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キーカルク王国にて1

読んで頂いてありがとうございます。

 ライたちの一行はキーカルク王国の王都キーシルに到着して、ジルコニア帝国の大使館を訪問している。

 彼らは、アスカーヌ共和国においてサンダカン帝国による人為的な魔獣のスタンピードを防止して、一夜を地元の男爵家で過ごし、地元の数人の領主にその日に活動と、サンダカン帝国の危険性を説いた。さらに、翌朝は直ちに首都アスラーに飛び、シャーラとダースラルをミースラス子爵家の縁類であるカメヌ伯爵家に送り届けたのだ。


 そこでは、伯爵本人とその長男にジルコニア帝国、ラマラーズ王国でのサンダカン帝国からみの様々な出来事、陰謀を説明した。その席で、直前にあったサンダカン帝国によるスタンピードの試みとその防止のための自分たちの行動も説明した。これには、シャーラとダースラルの証言も交えたので、共和国のサンダカン加盟への警戒呼びかけも説得力を増す事になった。


 加えて、ブライアン男爵を含めた領主たちが、かれらの寄親である侯爵家に説いて間もなく侯爵本人共々首都のキーシルに来る予定になっている。だから、カメヌ伯爵は彼らと共同して共和国政府に対サンダカン帝国の活動の開始を働きかけることになる。


 その後、ライたちラママール王国一行とミーライ皇子達はどこにも寄らず皇子の目的地であるキーカルク王国に直行することにした。これは、サンダカン帝国の魔獣化の陰謀を見た皇子が、大叔母のいるキーカルク王国でのかの帝国の工作を懸念して、リンザイ少佐に命じて在キーカルク大使館に念話で連絡を取らせたのだ。


 同大使館には、ジルコニアのジルコニア内での工作はすでに知らされており、さらに皇子達がジルコニアから出発する時には、同大使館にサンダカン帝国の行動についての調査を命じている。それを受けて同大使館は集中的な調査を行ったものだ。その結果、思ったより事態は深刻で、途中のキラメキ王国に寄るべきでないということになったのだ。


 ジルコニア帝国にとっては、地域の大国キーカルク王国は古くから皇族の縁戚関係にあり、重要な同盟相手であるのだ。だから、必然的にキラメキ王国については後回しになることになった。幸い、一行はすでに訪問したラメマーズ王国とアスカーヌ共和国については、サンダカン帝国の危険性は伝えられたと考えられるので、後にそれに対して対抗することを説くのは難しくはないだろう。


 アスラーからキーシルまで約2千㎞は2回宿泊してきたが、いずれも大きめの町の郊外に降りて、歩いて街に入り宿に泊まったものだが、面倒なので身分を隠して滞在した。しかし、夜盗がはびこるこの地方に、20人近くの武装した者が来たのには警戒されたのだが、履いていた刀を門衛に預けて、十分な金を持っていることを示すことで無事に泊まることができた。


 人口30万を超える王都であるキーシルには、日中に空から降りるのは騒ぎになり警戒されることは必定であり、入り込んでいるサンダカン帝国の者にも知れることになるため、暗くなってから大使館に入っている。ただ、飛行魔法は魔力をまき散らしていくものであるため、魔法の達者の多いサンダカンの者には隠せないだろう。


 流石に、皇子を含めた一行が広い大使館の庭に降り立った時には、大使のイリーグ・ダイム・サーカル伯爵自ら7人の館員を従えて迎えた。皇子が降り立つと、サーカル大使がジルコニア式に腕を組んで、片膝をつく皇族へのポーズをとって呼びかける。


「ミーライ皇子殿下、ようこそいらっしゃいました、お待ちしておりました」

 これに対して皇子も応答のポーズとして胸に片手の握りこぶしを当てて応じる。


「これは、サーカル大使。大変なところでよく頑張ってくれた。今からも大変であるがよろしく頼みたい」


「はは!お言葉有難うございます。しかしながら、本国からご指摘を受けるまで事態に気がつななかたのですから、長く滞在した身としてはお恥ずかしい次第です」


「うむ、その点は本国にいた我々も一緒だ。事態の深刻さはこのラママール王国から知らされたこのだよ。さて、いつまでもこうして話してもおれらない。この一行も腰を下ろして話し合いたい」

