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亡霊騎士は君を選ぶ  作者: 稲葉 鈴
蛇足
7/11

獅子たちは大平原を抜けた

今回少し短いです


 アバスカルを出て大平原ウルタードに入り、七日目の昼前。レオシュ、メトジェイ、オレクの三人はババーコヴァーに辿り着いた。大平原ウルタード大森林エチェバルリアの境にある街は、アバスカルよりも発展している。街を護る城壁は高く、門は朝日が昇り、夕方陽が沈むまでしか開いていない。また大したことではないが検問もあり、その行列は緩く伸びていた。

 街に入るための列に並び、三人は相談する。


「まずは宿屋で部屋を取り、それから食事にしよう」

いつもの宿ハラデツカーでいいよねぇ?」

「あそこが空いてなかったら、どこか探してもらわねぇとなあ」


 列は少しずつ、前に進んでいく。

 急ぐ旅ではあるが、急ぎすぎる訳にはいかない。ここでこの列をすっ飛ばして揉める必要もない。並んでいる間に、行動のおさらいをすればいいのだ。


「飯の後は、俺は戦いなれた人イバルロンドの支部に行くわ。何か伝言来てるかもしんねぇし」

「じゃあ自分は騎獣ダヴィーデク借りにいってくるねぇ」

「では俺は衛士隊の詰め所に向かおう」


 サビナやシャールカがいれば、消耗品の補充などを二人が請け負ってくれるが、今日は別行動だ。誰がどこの店に行って何を購入するかなどの打ち合わせもしているうちに、三人の順番が来た。


「お疲れ様です。獅金族アダーシェクのレオシュ殿で間違いないでしょうか」

「それは間違いなく自分である」

「隊長より伝言です。詰め所に来てほしい、と」

「承知した。宿屋の手配が済み次第伺おう」


 簡単な問答が済み、三人は街に足を踏み入れた。これまで何度も来ている街であるから、寄り道もせずにまっすぐと目指す宿に向かう。


「あら久しぶりだねぇ」


 金貨に鍋のマークの宿屋ハラデツカーに到着すると、馴染の女将が声を上げた。


「三人分の部屋はあるだろうか」

「やっぱり運がいいねぇ。今しがた一部屋ちょうど空いたところだ」

「では三部屋頼む。それから、しばらく騎獣ダヴィーデクを預かって欲しいのだが」

「構いやしないけれど、珍しいね」

「急ぎの仕事で、ここまで酷使した。ここで別のものを借りるから、十日ほど預かってもらえるだろうか」

「はいはい。本人たちは一泊でいいんだね?」

「そのように頼む。十日を過ぎるようであれば、衛士隊か戦いなれた人イバルロンドの支部から連絡が行くように手配する」

「衛士隊関連の仕事かい!」


 宿帳にさらさらとレオシュはサインをし、前払いの金貨をカウンターに積んだ。その間にオレクは三人分の鍵を受け取り、荷物をまとめて部屋に運び込む。メトジェイは騎獣ダヴィーデクを厩舎へと連れて行っている。

 手続きの終わったレオシュは、食堂のテーブルを確保した。今日の定食が書いてある黒板に目をやる。七面鳥フプカの串焼きに、角牛肉ヒネクの煮込みスープ、野菜ヤブーレクの揚げ物。


「ふぅむ」

「俺フブカー」

「自分はヤブレークかなぁ」

「俺もフブカにするか」


 悩んでいる内に仲間たちが戻ってきて、女将さんに注文を出す。メインのほかにたっぷりの付け合わせと、パンと、それからメインの肉の入っていない薄いスープもついてくる。

 食事を終えた三人は立ち上がり、宿ハラデツカーを出た。それぞれが、それぞれの行動に移る。


獅金族アダーシェクのレオシュだ。話があると呼ばれたのだが」


 衛士隊の詰め所に行き、そう声をかけると、近くにいた衛士がレオシュについてくるようにと促した。彼に案内されて向かったのは、隊長室。別の方向に向かっていった衛士もいたから、誰かを呼びに行ったのかもしれない。


「失礼します。レオシュさんいらっしゃいました」

「入ってもらえ」


 ドアをノックしそう告げれば、中から返答があった。衛士はドアを開けてレオシュにどうぞ、と示して、本人は去っていく。まだ何か仕事が残っているのだろう。どこも人手は足りていないようだ。


「想定より、お早い到着でしたな」


 衛士隊の制服を着てどっしり座っているのは角牛族ヒネクの男性。先ほどのスープに入っていた角牛ヒネクと外観もよく似ているが、違う種族だ。


大平原ウルタードを突っ切りました」

「それは想定していましたが、もう少しかかるものだと」

「ああ、仲間から迅速移動の呪符エリアーショヴァーを貰いまして」

「それですか。なるほど。失礼。十日はかかるものと踏んでいましたので、少々驚きまして」


 今度からはそれも視野に入れておきましょう、と、隊長は微笑んだ。

 実働隊であるレオシュたちの動きが想定外であると、そのバックアップを行う衛士隊としては困る。だから情報の提供をやんわりとお願いしたに過ぎない。思っていたよりも迅速なのはありがたいが、迅速すぎると手が回らない可能性が出てくるからである。


「さて、本部より伝達です。母娘おやこの居場所が特定できました」

「それはよかった。場所は」

「現在もまだハンブリナに住んでいます。念のため現地の衛士隊が注視はしていますが、接触は取っていません。なにが亡霊騎士デュラハンのトリガーになるかわかりませんからね」

「時期は」

「まだ余裕があります。昨年の夏の月ガイドシーク三十五日に指名されているそうです」


 今日が二十四日だから、まだ十日ほど余裕がある。ババーコヴァーからハンブリナまでは徒歩で約五日。騎獣ダヴィーデクによるが、明後日には到着できるだろうか。


「現地には、アバスカルの衛士隊より伝令や斥候を得手とする種族ものが来ています。ラドミラといいますが、ご存じでしょうか」

「自分は面識がないようです」


 隊長は頷いた。気が付けば、部屋には男が一人増えている。先ほど他の衛士が呼びに行った相手だろうか。ならば副隊長あたりかとレオシュは見当をつけるが、特に気にはしない。紹介されていない以上、彼は置物に過ぎない。


「それでは、ハンブリナの衛士隊詰め所に何食わぬ顔をして行ってください。こちらから連絡は入れておきましょう。戦闘になる際の、場所の選定も終了しているようです」

「ありがたい。諸作業、感謝する」

「こちらこそ、討伐に名乗りを上げてくださったこと感謝します」


 二人は特に握手をすることもなく別れた。


 翌朝、レオシュたちはメトジェイの借りてきた騎獣ダヴィーデクにまたがりババーコヴァーを出発する。値は張るが、速度も持久力もあるものを選んできた。

 いつものことだが人命がかかっているのだから、それでいいのだ。

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