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オリキャラのキャキャキャ2  作者: 御餅屋ハコ
オリキャラのキャキャキャ2 第七章
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第七章 19 提示

19 提示


「うふふふふ!」

 女王が口に手を当てて笑い出した。

「驚かせてごめんなさい。ここにこうして指輪があるんだもの。指輪を無くしたエピソードは本当にあったことなのよ」

 女王はそう言って自分の左手を三人に向けた。薬指には確かに指輪がはまっている。

「妻が言いたかったのはな、そのように、我々の過去が確定したということだ。

 我々は創作物だ。作者が構想の段階でいくら過去を設定しても、作品に生かされなければ意味がない。君たちだって、かつての中二病臭い設定は無かったことにして、この世界の中で、新たに自分たちの過去や能力などを設定し直したのだろう。

 そしてそれはこの世界の中で、一般的な能力の魔物狩り屋として行動して初めて、確定したわけだ。

 指輪もそれと同じだ。君たちがルフエ島に行かなかったら、クラーケンと戦わなかったら、指輪は見つからなかったはずだ。

 いや、そもそも旅を途中で投げ出したら、物語を途中で放置したら、私たちとこうして会話することも無かっただろう。

 君たちがこの世界で行動を続けたことで、私たちの過去も確定したのだ」

 王も笑ってそう言った。

「……あ、ああ、そういうことですか」

「びっくりしました……指輪の話が嘘かもなんて言われたで……」

 リユルとユージナが息を吐く。

「……確かに、どんな設定を作られても、物語がそこまで進まなかったら、そんな設定は無いのと同じですよね……」

 ヴァルルシャが、かつて自分の書かれた物語が途中で終了したことを思い出しながらうなずいた。

 そんな三人を見つめながら、王はしっかりした声で続けた。

「君たちは指輪を探すための旅で、フーヌアデからフェネイリへの移動中も、コハンからルフエ島に渡るときも、船が魔物に襲われたそうだね。

 この世界で、船が魔物に襲われる頻度はそれほど高くない。なのに君たちが連続して魔物に遭遇したのは、いわゆる『主人公補正』というやつだ。

 私も妻も自分が創作物であると理解しているが、この世界における『主人公』は、君たち三人だと思っているよ」

 王の言葉に、三人は息をのむ。

「といっても、そこまで世界から贔屓されているわけじゃないわよ。

 あなたたたちが何か事件に遭遇することで、その解決に必要な設定が新たに作られ、確定していく。あなたたちの身に何も起こらないと世界観が広がらないから、あなたたちは事件に遭遇しやすくなってるの。それがあなたたちの『主人公補正』よ」

「もちろん、誰もが己の人生の主人公だ。それに、自分たちが創作物だという自覚があろうがなかろうが、このコオンテニウのすべてのものは作者とつながっている。そういう意味でも、すべての存在は主人公だ。

 だが、一つの冒険譚としてうまくまとまっている、『ファンタジー異世界の旅物語』が、その中心に有ってもいいだろう。

 作者が思いついた物語やキャラクターはどれもこれも、ラストまでたどり着かずに終わってしまったのだから」

「……そうですね……。だから私たちは、自分自身で動き出すことにしたんです」

 ヴァルルシャが静かに、しかし力強く言う。リユルとユージナもうなずく。

 闇の中で放置されているのはもううんざりだと自分たちで動き出した、あのときの気持ちは今も変わっていない。

「このコオンテニウに存在するものも皆、そう思っているよ。自分が創作物だという自覚の有無にかかわらずね。

 だから無意識のうちに、君たちが事件に遭遇するように行動するのだ。

 君たちが指輪探しのチラシを受け取ったことで始まったこの旅も、チラシを手にしたのは偶然ではなく、必然だったのだ。

 それは人間の行動に限った話ではない。

 魔物であっても、この世界の人々の普遍的無意識が影響を与えるため、君たちの前に現れやすいのだ」

「あっ、それで……!」

「うちら、やたらレアな魔物に遭遇するんだ……!」

 リユルとユージナが口を押さえる。船のナックラヴィーやクラーケンだけではない。三人は他の場所でも、エンカウント率の低い魔物に遭遇している。

「そう、あなたたちの主人公補正とは、そういうことよ。魔物狩り屋としてのあなたたちの能力は普通。それをあなたたちも望んでいるんでしょう。作者に依怙贔屓されたような能力は恥ずかしいから」

「君たちは今まで、この世界の設定をいろいろ考えてきただろう。だが、自分たちに都合のいい設定を作ってきたわけではないはずだ。

 君たちの目的は、この世界を広げること。地に足の着いた世界観の異世界を創造すること。

 それは、この世界のすべてのものが共通して持つ願いだ。

 だから、君たちにもっと動き回って欲しいのだ」

「各国の気候が、隣接する国でまるで異なるのもそのためよ。

 だってその方が、長距離を移動しなくてもいろんな気候の国に行けて、物語のバリエーションが増えるでしょ?

 あなたたちにそれを見聞きしてもらいたいの。主人公である、あなたたちに」

 王と女王は居住まいを正し、改めて三人に向けて言った。

「世界が君たちを主人公と認定していても、君たちの手にチラシが渡るまではタイミング良くいくが、世界の方で出来るのはそこまでだ。

 世界にお膳立てをされても、ルフエ島に行くかどうかを決めたのは君たち自身だからね。

 だから、君たちの意志の力でもって、旅を続けて欲しい。

 私たちは創作物だという自覚があっても、王と女王という立場上、自由には動けないのでな」

「設定の段階では未確定だったものが、あなたたちが行動することで、物語として確定する。

 あなたたちの役目は、世界を確定させること。

 それはこの世界全員が、無意識のうちに願っていること。

 だからあなたたちは様々な問題に遭遇するでしょう。でも、旅をやめないで欲しいの。

 主人公として、物語を、世界を動かし続けて欲しいのよ」

 王と女王の言葉を、ユージナ、リユル、ヴァルルシャは黙って聞いていた。

 そして、力強く、うなずいた。

「はい。あいたちも、もっとこの世界を見たいです」

「うちら自身も、この世界がどこまで広がっていくか、楽しみなんです」

「私たちは、旅を続けます」

 王と女王は、満足そうにその返事を聞いた。

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