トカゲの理由
とりあえず、シーツでぐるぐる巻きにして体を隠してから細かく説明してもらった。
簡単に言うと
ルーカスさんは街に住んでいて
遊び歩いていた事でお父さんの逆鱗に触れたらしい。
仕事はしていた様だけど
本人曰くちょっと羽を伸ばしすぎたらしい。
お父さんの友人の娘と知らず誘いにのって
揉めてしまった事で
お父さんにいい加減、ぶらぶらせずに結婚しろと
言われてしまい拒否したところ
呪師を雇い、息子であるルーカスさんを
トカゲに変えてしまったらしい。
うん、自業自得ですね。
お父さんも凄いけど…。
「で、その後、森に逃げて私が踏む…と。よく森の奥まで来れましたね」
ふぅ…とため息をつく私に
「…迷惑をかけて…すみません」
「はい。…でも、無事でよかったです。森も森で危ないですからね」
「………ありがとう」
笑顔の破壊力が凄いよ
ルーカスさん。これは物凄くモテたんじゃないかなぁ。
「その…遊ぶのも程々にしてください!」
「…そうする。半分以上はただの噂だけど、今回の件は俺も反省してるんだ」
そうだよね、ルーカスさんと一緒に居て
女好きとか、遊び人とか思った事ないもん。
私が子供だからかもしれないけど。
ああ、でも今回の人とはその…アレだよね。
よっぽど綺麗な人だった…とか?
私とルーカスさんとは10歳くらい
歳が離れていそうだし
そういう世界は分からないな。
何故だか気持ちが滅入る。
それは、理想と違ったからなのか
私と過ごすルーカスさんと少し違ったからなのか
それとも別の理由なのか分からなかった。
「それにしても何で急に元に戻ったんだ?」
うっ…どうしよう。
ビックリして忘れてたけど…
言うの?キスしてたって…
言わなきゃいけない?
あーーーでも黙っているのも
なんとなく罪悪感‼︎
ルーカスさんはそういうの事は何回もあって気にしなくても良いかも知れないけど
私の気持ち的に…黙っておくのが悪い気がしてしまう。
い、言うよ?言っちゃおう。よし!
ぐっと手を握って覚悟を決めたのに
段々と声が小さくなってしまった。
「えっと…あの、物語でよくあるキ…キ…スのせいですかね?」
きっと、顔が赤くなってると思う。
自分でも子供だと思うよ?
でも、恥ずかしいんだもん。
「キス?…え?キスしたの?…俺に?」
眉に皺を寄せた後、キョトンとした顔でルーカスさんが聞いてくる。
「したんじゃないです‼︎起きたらくっついてたんです‼︎自分のベッドで寝てくれてたらそんな事起こんなかったのにーーーー‼︎」
涙目になりながら反論する。
顔が熱い‼︎
あ‼︎ルーカスさん、笑いを堪えてるでしょーー‼︎
もう〜〜〜‼︎‼︎
キッとルーカスさんを睨んだ。
そこで、はっとした。
もしキスで戻るんだったら
キスしないと戻らない訳で…
私、余計な事を言ったかもしれない。
後悔した後、ルーカスさんが口を開いた。
「ご、ごめんな…。俺が悪いな。うん。
でも、キスで戻ったとは考え難いな。
その場合ミアが起きた時点で俺が人間の姿に戻っているはずだし」
「そ、そうですね…」
そ、そっか。よ、良かった。
じゃあ何か別の理由?
うーん…。もし、またトカゲに戻るとしたら
知っておかないと困るよね。
その他は、尻尾を持って
投げた事しか思いつかない。
それとも数日経てば自然に元に戻る呪?
「俺の事なのに真剣に考えてくれるなんて
…本当にいい子だな。」
そう言って頭をポンポンとされた。
「…そ、そんな!当たり前ですよ!私にとってはルーカスさんはもう大切な人ですから」
たった数日なのに
寂しかった毎日が遠い昔の様だから。
「……。」
「……?」
「…あーえっと」
少し沈黙が続いた後
先に話し出したのはルーカスさんだった。
「そう言ってくれて俺は嬉しいよ。俺もミアは大切だから」
「なんだか、凄く嬉しいです」
ルーカスさんは困った顔をして笑っていた。
けれど、すぐにいつもの顔に戻った。
「それで…今後の事だけど、とりあえず今日は泊めてもらえるか?服も無いからな…何とかしないと」
「そ、そうですね…服は父さんの物が着られたらいいんですが」
ふぅ…。
すぐ見つかると思う。
クローゼットの下の方に父さんの物がまとめてしまってあるから…っと。
ほら、あった。
数枚残っていて着替えも何とかなりそう
ルーカスさんが
裸のままだと困るので急いで洗いましょう!