4.自分語りと説教
力は正しく使うためにある!
「2022年に俺もこの能力に目覚めた。当時は中学3年だった」
DQNの持ち物を漁りながら、アレトが自分語りを始めた。
「学校でみんなに見せびらかしてたら…DQN軍団に『陰キャのくせにイキりすぎ、キモいから死ね』って言われて女子からもキモがられるようになって、みんなから無視されるようになったんだ。」
DQNもあまり良いものは持っていなかった。革のジャケットはアレトが焼き切ってしまったから片方だけ肘から先がなくてダサい。
「そっから俺は不登校のニート。毎日死にたいって思いながら5chしてたよ…親の金でソシャゲに課金したし、dmmにも登録してた。廃人のような毎日を送ってたよ。やっぱあれかなあ…みんな、俺が魔法使えるからって僻んでたのかな?」
「そりゃ、超能力…魔法は憧れるよ!一部の人にしか出なかった能力だもの。僕だって欲しかったなあ…空を飛んだり、エスパー技を使ったり…あ、氷の魔法を使えるようになりたかったなあ…氷雪系の能力。かっこいいもん」
「ああ…大体優遇キャラだよな。氷魔法の使い手って…出番も多いし、絵も映える」
「すごいよ!アレトの能力!何でも切れる無敵の刃じゃん!最強だよ!」
「別にこの魔法があっても俺はモテなかったし、いじめられたし、学校じゃ何にも評価されなかったからなあ…ああでもお陰でさっきみいに、学生時代に大人しい奴をいじめてたであろうチンピラ系DQNをブチ殺せるのは嬉しいよ…『徹底破壊』後は世界中のどこも、無法地帯だからな…まあ、見せつける女の子もいないし、虚しいけどな…」
「でも、その魔法で食料を奪ったりできるでしょ?」
「あえて喧嘩を売るようなマネはしねーよ。疲れるしな…誰にだって生きる権利はあるだろうよ。さっきのDQNは向こうからふっかけてきたから殺しただけだ。奪ってまで生き延びようとは思わん」
「そう…」
なんだか、勿体ないなあ。いくら終末世界とはいえ、そこかしこに食糧を蓄えてるチームやギルド?みたいな集団がいる。ミトリは彼等の多くに食料を恵んでくれるよう頼んだが、冷たく無視された。個人であれグループであれ、あっさりと食料を恵んでくれたのはアレトだけだった。
そのアレトの超能力…魔法の力で、プラズマの剣で、ギルドを制圧して沢山の食料を強奪することだって可能だろうに。
「仮にお前にも魔法が使えたとしても、お前もそんなことしないよ」
「え?」
ミトリは考えていることを当てられたような気がして、ギクりとした。
「それが、魔道士の条件だ。きっと。俺はそう思う」
何が条件なのかさっぱり分からないが、ミトリは妙に納得し、力があるからといって強奪はよくないと思い反省した。
命を強奪してるじゃないか!