心の声が聞こえる人間嫌いの俺はクラスのすごい美少女が俺を好きなことを知っている。
俺の名前は霧島秀一ちょっと特別な力を持っている高校2年の16歳だ。家族構成は父親と母親と俺の3人だ。
俺が持っているちょっと特別な力とは、人の心の声が聞こえることだ。
俺はこの力のせいで幼い頃から苦労をしている。何故ならこの力のせいで人を信頼できなくなってしまったんだ。
今はこの力を少しは押さえることができる。少しぐっと力を込めて押さえれば声が聞こえなくなる。
だが幼い頃はできなかった。だからそれで友達もできなければ大人も信用できなかった。
人の汚い心の声が聞こえてしまい人間が嫌いになってしまったんだ。
俺の親は、俺が心の声を聞こえることを知っている。だがそんな俺を嫌わずに大事に育ててくれた。本当に優しい親だ。
だから優しい人間がいることは知っている。だが俺は怖いんだ。もし仲良くなった友達が俺のことを心の中で馬鹿にしたり罵っていたらどうしようと。
だから俺はいままで友達というものができたことはなかったし、好きな人ができたこともなかった。
だがこの力にも便利なことがある。例えば授業中に先生に問題を解くように言われても、先生の心の声を聞けば答えが分かるのだ。
他にも先生がどんなテストを作るか分かるし、テスト中も分からない問題があったら頭の良いクラスメイトの心の声を聞きながらやればいいのだ。
この力は、スポーツにも使える。特にディフェンスの時に役に立つ。
バスケットボールやサッカーなどをやっているときに相手がドリブルでどっち進むか分かるし誰にパスをするのかも分かる。だからそのタイミングでボールを奪うことができるのだ。
だから俺はこの力に苦労をしてきたが嫌いになったことはない。
だが最近特に困っているのだ。
なぜなら、クラスで一番の美少女が俺のことを好きになってしまったからだ。
(好き好き好き好き好き好き霧島くん好き好き好き好き好きあっ! こっち見た! 霧島くんかっこいいかっこいいかっこいい好き好き)
などとバグったように繰り返し同じことを言うこの女の子は名前は久遠冬花だ。
久遠冬花は、美少女だがクラスで避けられている。理由は心の声が聞こえないと冷たい人間に見えるからだ。
彼女はとてもクールに見える。話しかけられても、「そう」や「わかった」などと表情一つ変えずにいる。ずっと無表情で会話をつまらなそうにしているように見えるのだ。
だから彼女は避けられるようになってしまった。誰も彼女には話しかけないのだ。
だが彼女の心の声は表情と違った。話しかけられている時の心の声は
(あぁ緊張するよう! 私変な顔してないかな! この人友達になってくれるかな! 私と話してくれて嬉しいな! えへへ)
と表情と全然違った。俺はその声を聞いたとき思わず二度見をしてしまった。
だが普通の人間には心の声が聞こえない。だからみんなに避けられるようになってしまった。
その時の心の声は
(あぁまた駄目だった……。友達できると思ったのに……。もう誰も私に話しかけてくれない)
と言っていた。
俺はそれを聞いて可哀想だとは思っていたが、人間と仲良くする気はなかったため無視をしていた。
だがある時、彼女が困っているところを助けたんだ。
その時、俺は始めて友達が出来るような気がしたんだ。
(どうしよう、どうしよう)
と放課後、久遠は困ったような声でなにかを探していた。
それを見た俺はなぜだか放っておけなくて声をかけた。
「なにか探してるのか?」
「えぇ家の鍵を落としてしまって」
と無表情でそして少し睨むような目で俺に言った。
(久しぶりにクラスの子に話しかけられた! 嬉しいな! 緊張するよな! 変な顔してないかな?)
と心の声が聞こえる。
きっと彼女は緊張してしまってこんな表情になっているんだろうなと俺は思った。
「俺も一緒に探すよ」
「ありがとう」
(ありがとう! 嬉しいな! 優しいな! 霧島くん!)
と俺は鍵の特徴などを聞いたあと探した。
そうして見つけて彼女に渡した。
「ありがとう、霧島くん」
と彼女は言い笑った。その顔はすごく可愛かった。
(ありがとう! 霧島くん!)
俺はなんとなく、久遠とは友達になれるような気がした。
だから次の日から久遠に話しかけに行ったんだ。始めは久遠の心の声は普通に喜んでいた。
(霧島くんが私に話しかけてくれる! 嬉しいな! もう私たち友達かな?)
とか
(初めての友達嬉しいな! お話し楽しいな!)
