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ラママール王国の躍進1

2部開幕です。

すみません。少し凝りすぎて技術的な話に終始しました。

 ライは13歳になった。彼の覚醒以来5年弱であり、その間にラママール王国のみならず、周辺諸国では大きな変化があった。いや発展があったと言っていいだろう。 


シラムカラ侯爵家及びその寄子団の領地、ジュブラン男爵領始めとする9つについては、すでに開発5カ年計画は最終段階に入っているがその目標は大きく超えた成果を出している。

 今やシラムカラ侯爵領及び9つの寄子領を合わせて35万の人口を抱え、製鉄、機械、製紙、製材、酒類醸造等の工業に加えて、農業として小麦、トウモロコシ、さらに酪農及び肉牛の飼育が盛んにおこなわれている。


 人口については、過去5年間で2.5倍に増えているが、多くは王都の貧しい人々及び全国の貧しい農民がこれらの領に流入して働いている。工業においては、無論多くの労働者が必要であるが、農業については生産量が増えた穀物の他酪農に多くの人手が必要であり、流入した農民は主として農家に雇われて働いている。  


 このように、人口が2.5倍に増えたが、これらの領の全体の収入は金額に相当すると10倍以上になっている。従って、人々の平均所得は4倍程度になったことになるが、平均的には流入した人々の収入は、従来から居た人々に比べ半分程度であるので、従来からの住民はより豊かな生活を謳歌している。


 とはいえ、新たに流入した人々は以前は多くが食うや食わずの生活をしていたので、その時期に比べるとずっとゆとりのある生活を楽しめている。これらの領では、今や12歳までの教育は義務化されており、新たに流入した人々の子弟もそれは同様であるので、これらの幼い子供を学校にやっても生活が成り立つわけである。


 新入住民に対しては、各領が公共予算で長屋形式2階建ての賃貸アパートを用意して受けいれており、広い家とは言えないが、住についてはそれほど不自由することはない。

 なお、各領にある公共風呂については、従来の住民の殆どの家がすでに内風呂を持っているため、基本的は役割りを終えたが、こうした新住民と、従来からの住民も広い風呂を好む人が結構多くそれなりに賑わっている。 

 

 その中心になるのはシラムカラ市であり、この地方都市はすでに10万の人口があり、地方の中核都市の形態を成している。そこには広い街路樹のある街路、商店街、官庁街、住宅街の区分けがはっきりした整然とした清潔な街並みに、中心街は夜間も街灯で照らされている。


 早くから建設にかかっていた鉄道については、製鉄業の本格生産のためにも建設が急がれ、王都との間には2年前に接続され、シラムカラ市から500km強の距離を最速6時間で結んでいる。また鉄道は、当初から予定されていた、王都から275kmの港町キシジマ市、さらにシラムカラ〜王都の間から分岐してミーラル草原まで440kmの路線が半年前に繋がっている。

挿絵(By みてみん)

 このことで、シラムカラ領周辺から王都まで、半日で荷を届けることができるので、この地区で作られる乳製品、生肉も商圏に入ってきた。さらに、港町キシジマからはすでに製造されるようになった鉄船に乗せて、王国の様々な先進的な製品が遠くジルコニア帝国の首都、ジルコルまで運ばれている。


 ミーラル草原については、ヒロトの記憶にもあったように、1千万トンの資源量が見込める原油が発見されており、その重要性に鑑み急きょ戦争の後に建設にかかったものである。石油精製工場は、鉄道の接続点のジザーララ伯爵領に作られることになり、すでに操業を部分的に開始している。


 シラムカラ市及び周辺地区においては、家は基本的に木材または土魔法で作ったブロックによる建設であり、すでに板ガラスによる窓は普通に使われている。街中の家々には、街路の所々にある高架水槽から水道が引かれ、蛇口を捻れば水が出てくるようになっている。

 このような水道システムをどう建設するかについては、まず水源とそこからどのように人々に届けるかが問題である。シラムカラ侯爵領周辺では、幸いに巨大で清澄な水をたたえるザーシラ湖があり、そこから3つの河川ランム、カズラ、サージルが流れ出している。


 さらに地形として、ザーシラ大森林から緩やかな下り勾配になっているため、開渠・または暗渠によって街または集落に水を引いてくることは容易である。また、地下には巨大な帯水層もあるので、井戸により清澄水を得るのは簡単である。


 だから、開発5カ年計画の当初は、まず街の辻々及び集落の中心に地上から数m高い位置に受水槽を作ることに注力された。そこから、人々は水を汲んで自分の家に持ってくるわけだが、大きな建物や豊かな人々は自分の家まで水道管を引いている。

 

 このための水道管は、ライの指導でコークス炉から出てくるタールから魔法で作った樹脂製のパイプであり、いくつかの口径のものが一応規格化されたが、作る魔法使いが未熟な人が多くその太さはまちまちであった。


それでも、いままで使われていた竹の節を抜いたものや陶管に比べれば、ずっと使い勝手の良いものであり、水道管を始めとして樹脂製パイプの製造業は大いに栄えた。なにより、太さがまちまちでも魔法で接続する際には殆ど障害にならなかったので、少々歪んでいようが、厚さがまちまちであろうが、一定の穴が連続して開いていれば問題なかった。


 しかし、ライの一つの人格である前世でエンジニアだったヒロトは大いに問題にし、鍛冶に依頼して5種類の口径の鋼製の水道管の見本を作った。魔法で何かを作る場合には、隣に見本を置いておけばそのコピー品を作ることは容易なのである。


