第七章 20 新たな旅立ち
20 新たな旅立ち
「……ずいぶん時間が経ってしまったな。これほど話し込むつもりはなかったのだが、実際に話してみないとわからないものだ」
「構想の段階と、実際に物語になった場合とでは設定が異なってくるのと同じね。何事も、やってみなければわからないものよ」
「130,000テニエルは、これからこの部屋に持ってこさせよう。今日は遅くなったから、今夜も泊まっていきなさい」
「あなたたちがその気になったタイミングで、ここから新たに旅立っていけばいいわ。見送りには行けないから、私たちとはここでお別れだけど」
王と女王は立ち上がる。三人も席を立つ。
「ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ」
三人は頭を下げ、王と女王は微笑んで部屋を出て行く。
二人を見送った後、ユージナ、リユル、ヴァルルシャはまた椅子に座り込んだ。
「ふあー!」
「驚いたねぇ~!」
「濃密な時間でしたねー!」
三人は口々に、今聞いた話を反芻する。
「情報過多すぎて、あい、パンクしそう」
「でも、どれもこれももっともな話だったでねえ」
「……今の会話でも、世界が広がりましたよね」
そうしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。「はい、どうぞ」と返事をすると、今度は、王と女王ではなく、兵士が入ってきた。
兵士は上品な袋に包まれた金貨を、三人に一袋ずつ手渡した。その中には一枚10,000テニエルの、楕円形をした金色の大金貨が十三枚入っていた。
「うわっ、重い……」
リユルが思わずつぶやく。それだけの金貨になると重量もかなりある。大金、という感じがする。
「では、お部屋に案内します」
兵士はそう言い、三人と共に部屋を出て、来客用の建物に案内した。日は暮れかけ、空が赤くなっていた。
部屋には貴重品を入れられる鍵付きの金庫も設置されていたので、三人はそれぞれの部屋の金庫にもらった金貨をしまう。
やがて前日と同じように食事が振る舞われ、食堂を後にした三人は、自然と一つの部屋に集まる。
「いやー……びっくりしたねえ……」
食事をして人心地ついたユージナが、ソファーに体を沈める。
「ほんと。でも、これからも頑張らなきゃ、って気持ちにもなったよね」
同じくソファーに体を預けるリユルがうなずく。
「あれだけの大金、持ち歩くのは物騒ですから、手形屋に預けないといけませんね」
椅子に座るヴァルルシャが言う。
「うん。明日の朝には支度して、ここを出ようよ。いつまでもお世話になっとるのも気が引けるし」
「王宮を出たらまず、手形屋に行こうか。手形屋……これも、チラシを受け取った後で、あいたちがいろいろ設定を考えたんだよね」
「そうでしたね。名前が『銀行』では異世界感が無い、通帳のようなアイテムはどうしよう、などといろいろ話し合いましたよね」
「そうやって、うちら、いろんなことを決めてきたよね……」
三人はしばしその思い出にふける。
「明日からも、うちらはそうやってこの世界のことを決めないかんね」
やがて、ユージナが力強くそう言った。
「うん。そのためにはいろんなところに行かないとね。どこがいいだろう? ユマリさんの工場も行きたいよね」
「神様がいることも知りましたし、神様のいる地方を目指してもいいですよね」
「でもまず、この町を見て回りたくない? ルフエ島からここまで急いで移動してきたで、町を見とる余裕もなかったでさ」
そうだね、首都だからきっといろいろな物があるだろう。三人はそう話し、明日に備えて早めに眠りについた。
そして五月二十九日の朝、朝食をいただき、身支度を済ませた三人は、メイドたちに礼を言って王宮の門まで向かった。
空はよく晴れており、やや暑いが、風は涼しかった。
装飾的な模様の金属の門は開いており、門番が左右に立っている。その先には、首都シュトゥーンが広がっている。
「さあ、今日は何が起こるんかな?」
「楽しみだよね。今日も、明日も、これからも」
「ええ、ずっと旅を続けましょう」
三人は王宮の門を出て、新たな旅に向けて、足を踏み出した。
To Be Continued