 一行を手で示しての皇子の言葉に、大使が慌てて応じる。


「これは失礼しました。宿舎の案内は後にして当面の方針を話し合いたいと思います。では、ひとまずこちらに」

 そう言う大使の後に一行はついて行って、皆が座れる椅子がある部屋に通された。とは言え、テーブルは一つのみで、それに向かって椅子を並べている形である。


 まず、部屋に入る前に、大使館側と皇子の護衛隊、さらにラママール王国調査隊の互いの紹介があっている。さらに、テーブル席には大使の他、館員が3名座り、それにミーライ皇子にその護衛隊長リンザイ少佐、さらにラママール王国側としてはライにアスラが着く。他の者は椅子席で彼らの協議を見守る形である。


「さて、念話である程度の話を聞いてはいるが、大使にここの情勢を少し詳しく聞きたい。とは言え、皆も長時間飛行魔法を使って疲れているので、大体の流れにとどめて欲しい」

 ミーライ皇子から大使への言葉である。


「はい。以前からこの大使館でも、サンダカン帝国が強力にキーカルク王国政府や貴族に食い込んでいるのを、不思議には思っていたのですよ。それが、わが帝国における人を操り人形にする魔道具とそれを操る魔法があるということが判ったということの連絡を受けまして、そのことの理由が掴めました。

 そのことを前提に調査することで、操り人形にされたという兆候のある人々が続々と判ってきました。さらには、どうも隣国のキキラス王国に軍の動員の兆候があります。

 ちなみにキキラス王国となってはいますが、すでにその王が追放されたか処刑されたか判らず、怪しげな親族に代わっています。また、どうも貴族もほとんどが操り人形になっているようですからすでに属国になっていると言って良いと思います。

 イカルーク王国も同様な状況ですし、もっと前から属国になっていたリスナー王国とムズス公国はすでにサンダカン帝国の一部でリスナー省、ムズス省になっています。このリスナー省、ムズス省の人々は貴族が操り人形、平民は奴隷に近い扱いになっているようですね。これらも、ラママール王国の情報の通りのようです」


 大使はライとアスラの顔を見て頷き、話を続ける。

「そういうことで、このキーカルク王国においても、サンダカン帝国による王権の簒奪の試みが近く起きそうな状況です」


 これに対して、ミーライ皇子が目に怒りを浮かべて聞く。

「それで、大叔母のミシャーラ様にお変わりはないのか?」


「ええ、2日前にお目にかかりお話をしましたが、その際には大変お元気でしたよ。ミシャーラ様には、その7日前に本国からサンダカン絡みの連絡を受けた時に、すでにお目にかかってそのお知らせはしています。

 それを受けて、ミシャーラ様なりにいろいろ調べられたようですが、結果として王宮にも相当にサンダカンの手が入っていることが判ったと教えて頂きました。皇子殿下の到着が今夕ということも、2日前の訪問時にお伝えしたら、明日朝殿下に会いにここを訪問されるということです」


「おお、明日に会えるか。ただ大伯母上は先の王の未亡人、昔ほどの力はないだろう?」


「ええ、もちろん、賢王妃を謳われた時期ほどの力はありません。しかし、すでに引退された方が多いのですが、未だ隠然たる実力をもつ方々には大きな影響力をお持ちです。さらに、この王国についてはどこを押せばどうなるということを良くわきまえておいでです。ですから、大変頼りになる方だと思いますよ」


 大使が言ったところで、ライが口を挟む。

「皆さんに言っておきたいことがあります。まずは、我々も相当にきな臭くなったということでここに急ぎ来ましたが、どうやら事態は差し迫っているようですね。しかし、我々は魔法は相当に達者な者ばかりで、空間収納に相当な機材を収めていますが、所詮全部で20人ほどにしかすぎません。

