2.少年から見たアレト(元ニート)
アレトは多分いい奴
死にたいと呟いていたその男はあまらにも澄んだ瞳をしていた。顔つきはやや幼く恐らく元ニートだろうが、優しそうな雰囲気を醸し出していた。
やさぐれた表情でゾンビのように乾パンを食べるその姿は、傍目には気持ち悪く見えたろうが、飢えた自分にとってはどうでもいいことだ。
「あの」
ミトリは飢えに任せ、その優しそうな年上の汚らしい少年に声をかけた。
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「やっぱついてくるのか…」
「だ、駄目でしたか?」
言葉とは裏腹に、アレトの表情は怒っていない。かといって、喜んでる様子もない。優しそうではあるが、何を考えてるか分からない怖さがある。
「いや、話の流れ的に何となくそうなるだろうとは思ったし、別にいいよ。どうせあと一週間で食料は尽きるし。そっからは飢えと渇きに任せて一緒に死ぬのを待とう」
「アレトさんといると、食べ物が見つかる気がします」
「なあ」
突然、立ち止まってアレトが振り向いた。びっくりしてしまった。
「はい?」
「別に丁寧語じゃなくていいぞ。こんな終末世界、年上も年下もないだろ」
「はあ…う…うん。分かった」
「別に威張ることじゃないけど、世界の『徹底破壊』まで俺は不登校のニートしてたからな…小学生か?ミトリは」
「はい。あ、いえ…うん」
「立派に学校行ってただけ、俺より偉いよ。元ニートを敬う必要はない」
「でも、食べ物を分けてくれた…」
「ただの気まぐれだよ。たかが寿命が一週間やそこいら伸びただけだろ?」
「でも…なんか、一緒に行きたいって思う」
「可愛くないぞ。行けたらいいな。食料が見つかればな」
「アレトは死にたいなら、一箇所に留まっていれば、食料も水も見つからずに死ねるんじゃないの?」
「そうしたいのはやまやまなんだけど…こんな瓦礫に囲まれてじっとしてるのも鬱になるだろ?」
「うん…」
「だから気分転換に歩くんだよ。エネルギーを使う方が早く死ねるかも知れないしな」
なんだか、不思議な人だ。死にたいなら、鬱になってもいいだろうに。
「ニートだった時は散歩にも行きたくなかったけど、今思えば、家は居心地良かったんだなあ…」
アレトがどこか遠くを見るような、寂しそうな目をした。
「おい、てめえら」
とうぞくが あらわれた。
じゃない。ガタイのいいヤンキーっぽいおっさんともお兄さんともつかない男が突然瓦礫の向こうからやってきた。手にはカナヅチを握っている。
「食料と水を残らず寄越しな」
ガタイのいいDQNはアレトに向かって因縁をつけた。アレトは、さり気なく僕を背に隠し、ゆっくりとDQNの方に向き直った。
魔法関係なくね?