表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/88

ライの目覚め1

もう一度、ハイファンタジーで書いてみます。

大体1話3500字くらいになると思います。

題のつけ方は節ごとに1,2,3とつけていきます。(例えばライの目覚め1、2、……)

週に最低2話は投稿するつもりです。


 ライは、川辺の平らな岩に座り込んで目を瞑り体内の魔力を巡らせていた。

 彼は“目覚めた”あの朝以来、このいわばウォーミングアップを続けている。これは、自分の体のなかにある、塊のような形で蓄えられている魔力を意識して、それを自由かつ精密に操るための基礎的な訓練である。


 つまり、いわばどろりと動きの悪い魔力をサラサラにして、素早く意のままに動かせるようにする自己鍛錬ということになる。彼の服装は、麻のような繊維で編んだTシャツのような上着に、紐で腰を絞めた半ズボンだ。足にはわらじのような草を編んで、紐で足に括り付けたサンダルを履いている。


 彼は8歳でありまだ幼いが、彼の人格は3人のものが混合して形成されている。その一つは、彼自身であるジュブラン男爵家の次男8歳のライ・マス・ジュブランであり、もう一つは同じライが22歳で殺された時のものである。さらにもう一つは、このラーナラ世界から言えば、異世界のニッポンという国の75歳で死んだ男のもので、その世界はカガクという学問が発達した社会だったらしく大変な物知りである。


 ライが、自らの前世と違う人格の記憶を取り戻したのはほんの15日前であった。彼は田舎の貧乏な男爵家の次男坊であるが、有能な父と優しい母、乱暴ではあるが優しいところもある5歳年上の兄、2歳下の可愛い妹に恵まれて、毎日をそれなりに楽しく過ごしていた。


 幸せであったと言ってもいいであろう。8歳の彼は、年にしては高めの身長で、毎日山野をかけまわっているおかげで、筋肉もそれなりについて動きは鋭敏である。母と兄から教えられる勉強については、覚えは良い方である。


 しかし、コツコツ努力することには向いていないようで、田舎の貴族の子供としては普通の勉強進捗レベルである。やんちゃであり、木を削った木剣でよく村の仲間とチャンバラごっこをして、同年代では敵はいないが、父が剣の天才と言う兄には全く歯が立たない。


 15日前のその朝、彼は突然襲ってきた頭の痛みに目が覚め、「う、ううー」とうめいて頭を抱えて転げまわった。どのくらいの時間そうしていたか解らないが、痛みが徐々に引いていくのを感じて心から安堵の気持ちが湧き出てくる。


 しかし、そこで自分が変わってしまったのに気が付いたのだ。ライはハッと意識が戻って目を開けた。『ありえない!』横たわって目に入ったそこには、懐かしい子供の頃からの部屋の、むき出しの屋根の骨組みが見える。しかし、骨組みはまだそんなに古くなく、ライが成長するにつれて、よじ登って様々に巻き付けた沢山の紐が見えない。


 彼は思わず体を触った。『小さい!』彼の最後の姿だったたくましい体付きではない。『若返っている!』彼は心の中で叫んだ。それでは、あれは事実だったのだ。彼は湧き出てくる憎悪と苦しみの中で歯を食いしばって記憶をたどった。


 彼は、サンダカン帝国の貴族である、金髪のあの若い将校に魔力で叩き落され、その衝撃による痛みの中で身動きができないままに、その男の剣が自分に迫ってくるのを憎しみの目で見つめるしかなかった。そして、その剣は彼の喉を切り裂き、その鋭い痛みに体が引きつり、どくどく流れでる何かを意識しながら急速に意識が失われていったのだ。


 また、彼は日本人の狭山博人でもあった。老年となって引退したエンジニアとして、穏やかな日々を送っていたある日急激な痛みに襲われ、そのままに意識を失ったのだ。多分あれは脳梗塞だったのだろう。 異世界人の人格であるヒロトはともかく、成人だったライは未来から時を遡って帰って来たことになる。


 そして、彼は8歳の自分が今後育つ中で、ジュブラン家とその家族が受けることになる過酷な運命、そして自らが剣に貫かれて死ぬことを“知っている”。ライは、自分が今こうしてあるのは、その運命を跳ねのけるためであると確信している。


 それは、多分偉大なる“ミーナル神”に与えられたもので、今後自分がその未来を変える運命の下に生まれ変わったのだ。これは、3つの人格の自分に目覚めて、数日の内に確固として居座った彼の信念である。結局、ライの人格は、確固とした信念と目標を持った、22歳だったライのもとに動かされることになったのだ。