 また貴ジルコニア帝国も、勢力はこの大使館の要因だけと言うことでしょうから、結局は対サンダカンの戦いには、地元の方々の力を大いに当てにするしかありません。その意味で、先ほど言われた王大后様の影響力に期待したいのです」


 ライの言葉に大使がニッコリ笑って応じる。

「その意味ではいい知らせがあります。この点は、皇子殿下にご承認いただく必要がありますが、実はわが大使館で3千人余の傭兵を確保しています。かれらは、イカルーク王国の正規兵だった者達でかなりの腕達者のもの達です。あまり知られた方ではありませんが、指揮官はジラソム将軍です」


「なに!それはどういういきさつで?この国にそのような大人数の傭兵がいる訳はないだろう?また私の了承が必要という訳は?」

 ミーライ皇子が驚いて聞くのに大使が答える。


「ええ、実は隣国のイカルーク王国では、実質的にサンダカン帝国の属国になって、王国の名前も消えていく状況にあるのです。それで、その状況に最後まで抗っていたジラソム将軍が、遂に決起して着いてきた3千人の兵を率いてこの国に庇護を求めて入ってきたのです。

 しかし、この国の中枢も相当にサンダカン帝国に蚕食されているために、その帰属が決まらなかったのです。そこにミシャーラ王大后様の示唆もあって、ジルコニアの傭兵と言うことで引き受けているのです。この点は本国にも了承を求めたのですが、ミーライ皇子殿下の了解を貰えということです」


 そう言ってほほ笑む大使に皇子は、半ば苦笑いをして言う。

「うん、でかした!ここで3千人の職業軍人は有難い。もちろん、そのことは了承する。傭兵ということは金が要るだろう、それは?」


「はい、もちろん当面必要な5百万ダランの金は大使館にはありませんが、ジルコニア帝国大使館の借用書で商人から調達しました。こうして、殿下の御承認を頂きましたので、本国に請求できるというものです」


「ははは!サーカル大使。まあ、とは言え貴卿の勇気のお陰でずいぶん助かった」

 皇子が呆れ顔でそれでも褒めるが、今度は横からアスラが聞く。


「確かに3千人の兵力があれば、ここのキーカルク王国軍が動かなくてもそれなりの戦力ですが、その傭兵隊の武装はどのようなものでしょうか?魔法はあまり期待ができないと思いますが、武装によって戦力は全く違いますからね」


「いや、魔法の処方はキーカルク王国軍には伝えているので、その傭兵達にも施したので、身体強化は使えますよ。もっとも半分はすでに処方を受けてはいましたがね。その主要な武器は剣と槍に弓ですね。鉄砲は、100丁ほどです」


 大使の答えにアスラが論評する。

「普通の鉄砲は基本的に役立ちません。多分サンダカン帝国では敵の鉄砲の火薬を魔法で破裂させることのできることのできる魔法使いが多数いるはずですから。我々は爆弾と銃を持ってきていますが、数が知れていますので、3千人の傭兵に渡すほどのものはとても準備できません。

 これらは、サンダカンの魔法使いでは魔法で着火はできないはずですから、あれば有用なのですがね。サンダカン帝国の銃は、ジルコニア帝国の最新のものに比べると大分劣るものなので、それほどの威力は無いと思います。だから、身体強化した兵のやり投げで十分対抗できるはずです。

 だから、3千の傭兵は有効だと思いますよ。それと心配なのは、サンダカンのもつ魔獣化の技術です。魔力の吹き出し口はそれなりにあるので、彼らがそれを使って獣を魔獣化させてそれを操っていれば相当危険な兵器になります」


「なるほど。しかし、傭兵が使えるとしても、サンダカンの動員する軍は少なくとも数万はくだらないと思われるので、いずれにせよキーカルク王国軍の参画が必要だ。だから、明日の大叔母との話が重要になるな」

 その夜は、その皇子の言葉でお開きとなった。


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