とか、とても可愛かったし話していて俺も楽しかった。
だが彼女の心の声はどんどん変わっていった。
(楽しいな! 楽しいな楽しいな !霧島くん霧島くん霧島くん)とか
(こんなに優しいなんて! 霧島くん霧島くん霧島くん好き好き好き好き好き)
とどんどん彼女は壊れていった。きっと彼女は初めてできた友達が嬉しかったんだろう。
彼女は少し話しただけで周りはすぐに離れていきずっとひとりぼっちだった。
だからこんなに彼女と話したのは家族以外では俺だけだったんだろう。
俺も初めて友達ができて嬉しかった。久遠は俺のことを裏切らないだろうと思ったし信じていた。家族以外でここまで信用できたのは久遠が初めてだった。
だが別の意味で裏切られた。まさかこんな風になるとは予想もつかなかったし、今の彼女は少し怖い。
今日の学校が終わり彼女が俺に話しかけてきた。
「霧島くん、一緒に帰りましょう?」
「ああ、いいよ」
と今では当たり前のように一緒に帰っているが、初めの頃はクラスメイトがすごく驚いていた。
(久遠が話しかけた!?)とか
(なぜ、霧島と!?)
などと言っていた。
俺と久遠は仲良くなったが、いつも俺から話しかけていたから、クラスメイトが驚いていたのだ。
まぁ俺もすごく驚いたが。
でも久遠が話しかけてきてくれたのは、すごく嬉しかった。
その時は普通に可愛かったから。
(あぁ、一緒に帰ろうって私から話しかけちゃった! 霧島くん嫌じゃないかな?)
と少し不安げにだけど嬉しそうに言っていたんだ。
だが今は、
(霧島くん霧島くん霧島くん一緒に帰ってくれるよねねねねねね好き好き好き好き好き)
と壊れていて少し怖い。
俺は学校の帰り道、久遠と話しながら帰っている。
「もうすぐ、球技大会ね」
と彼女は言ってきた。
「そうだね。久遠は運動は得意?」
「えぇ、得意よ。霧島くんは?」
「俺も得意だよ」
と久遠と話している。
久遠は、頭もいいのだ。運動もできて頭もいいそれでいて美人。久遠すごいな。
俺も運動は得意だし学校のテストでは学年一位だ。
だがそれは心が読めるからであって、読めなければテストで学年一位ではなかっただろう。
俺は運動神経はいいが心が読めているおかげでディフェンスがすごく得意だ。
それもやはり心が読めなければディフェンスはそれほど得意ではなかっただろう。
だというのに久遠はテストでは学年二位で、運動も得意。これで心が読めていないのだから本当にすごい。
「じゃあ球技大会、楽しみね」
「そうだね」
と久遠と話していると
「じゃあ私はこっちの道だから」
と分かれ道に着く。
「ああ。気をつけてな久遠」
「霧島くんも」
と別れて帰る。
俺は家に着き、自分の部屋でのんびりする。
ふぅ、心の声を聞かないようにするのは疲れる。何もしなければ、勝手に聞こえてくる心の声だがぐっと力を押さえれば聞こえなくなる。だが押さえていると疲れるのだ。ずっと力を入れていなければいけないから。
久遠が壊れる前は聞こえないように力を押さえてはいなかったが、今は押さえないと怖い。だって、
(霧島くん霧島くん霧島くんかっこいいよかっこいいよかっこいいよ好き好き好き好き好き好き一緒に帰れられて嬉しい嬉しい嬉しい)
とずっと言っているのだ。それがすごく怖い。
だから久遠が壊れてからは、帰り道で力を押さえている。一緒に帰るのは楽しいし嬉しい。
心の声を聞かないようにすれば、怖くないのだ。
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今日は球技大会の当日だ。男子はバスケットボールで女性はサッカーだ。
男子のバスケットボールは一試合、十分だ。全学年の全クラスがトーナメント形式で戦う。
俺はもうすぐ試合のため準備している。
「霧島くん頑張ってね」
(霧島くん霧島くん霧島くんかっこいいよかっこいいよかっこいいよ体操着姿体操着姿体操着姿好き好き好き好き好き頑張って霧島くん霧島くん霧島くん)
と久遠が応援してくれる。
「ああ。頑張るよ」
クラスの人数は15人いる。バスケは5対5の試合だから10人数はベンチだ。
だが俺は運動神経がいいからかスタメンだ。
「では、1年A組対1年B組の試合を始めます! 礼!」
と試合が始まる。
「ジャンプボール!」
ジャンプボールは俺のクラスが勝った。
俺のクラスには、バスケットボール部の奴が一人いる。だからそいつを中心に試合を進める。
そいつの名前は高城だ。高城がドリブルで相手を抜いた後にシュートを打って決める。
ツーポイントで2対0だ。
「ナイスだ。高城!」
「ああ! みんなディフェンスだ!」
と高城が指示を出す。
相手はドリブルをしてこちらのスリーポイントライン近くまで来る。
そこで、
(あいつにパスだ!)
