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第五話


 翌朝


 ソーマは部屋で着替えを終えて出かけようとしていた。


「うーん、どうしたものか……」

 考え込んでいる視線の先にあるのは、昨日もらった大量の金だった。

 袋で渡されたソレはかなりの量で重さであり、持って移動するのは大変である。ソーマのステータスであれば重さの面はクリアできたとしても動くだけでガチャガチャと音がしてしまう。


「何か使えるのないかな?」

 そう言いながらソーマは自分のステータスを思い出す。


「あれなら、いけるか?」

 その中で一つ思い当たるものがあり、試してみることにする。


「ダークストレージ」

 ソーマが考えたのは、闇神の加護と魔法神の加護を混ぜて新しく生み出した魔法である。

 闇魔法で作った収納魔法。黒い渦のようなものが空中に現れる。


「ここに、金を……」

 もらった金をその渦に近づけていくと、瞬時に飲み込まれていく。そして、隣にスクリーンが表示されて収納されているものが表示された。


「これは便利だなあ。カバンに繋げることもできるのかな?」

 用意してもらったカバンに手をいれて、ダークストレージから金貨一枚を取り出すイメージを持つ。

 すると、見事に一枚だけ取り出すことができた。


「よし、これで問題解決。行くかな」

 部屋を出ると、そこにはアリアナの姿があった。


「おっと、アリアナ。これから出かけるとこですが、何かご用ですか?」

「……その話し方やめて下さい。私は領主でもなんでもありませんから、もっと、友達に話しかけるように」

 ソーマはグレイグと同じように彼女にも話しかけていた。


 比較的歳が近く、そして命の恩人であるソーマが他人行儀な話し方をすることにアリアナは違和感を持っていた。


「そう、か。うん、わかったよ。これでいいかな?」

「うん!」

 ソーマの口調が変化したことに、アリアナは笑顔になる。


「それじゃ、俺は街に出かけてくるよ。アリアナはお勉強かな?」

「うん、午前中は家庭教師の先生がやってくるんです。だから、せめてお見送りだけでもしようと思って待っていました!」

 ソーマがいつこの家から出ていくのかわからないため、アリアナは彼女なりにできることをしようとしていた。


「ありがとう、アリアナも勉強頑張って!」

 そう言って、ソーマは拳を前に突き出す。


 一瞬、キョトンとするアリアナだったが、すぐに意図を察して自らも拳を前に出す。

 コツンと拳同士がぶつかると、どちらともなく笑顔になっていた。


「それじゃ、いってきます!」

「いってらっしゃい!」

 家を出たソーマは冒険者ギルドへと向かう。


 昨晩、グレイグとの話で街の地図を見せてもらっていたため、迷わずに到着することができた。


「さて、いよいよ冒険者登録か……なんだか、ワクワクするな」

 そんなことを入り口の数歩手前で口にするソーマの姿は、他の冒険者たちからすれば微笑ましいものであり、温かい視線を送られていた。


 建物に足を踏み入れると、喧騒が耳に入る。

 冒険者たちが様々な話をしている。どの依頼を受けるか、あの素材はどこで手に入るのか、この魔物はどんなやつだったか、割のいい依頼はないか。


 ギルドの奥に併設されたバーカウンターでは酒が提供されており、昼間から酒をあおっている者もいる。


 用事がある冒険者はまず受付で話をするようであるため、ソーマもそれに倣って受付の列に並ぶ。


「次の方、こちらへどうぞ」

 すると、新しく一つ受付が開いたためソーマはそちらに並ぶ。


「えっと、冒険者登録をしたいのですが……」

「はい、こちらで承ります! 身分証はお持ちでしょうか?」

 ソーマが言うと、受付嬢はとびきりの笑顔で元気よく返事をする。


 彼女は猫の獣人であり、やや短めの薄いピンク色の髪がふわふわと揺れる。


「はい、これでお願いします」

 昨晩のうちにグレイグからもらっておいた身分証を提示する。


「はい、ありがとうございま……えっ?」

 ソウマの身分証を受け取り、内容を確認しようとした受付嬢は動きを止めてしまう。


「えっ?」

 その反応を見たソウマも思わず声を出す。

(まさか、何か不具合でもあるのか? やっぱり別の世界の人間だからダメなのか)


「しょ、少々お待ち下さい!」

 すると、受付嬢はどこかに走って行ってしまった。


 取り残されたソウマは呆然としながらも、隣の受付嬢に視線を向ける。

 しかし、彼女たちは視線をそらしてしまった。


 しばらくするとドタドタと大きな足音をたてて彼女が戻ってきた。


「あ、あの! も、申し訳ありませんがこちらへいらしてもらえますか?」

 焦っているようで、額には汗の粒ができている。


「えっと、ダメならいいです。別のとこも見て回りたいので、身分証返してもらえますか?」

 何やら面倒ごとになりそうな予感を感じたため、身をひるがえそうとする。加えて、昨日こちらの世界にやってきたばかりであるため、他も色々と見て回りたかった。


「ダ、ダメじゃないです! ただ、身分証が領主様の……」

「えっ?」

「い、いえ、冒険者登録ですね! 大丈夫です、登録できます!」

 何か言おうとした受付嬢だったが、ソウマが帰ろうとしたため慌てて登録の手続きを始めていく。


 ソウマの身分証は、領主の一族しか持っていないタイプのもので、特別な人が来たと判断した受付嬢はギルドマスターに相談に行っていた。

 本人がよければ連れてくるようにという話だったが、ソウマが登録を希望したため受付嬢はそちらを優先することにした。


「そ、それでは、こちらが冒険者ギルドカードになります。紛失した場合は金貨一枚で再発行できます。受けられる依頼は、そちらに記載されているランクの一つ上の依頼となります。依頼を受けるには掲示板に貼られている依頼の番号をメモして受付に来て下さい」

 受付嬢はカードを受け取ったソーマが早く掲示板を見たそうにしていたため、早口になりながら基本となる部分を説明していた。


「ありがとうございます、それでは!」

 彼女の予想は当たっており、ソーマはワクワクしながら掲示板の前へと向かって行った。


 





お読みいただきありがとうございます。

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