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第十四話


 奴隷商の店を出たソーマたちはその足で街を出る。


 ソーマが何も言わないため、ソフィアは不安を覚えるが黙ってついていく。

 そしてしばらく歩いたところで、ソーマが足を止める。


「ここならいいかな? ソフィア、そこに立って動くなよ。俺がすることを信じてくれ」

「……はい」

 主人の命令に逆らえるわけがなく、ソフィアはただ返事をする。


「うーん、まあ仕方ないか。いくぞ」

 その反応に少し困った表情になったソーマだったが、それに構わずソフィアの頭に手を伸ばしていく。


「えっ!?」

 ソフィアは驚いて手から逃げようとするが、動くなと言ったソーマの言葉を思い出し。目をぎゅっと瞑って動かずにいる。


 このままソーマが頭に触れれば雷が彼の身体を撃ち抜く。それがソフィアが想像した光景である。


 事実、次の瞬間ドーンという大きな音とともに雷がソーマに命中した。


「きゃあっ!」

 目を瞑ったままソフィアは叫び声をあげてしまう。


「大丈夫だ。俺は他の人間より少しばかり神に愛されているみたいだからな」

 ソーマは頭上にダークストレージを展開して、雷を飲み込んでいた。


 そして、次の雷が落ちてくるまでの間に、考えていた次の一手を繰り出す。呪いを見た時から考えていた方法。

 治癒神の加護+光神の加護+魔法神の加護の三つの加護を混合した力。


「カースディスペル!」

 呪いを打ち消す魔法。それがソーマの考えた方法だった。


 魔法を受けたソフィアは強い光を放つ。


「えっ!? きゃ、きゃああああ!」

 神が授けた呪いであるため、光はしばしの間ソフィアの身体を包み込んでいる。その反応に彼女は思わず叫び声をあげてしまった。


「大丈夫だ、大丈夫、大丈夫……」

 ソーマは頭に手を乗せたままソフィアに声をかける。その言葉と手のひらから優しさが伝わってきたため、ソフィアの動揺も徐々に消えていき落ち着きを取り戻していく。


 光が完全に収まったところで、ソーマは手を放す。


「ふう、これで完了だ」

 そう言ってから、ソーマは鑑定でソフィアのステータスを確認する。


*******************

名前:ソフィア

種族:エルフ 性別:女

称号:加護を受けし者

職業: レベル:5

体力:30(+100) 魔力:120(+100) 腕力:40(+100) 素早さ:15(+100) 運:5(+100)

加護:雷神の加護、ソーマの加護

*******************


「ステータスもちゃんと直ってるな。相変わらず俺の加護っていうのが謎だけども……」

「えっ?」

 ソフィアはソーマの言葉にキョトンとしている。


「俺が一方的にやっていたことだから説明をしないとだな……まずは、ほれ」

 そう言うとソーマはソフィアの肩に手を置く。


 いつもならここで雷が発生する。


「えっ? あれ?」

 しかし、何も起こらないことに彼女は驚いていた。


「そういうこと。ソフィアにかかっていた雷神の呪いは俺が解除しておいた。で、その結果二つの加護がついた、というわけなんだけど……」

 ソーマは説明の途中だったが、思わず言葉が止まってしまう。


「ひっく、ひっく、うぅ……」

 ソフィアが涙を流していることに気づいたためであった。


「ど、どうした?」

「い、いえ、その、すみません。こ、こんなこと初めてなので、物心ついたころから触れられると雷が落ちてきたんです……でも、今はご主人様が触れていてもそれがなくて、だから嬉しくて……」

 ここまで、彼女の表情からは感情がほとんど失われていた。驚いた時に少し見える程度であった。


 そんな彼女が、ここに来て感情を露わにして涙を流し、涙を拭いたあとには笑顔を見せている。


「ははっ、やっぱり笑ったほうが可愛いな」

 ソーマが笑顔でソフィアを見ると、彼女の顔は一気に真っ赤になっていく。


「さて、次は身体を綺麗にしようか。あっちに行くと川があるから、そこで身体を洗おうか」

 以前、ソーマが西の森に依頼で向かった際に見つけた川へと案内する。


 川に到着すると、魔物や人が入ってこないようにソーマが風の魔法で結界を展開する。

 こんなことができる人物に会ったことがなかったソフィアは、驚いた気持ちを抱きながら水浴びに向かっていった。


「ご主人様……若いのに、一体何者なんだろう……」

 ソーマに渡された布で身体の汚れを落としながら、ソフィアはそんなことを呟いている。


 これまでにも彼女を買おうとした者は何人かいた。雷が落ちたとしても、観賞用に買うという考えのもとだった。

 しかし、その全てにおいて我慢できずに触れようとし、結果は言うまでもない。


「あの人は、他の人とは違う気がする……」

 もちろん呪いを解いてくれたのはソーマだけだったが、それだけでなく彼女を見る目が今までの男たちのソレとは違う。そんな気がしていた。


 しばらくして彼女が川から上がってソーマのもとへと戻る。


「あの……ありがとうございました」

「あぁ、お帰り。うん、よかったよ綺麗になった。服も大丈夫だね」

 彼女が水浴びをしている間に、ソーマは彼女の服を一度洗って乾かして元の場所に置いていた。


「これ、服が綺麗になっているのですが、どうやったのでしょうか?」

 ソフィアが小首を傾げて質問する。


「えっと、洗ったのは川の下流でバシャバシャと。乾かしたのは魔法をちょちょいと組み合わせてね」

 火魔法による熱、風魔法による空気の流れを合わせることで巨大乾燥機のような状態を作り出してそこに服を入れて乾かしていた。


 それを実際に小規模で目の前に作り出して見せる。


「す、すごいです……」

 手を伸ばしたソフィアは暖かさを感じて驚いていた。


「こんな魔法見たことも聞いたこともないです! 別々の属性の魔法を組み合わせるなんてすごいです! ご主人様はどうしてこんなにすごいことができるのですか?」

 キラキラと目を輝かせながら、ソフィアが質問をする。魔法に詳しいエルフでも見たことがなかった。


「なんで、か。呪いを解く時にも言ったけど……他の人間より少しばかり神に愛されているみたいなんだよ」

 そう言うと、ソーマはウインクをして見せた。



お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ありがとうございます。

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