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最後の1年なのだから  作者: くろは
3/10

2話

「好きです、俺と付き合ってください」

高校3年生に上がってすぐ、私は告白された。


「…ごめんなさい。」


少し申し訳なさそうに微笑みながら、断った。


「それじゃあ…教室に戻りますね。」


背中からは「はぁ~だめだったかぁ」とか「どんまいどんまい!」と茶化してるような男子の声が聞こえてきた。


私は一人で教室に戻っている中、さっきの告白について考えていた。


(なんであの人は私に告白してきたんだろう…)


恋愛自体に興味はあるし、白馬の王子様とまではいわないけどロマンチックな恋をしたいと思うし好きな人から告白されたいという感覚は持っている。でも…まだ人を好きになったことはない。


(さっき告白されたけど嬉しいというか、どうして?って思っちゃったから好きじゃなかったんだよね…)


「…はぁ好きってむずかしいなぁ」

私は誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。

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そんな告白から2週間ほどが経った。


帰りのHRが終わり帰る準備をしていると


「中川さん、ノート見せてくれてありがとね」


とノートを貸していた隣の席の男子が話しかけてきた。


「いえいえ、写し終わりましたか?」


「うん、とても見やすかったよありがとうね」

「じゃあノート返すよ~ありがとね」


と言ってノートを渡して帰っていった。


(そういえば数学でわからないとこがあったから質問しに行こうかな)


そう思い教室を出ると、偶然帰ろうとしてた小倉あおいと会った。


「お、春華じゃん!帰るとこ?よかったら一緒に帰らない?」


あおいとは高校1年の時知り合ってそこからなんだかんだ仲良くなって今では親友だ。


「ごめんねあおい、ちょっと先生に質問したくて。また今度一緒に帰ろ~」


「そっか!なら仕方ないね~。また明日!」


と言って彼女は手をぶんぶん振りながら帰っていった。


(いつ見ても元気だなぁあおいは)


と思いつつ職員室に向かっていると前から小野寺君が来るのが見えた。

彼とはクラスが3年間一緒だが話しかけても目を合わしてくれないし、無愛想だから正直嫌われてるのかなぁとか少し思ったりしている。


(確かHR終わった後先生の手伝いで職員室まで行ってましたね…)

(素通りするのもアレですし、挨拶はしましょうかね)


「先生の手伝いは終わったんですか?小野寺君。」


「え…あ、あぁ終わったよ。プリント運ぶだけだったし…」


と彼はやはり無愛想に返答してくる。少し寂しいなと感じて、これ以上引き留めるのも申し訳ないなと思ったので。


「そうなんですね。あ、呼び止めちゃってごめんなさい。帰るとこだったんですよね?」


「あ、あぁそうだね」


帰るのを邪魔しちゃ悪いなと思ったので、別れの挨拶をしようと思ったが、ふと、彼の様子がいつもと違う気がした。


「ん…どうしました?小野寺君。」


「あ、あの…きょ、今日の古典のノート、写させてもらってもいいかな…?あ、あと少し時間がかかるかもしれないからLINE交換してもらってもいい…かな…」


その時初めて彼と目が合った。


(小野寺君の目、綺麗だな…)

「………」


本来だったら目を合わせるなんて大したことないし、ノートの貸し借りや連絡先の交換くらい3年間同じクラスだったら特段珍しいことじゃないだろう。


(胸が…苦しいな。なんだろうこの気持ち)


ハッとして誤魔化すようにクスッと笑い私は


「いいですよ、古典のノートと連絡先ですね。」


と言った。


(男子と連絡先交換するの久々だな…少し恥ずかしい)


その恥ずかしさを誤魔化すように意地悪っぽく笑って


「ノート汚しちゃだめですよっ。汚れてたらいつでも連絡しちゃいますからね。」


とだけ言って職員室に向かうことにした。


質問も終わって下駄箱で靴を履き替えてると、メッセージが届いた。

画面の通知を見てみると小野寺君からだった。


〈今日はありがとう、おかげ様で助かったよ〉


〈こちらこそ、役に立ったならよかったです〉

〈無理に急がなくていいですからね〉


〈いやいや!中川さんも授業で使うだろうし明日には返すよ!〉


メッセージ上だからだろうか、小野寺君は結構しゃべってくれる。


(小野寺君ってこんな感じに話すんだな…3年間いたけど知らないことばっかだ)

(もっと話したいな…)


しかし後悔の気持ちも襲ってくる。もっと早く小野寺君と話していれば、もっと早く連絡先を交換しとけばと感じてしまう…

でもその後悔を感じたからこそ私はこれから先後悔しないように頑張ろうと決心した。


(最後の1年…だもんね)


(これが好きって気持ちなのかはまだ私にはわからないけど…この気持ちを無視したら私は絶対後悔する)


そう思って小野寺君からのメッセージを楽しみに待ちつつ校舎を出た。


「…早く明日にならないかなぁ」


そう空に向かって呟くのであった。













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