 そのうえで、樹脂製の完全な見本を多数作って、それのコピーを作らせるようにして以来、水道管としての製品の少なくとも外見は、現在の日本製にあまり劣らない製品になった。パイプは産業・社会インフラにとって極めて重要なものであり、その製品が規格に沿った製品であることが必要なのである。


 ちなみに、魔法で樹脂を作りそれでパイプを形作るという手工業では、どうしても生産量に限界がありコストも高い。だからライとしては、石油精製によって樹脂は作れるので工業化としたいが、やりたいことが目白押しの現在は後回しになっている。


 ところで、時間を含めた度量衡単位は今や日本の一昔前のものに統一されている。しかし、重力加速度を考慮した地球での近年の単位系は煩雑であり、この世界の重力加速度は10.1m/秒^2であることもあって使っていない。

 結局、樹脂とその製品が魔法を使わず量産されるようになったのは、さらに3年後であり、それまでは魔法による樹脂パイプと鋼鉄・鋳鉄パイプが使われていた。


 ところで、自分の井戸を持っている人々は自分の井戸の水を使っているが、これは木製のバケツを井戸の上に設置した滑車で持ち上げるものであった。さらに、水路によって集落に水が輸送されてくる場合もある。

 この段階では、水魔法を使えるものは、前述のように近所まで引かれた水を自由に自分の家の中に持ち込むこともできたが、それ以外の人々はバケツに汲んで運ぶしかなかった。


 領で公共事業として行う水道事業に関しては、地区ごとに高さ10m以上の高架水槽を作ってそこから各家庭に水道管で水を引くというものであった。地区の受水槽からは高架水槽までは当然パイプで結ばれたが、当然その高さの差10m以上は揚水の必要がある。この時点では電気はないためにポンプは使えないので、ここは当然水魔法である。


 水魔法を使える人々にとっては、パイプで繋がっている受水槽から高架水槽まで揚水することは極めて容易であるが、高架水槽が空になるまでにまた揚水の必要がある。そのため、魔法使いを2交代として、6時間ごとに揚水に従事させていた。それも最低で5地区程掛け持ちである。

 その分の賃金は出るとしても水魔法使いは忙しいのだ


 コークス工場から出る石炭ガスを用いた発電機が稼働を始めたのは2年前であり、その時点では電気モーターによるポンプが使われるようになり、水魔法使いは揚水の義務から解放された。ちなみに、モーター及びポンプはそのものを知っていれば製作は極めて簡単であり、魔法を使えれば余計に容易である。


 こうなると、風呂も各家にあるのが当然になっており、火魔法が使えるものがいない家は石炭ストーブで湯を沸かせるようになっている。家庭の台所の煮炊きについては、流石に石炭では煙が問題なので、コークスを作る際の副産物である軽油またはコークスそれ自体を用いている。


 石炭はシラムカラ領に良質の炭田があり、製鉄と各家庭の燃料として使われているが、製鉄用は当然一旦乾留してコークスとして用いている。コークス乾留炉は製鉄に必要なものであるが、この炉から出てくる多量の石炭ガス及び、タール、さらに軽油等については公害を起こさない利用法に知恵を絞る必要がある。


 とりわけ、石炭ガスは燃料になるが、一酸化炭素を高濃度に含んだ毒性の強いもので、家庭に配るのはパイプの品質に難がある現状では余りに危険なので、乾留炉の燃料に使ってさらに発電を行いさらに余剰分は燃焼させている。

 同じくコークス生産の副産物の軽油とタールは先述のように家庭の燃料、さらには樹脂の材料にしている。


 さらに、家の中の照明については絶対に必要なものだが、どうするかライも様々に試行錯誤した。コークス炉のガスを使って発電は行っているので、普通に考えて電球による明かりが可能であるが、発電機が出来たのは2年前であり、また各家庭に電力線を引くのは時間を要する。


 だから、ライとしては何か魔法によって明かりをつける方法を考えたかった。ライの家であるジュブラン家については、皆が基本のライトの魔法は使えるので、殆ど無意識に明かりを夜間に常時灯すことも可能である。しかし魔法を使えるのが均して1割5分程度という現実ではなにか人による魔法でないものが必要である。


 無論、ろうそくはすでに使われており、これは収入が増えた人々には節約するほどの事も無くなったが、如何にも暗い。そこで、当面はライの知識からランプを実用化して、植物油によって使っていたがこれもやはり暗い。魔法による明かりは様々に試みた。マナを貯めることのできる鉱物としてポーラスな石の一種がそれであることが判ったが、そのマナから魔法を使わずに、光を発する方法がなかなか見つからなかった。


 この点については、ライが様々に試行錯誤しているのを見ていた妹のミーシャが、マナが蓄えられた石片(マナ石と呼ばれるようになった)に鉄の線を差し込んで、その先端にメランと呼ばれている透明の結晶をくっつけることで発光させることに成功した。


 こうなれば、機械的なスイッチを付けておけば、だれでも明かりの入り切りができ、マナ石の充填は、魔力の全くない人はいないから、誰でも5日に1回程度1分から20分程度魔力を使ってできる。魔法を使える魔力の強い人は短い時間で、身体強化しかできないような魔力の弱い人は充填に長い時間を要する。


 このマナ石とメランを結ぶ鉄線は、より効率の良い銅線になり、マナ石は一家庭に一つ備えられてそこから各照明等に配線するようになり、各照明器具にはスイッチが付いた。マナ石とメランは普遍的にみられる鉱物で、ザーシラ大森林とジュブラン領の境の鉄鉱山付近で大量に採取される。


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