 少年のライは、一通り魔力を巡らせてスムーズに魔力が巡るようになったことに満足して、目を見開き立ち上がった。すでに、彼の体には魔力が十分にめぐり“身体強化”の状態になっている。軽く右足で跳ぶと、1mほども跳びあがる。


 ちなみに長さ・距離・重量・時間等の単位に関しては、日本人だったヒロトの記憶から、彼の使っていた単位が無意識に適用されている。このサーマラ世界の、ライの住むラママール王国では、これらの厳密な単位はなくあいまいであるため、日本の尺度等が考えるには便利なのだ。


 しかし、大国であり、将来ラママール王国を滅ぼし、ライを殺すことになる、サンダカン帝国ではもっと厳密な単位等があると言われている。ライは、さらに左足、右足と数分軽いジャンプの後、力いっぱい岩から岸側の草むらに飛び移り、まばらな森の中に駆け込む。


 彼はその跳躍により10m程も跳んでおり、着地後彼は森の木や、灌木や草の群落を避けながら走る。全力ではないが、ジュブラン村の周囲約5㎞を、2周走り切れる速度で風を切って走る。“目覚める”前のライは、当然このように課した訓練としてのランニングはやってなく、到底村の周囲を走りぬくだけの体力はなかった。


 ライの中のヒロトにとっては、この自らの足で息を弾ませながら疾走するランニングは快感であった。75歳で死んだ彼は、死ぬ前の5年間は心臓が悪いうえに膝が痛く、到底走ることもできず、毎朝愛犬を連れて、ゆっくり自宅の周りを歩いて回るのが唯一の運動であった。それが、身体強化のお陰もあるが、空気抵抗が大きく感じるほどの速さで、多分10㎞ほどの距離を走って辛いほどの事もない。


 彼がその周辺を走っている村の中は畑の中に粗末な家がぽつぽつとあり、その畑は大部分小麦畑であり今は作付け前である。早朝の今、村人が畑を耕している姿があちこちに見える。作付けまで20日ほど、それまでに父と話をして、肥料を使用することを説得しなければならないと改めて思う。


 彼は、ランニングを終え、いつものように、ジュブラン家に近い広場に向かう。そこは、森に近い、100m四方程度の草原であり、子供の遊び場になっていて、頻繁に子供に踏まれて裸地になっている部分もある。すでに男女10人ほどの子供が集まっていて、ライが広場に入って来ると皆がそれぞれライに声をかけながら集まってくる。


「ああ、ライ様」

「おはよう、ライ様」

「おはよう」

「おはようございます。ライ兄様」


 人数は正確には11名、男7人、女4人で、ピンクの動きやすい服を着た妹のミーシャも加わっている。それぞれの歳は、最年少は妹の6歳から最年長の村長の息子ケビンの11歳である。


「おはよう、皆!では始めようか」

 ライが集まった皆に呼びかけると、皆はそれぞれライの方を向いて裸地になった広場に広がる。そこで、ライはいわゆるラジオ体操を始める。


「では、準備体操を始めます。まず、手を振って膝を曲げます!」

 ライの掛け声で、彼の動作を真似ながら皆が体操を始める。ライがこれを始めたのは7日前で、いつものように広場へ集まって遊びをしようとする皆に呼びかけて始めたのだ。


 ライは体操の後、皆に呼びかける。

「はい、ではその辺の草の上に座ってね。次は魔力を体に巡らせます。そのまま目を瞑って、魔力を意識してね。できましたか?」皆目を瞑ってライの言葉に順次コクコクと頷く。


 妹のミーシャが一番早いが、それほど時間をかけずに皆頷く。

「では、頭にある魔力をおなかのあたりまで巡らせてね。ぐるぐる。ぐるぐる、とね」

 しばらくして、ライがまた声をかける。


「はい、では立ち上がって、その魔力を、体の隅々に行きわたらせて!いいかな?」

「はい!」「はい!」「おう!」

 口々に答えるので、ライが呼びかける。

「軽く、片足で跳ぼう。それ、それ、それ、それ!」


 一番小さいミーシャですら1m近く左右に飛びあがる。

「よーし、次は辺りを軽く走りまわる。それはじめ!」

 皆は小さい子とは思えない鋭敏さで広場またその外まで走り回る。



名前を変更しました。

75歳の浩紀ヒロキ博人ヒロトとしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 3割目の 「 彼は、サンダカン帝国の貴族である、金髪のあの若い将校に魔力で叩き落され」っと、タイトルの説明文にも同じ文章がありますが、 叩き落され、という事はライは空でも飛んでいたんでしょう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