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【なろうラジオ大賞4】

毎日同じ缶コーヒーを買うお客さん

作者: 桜橋あかね

僕は至って普通のフリーター。

現在は、給料がちょっとお高めである深夜のコンビニバイトに励んでいる。

……まあ田舎だから、人があまり来ない理由もある。

あまり人と接触したくないから。


その僕が、あるお客さんの事が気になった話。


▪▪▪


それは、今のバイトを始めて2日目からの事。

日付が変わった頃に、一人の女性が来店する。


その女性は、一本の缶コーヒーを買っていった。

その時は、別になんとも思わなかった。


……まあ、それからというもの。

僕が居る時はほぼ同じ時間で、同じ缶コーヒーを買っていく。

で、一緒に仕事をやる事がある先輩にその女性の事を聞いた。


「ああ、あの人ね。毎日来ているよ。話はしたことないがなぁ」


「……そうっすか」


「気になるんか、あの人」

先輩に図星を言われる。


「まあ、ちょっと」


「だとしたら、一言話しかけてみたらどう?何かしら反応あるかもよ」


……先輩の言う通り、なんかもしれない。

ここは当たって砕けろ精神で、話しかけてみよう。


▫▫▫


そして、今。

またあの女性のお客さんが、来た。


缶コーヒーを取り出し、レジへ来た。


「……あ、あの」

レジの対応をしながら、僕は話しかける。


「は……い、何でしょう」

ちょっと困惑気味だったが、その女性は返す。


「いつもこの時間帯で、同じ缶コーヒーを買うのがちょっと気になったんです。……あ、いやその、変に思ってるとかではなくて」


そう僕が言うと、女性の表情が和らいだ。


「……あ、あー、そうなんですね。私、仕事で毎日遅くなるんです。帰り道のコンビニがここしか無いので、コーヒーを買って飲むんですよ」


どうやら、深夜までの仕事をしているみたいだ。


「その、ツラくないんですかね。毎日こんな時間まで仕事なんて」


「……まあ、だいぶ慣れましたよ。もう数十年もやってますからね。」


「へえ……」


「よっぽど、コンビニの深夜業務が大変だと思いますよ。頑張ってくださいね」


そう女性が言うと、缶コーヒーを持って去っていく。


「ありがとうございましたー」


▪▪▪


その日の仕事が終わって、家に帰る。

ふと携帯から地元のネットニュースを見ると、一昨日近所で事故があって、車に乗っていた女性が亡くなったそうなんだが―――



その女性は、缶コーヒーを買っていく()()()()()()だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] すでに亡くなっていたんですね……。
[一言] 死んでも仕事にいっちゃったんですかねぇ。成仏してください……。
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