりテストはテスト。面倒なことには変わりがない。
僕も大雅と合流していつも行くファーストフード店でテストの疲れを癒していた。
「いや〜やっとテスト終わったな〜…」
注文したメロンソーダを飲みながらテスト終わりの開放感に浸っている。
「お前の場合はテストが終わったからだけじゃないだろ〜?」
大雅がニヤニヤしながら足で小突いてくる。
そう、大雅にはこの間あった教室のことを伝えていた。
「うるさいなぁ〜…考えるだけでも緊張してきた…」
「予定は決まってるんか?」
「いやまだ〜、テスト終わってから決めようって感じ」
と大雅と話しているとスマホに一件の通知が表示された。
『テストお疲れ様、ケーキ屋さんいつにしよっか?』
「…っっ !」
「どうしたんだよそんなニヤけて〜気持ち悪りぃぞ」
表情だけで全てを察したのか茶化すような口調で大雅がおちょくってくる。
こちらとしてはそんな茶化しに反応する余裕なんてあるはずもなくどうやって返そうか、今返していいのか、こっちから時間とか決めたほうがいいののか?自分に経験が無いのでどうしたらいいのかさっぱりわからない。
「お〜い…すんごい顔してるぞ今お前」
その言葉が耳に届いて現実に引き戻される。
「僕そんなすごい顔してた…?」
「してた」
一人の時ならまだしもよりにもよって大雅にそんな顔を見せるなんて…絶対三ヶ月間はイジるネタにされること間違いなしだ…
「な〜大雅…相談なんだけどさ〜」
「しらね」
「まだ何も言ってないんだけど…」
見透かされたような先出し回答に苦笑しつつも、大河ならそう答えるだろうなと納得する。
「どうせいつもの泣き言だろ、んなの自分で考えろっつーの!」
「厳しなぁ…まぁ頑張ってみるよ」
「おう、応援はしてるわ」
「そんじゃそろそろ出るか?飲み終わったし」
空になったコーラのカップを揺らしながそう尋ねてくる。
「そうだね、テスト疲れは十分回復できたしもう行こっか」
そう大雅の提案に乗りつつも頭の中ではどうやって返信をしようか。そればっかりが頭の中を駆け巡っている。
その日の夜、ようやく返信するイメージが固まって携帯を開く。何度も頭の中で文章を考えてはやめてを繰り返して頭がどうにかなりそうだ。
『テストおつかれさま、中川さんのおかげで古典も解けたよ、ありがとうね』
『ん〜来週の日曜日とかどうかな?』
頭の中で何度も考えた文章を打ち込んでいく。
当たり障りの無い無難な文章だがそれが精一杯だ。
(あとは返信を待つだけか…)
そう思ってベットに横になって返信を心待ちにすることにした。
しかしテストの疲れが思ったより溜まっていたらしくすぐに瞼が重くなってくる。
寝息を立て始めた頃携帯に一つの通知が入る。
『来週の日曜日だね、楽しみにしてる!』