3.プラズマの剣
やっと魔法や。
「チンピラか…いじめんなよ」
「大人しく寄越せばいじめねえよ。『乾パン』があるじゃねえか…スマートに寄越しな。スマートに!」
「そんなに欲しいなら分けてやるけど…三等分だな。えっと、二週間分割る三だから…14÷3=4.666666…割り切れないのは気にすんな。俺も毎日、死にたくて割り切れない」
「アレト、やりきれない。の間違いじゃない」
「わかってるよ」
相手はかなり威圧的な雰囲気のDQNなのにアレトは全く怯む様子はない。元ニートだとはとても信じられない。
「おいガキども…状況を理解してねえな。『等分』はないんだよ…『不等分』だ…俺がその二週間分もあるっつう『乾パン』を全部頂くんだ!さもないと!殺す!」
「鼻息荒いな…たかが二週間ぽっち長く生きることにそこまで執着できるのが羨ましいぜ。つーか鉤括弧何とかしろよ…お前絶対いじめとかしてた野球部とかサッカー部の人間だろ…色黒が…」
アレトの肌は元ニートよろしく真っ白だった。
「スクールカーストがこの終末世界でも通用すると思ってんのか?勘違いやろうが…」
「ったりめーだろーが!てめーみてーなヒョガリワンパ…」
22歳くらい多分のDQNが言いかけたと同時に、彼の持ってたカナヅチが肘から下と一緒に地面にぼとりと落ちた。
「いっつっっっっっっっあああああああああああああああああああ?」
彼の右肘から先は、綺麗に焼き切れていた。出血もない。でもかなり痛そうだ。
「なんじゃこりゃあああああああ」
「魔道士に喧嘩を売るのは間違いだよ…特にこんな、法律もクソもない終末世界じゃあな」
アレトの右手には棒状の水晶が。そしてその水晶の先端からは、青白く光るプラズマのような刀身が伸びていた。
「ア…アレト。アレトも超能力者だったの?すごい!」
「だめ」
「え?」
「魔道士って呼べ魔道士って。これは魔法。プラズマだから…えーっと…炎魔法の一種だ。」
「魔法…」
「そう」
ブォン
そのライトセーバーみたいな魔法の武器の切っ先を腕が切れて痛がってるDQNに向けて、アレトは言った。
「どうせもう右腕もないし…死んだ方がいいだろ?望むなら殺しとくけど…どうする?」
「て…てめえ…ふざけんな。ぶっ殺してやらああああああああ」
「あ、そう」
DQNの首が、地面にゴトリと落ちた。
「全く…等分なら良かったのに…欲張るから死ぬことになるんだよ」
アレトは、DQNの首をゴミでも見るような涼しい目で一瞥した後、ミトリに笑顔を向けたり
「よかった。盗られずにすんだ」
炎はプラズマの一種。
チンピラは序盤に必要やな。