とバスをしようとしているので俺はボールをカットする。
「スティールだ!!」
「ターンオーバー!!」
と試合を見ている観客が大きな声で言う。
俺はそのまま自分でシュートを決め、点差を4対0にする。
「ナイスだ! 霧島くん!」
と高城が言うが心の声では、
(くそっ! なんでお前が目立ってるんだ!)
と言っている。
うわっこいつの心の声汚ぇと俺は思った。
試合は進み点差は18対4で俺たちが勝った。
俺は何度も何度もスティールをし、相手の攻撃を潰した。
「すごかったわね。霧島くん」
と久遠が褒めてくれた。
試合中、久遠は心の声で
(すごいすごいすごいかっこいいよかっこいいよかっこいいよかっこいいよかっこいいよかっこいいよ霧島くん霧島くん霧島くん)
とずっと言っていた。
「ありがとう、久遠。久遠の試合はもうすぐだよな?」
「えぇ。私も試合を頑張るから、応援してね」
と久遠が少し笑顔でそう言う。
その顔はすごく可愛いんだが心の声が、
(霧島くん霧島くん霧島くん応援してねかっこいいよかっこいいよかっこいいよ好き好き好き好き好き)
とやはり壊れていて怖い。
久遠の試合が始まり、俺はそれを見ていた。
久遠は運動神経がよく、すごく活躍していた。
点差は3対0で勝ち久遠が2点決めていた。
「すごかったな、久遠」
「えぇ。ありがとう」
(霧島くんが褒めてくれた。嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい頑張ってよかったよかったよかったよかった)
うん、怖い。
俺たちは男子も女子も勝ち進み、決勝戦までやって来た。
決勝戦の相手は3年A組で、バスケットボール部のキャプテンがいる。
「それでは、1年A組対3年A組の試合を始めます! 礼!」
試合が始まり、ジャンプボールで負け相手ボールから始まる。
相手はバスケットボール部のキャプテンがドリブルをし、こちらに攻めてきた。俺はそのキャプテンを止めに行く。
キャプテンはフェイントをしながらドリブルで俺を抜こうとするが、心が読めるためどちらに行くか、分かるためフェイントには引っかからずボールをスティールする。
「スティールだ!!」
「あいつ本当にすごいな」
「霧島くん!!すごーい!!」
「かっこいいよー!霧島くん!!」
「あいつ、バスケ部に入んねーかな!!」
俺はそのまま自分でシュートを決め、点差を2対0にする。
俺はその後も何度もボールをスティールし、何度もゴールを決めた。
最終的に点差は15対8で試合に勝った。
「霧島くん、凄かったわね。スティールだけじゃなくてスリーポイントも決めて」
と久遠が言ってくれた。心の声では
(霧島くんかっこよかったかっこよかったかっこよかったボールを何度もスティールしてスティールしてスティールして何度もゴールを決めて決めて決めてスリーポイントまで決めてた決めてた決めてたでもクラスの女の子が霧島くんをかっこいいって言ってた言ってた言ってた私の霧島くんなのに)
と言っている。
怖っ。それに俺は久遠のものじゃないんだがと思っているが
「ありがとう」
と返した。
「霧島くん、優勝おめでとう。私も優勝してくるから見ていてね」
と久遠が試合に向かっていった。
その後久遠は本当に勝った。
2対0で相手の3年D組を倒して。
ゴールは2本とも久遠が決めたものだった。久遠は本当に凄い。
「見ていてくれたかしら霧島くん?」
「ああ、優勝おめでとう。凄い活躍していたな」
「ありがとう」
(霧島くんが褒めてくれた褒めてくれた褒めてくれた霧島くんのほうが凄いよ凄いよ凄いよ嬉しいな嬉しいな嬉しいなえへへ)
なんか心が少し可愛い。すごく喜んでくれている。
「ねぇ霧島くん。この後ご飯食べに行かない?」
「ああ、いいよ」
初めてだな、友達とご飯食べに行くの。二人だけの打ち上げかな? と俺が思っていると。
(嬉しいな霧島くんとご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯好き好き好き好き好き好き好き好き)
と久遠が心の中で言っている。それに俺はやっぱり怖っ。と思った。