第一章 09 町の夜
09
パンにパスタ、肉、野菜、卵、乳製品。陶器の皿の上のそれらを、金属のスプーンやフォークでいただく。三人はそれぞれ150テニエルほどの料理を注文し、腹を満たした。
「この町での夕ご飯もこれで最後かあ。でも、ファスタンの東には農地が広がっとって、そっち方面にセカンタがあるんだで、セカンタの料理もこんな感じなんかな?」
あまり広くないがすべての席で客が楽しそうに食事をしている店の中で、ユージナが言った。
「だといいですね。これだけメニューが豊富だと選ぶ楽しみもありますし」
ヴァルルシャがテーブルの上のメニューを手に取る。三人の目には日本語訳された文字で『葉野菜のサラダ』『鶏肉と野菜のパスタ』『根菜のシチュー』などと書かれているのが見える。
「ぶどう酒、とかお酒も書いてあるけど、あいたち頼んだこと無いね。なんでか、飲もうって気にならない」
リユルもそのメニューに目をやる。茶や果汁は何度も頼んでいるが、酒を注文したことは一度もなかった。
「うちは十八でリユルは十九だもんね。未成年だし……って、この世界の暦じゃ歳も変わってくるし、この世界で飲酒に年齢制限があるのかわからんけど」
「私は二十一ですけど私もお酒を飲みたいと思わないんですよね。……私たちみんな、作者が中学生や高校生の頃に作られたキャラですよね。つまり作者が未成年の時に作られたキャラなので、お酒に興味が無いのかもしれません」
「あっそうか! あいたち、作者自身がお酒の味を知らない頃に作られたんだもんね。だからお酒に対しての設定が無くて、興味がわかないのかも」
「普通、中高生が自分の考えたキャラに『大酒飲み』とか設定しんもんね。お酒を小道具にして話を進めることも考えつかんだろうしさ。そう考えると、やっぱうちらって作者とつながっとるんだね」
「この世界も私たちも、作者の中に蓄積した物で構成されているわけですからね。我々を作った時点で作者の中に無いものは、設定も無いのでしょうね」
「んーでも、『酒が嫌い』とか設定されたわけじゃなく、ただ設定が『無い』だけだから、これから設定を作ることはできるよね。とはいえ、あい、今はお酒を飲む気になれないなあ」
「明日馬車に乗るのに、具合が悪くなっても困るもんね。無理に今、お酒の設定を増やさんでもいいんと違う?」
「そうだね。慌てることないし、今はご飯だけでお腹いっぱいだもん」
「設定は最初にすべて決めなくても、物語が進んでいくうちに固まっていけばいい物かもしれませんね」
「なまじ最初に設定ばっか作りすぎると、うちみたいに設定だけで満足して放置されることになりかねんわ」
そして、放置が嫌になって自ら動き出した三人は笑いあった。
店での夕食を終え、三人は外に出た。夜の町は現代日本のネオン街ほどではないが、飲食店の明かりがともり、人通りもまだある。昼とは異なるざわめきの中、三人は宿に帰った。
宿にも夜の明かりがともっている。
この世界には二種類のランプがある。炎で明かりを得るランプと、魔法で光を得るランプだ。
前者は現実世界にもあるような、油に灯心をひたして燃やすもの。
後者は、光の精霊の力を『光池』に凝縮して使うもの。
『光池』……つまり、『電池』のようなものだ。
乾電池よりも少し大きめの角柱に、光の精霊の力を『池のように』溜めてある。それを専用のランプに入れ、少しずつ放出させる。
油がこぼれたり火事の原因になったりはしないが、光を放出し終えたら、充電ならぬ『充光の魔法』を使える精霊がいる店に行き、光を入れ直さないといけない。それがわずらわしいため、油を燃やすランプを使う人も多いという。
炎のランプと魔法のランプ、その二つを人々は状況に応じて使い分けているようだ。
三人が泊まっている宿のランプは、すべて光池タイプの物だった。宿なので火災が起きては困るし、空になった光池に充光の魔法を使うのも、まとまった数があるので頼みやすいのだろう。家庭では一つや二つの光池を充光するために精霊のいる店に行くより、油を買い置きして使う方が便利かもしれない。
宿の廊下には光池で光るランプが設置されており、夜でも周りが見えるようになっている。
客室にも一つずつランプがあり、それは持ち運びができるようになっている。木の箱にガラス瓶を埋め込んだような形で、バケツのような取っ手がついている。木箱部分のねじのようなスイッチをひねるとガラス部分に光が満ち、ねじの傾きで明るさが調節できる。
客室の出入り口の横の柱にはフックがあり、ランプはそこに吊り下げられている。それはそのまま部屋全体の明かりとして使えるし、ランプをフックから外して手元に置き、光を弱めてベッドライトのようにもできる。
三人はそれぞれの部屋に入り、ランプの明かりの下で風呂に入る支度をする。部屋に置いてある荷物から、風呂用手ぬぐいと替えの下着、寝間着を取り出す。この世界で初めての夜を迎えたとき、荷物の中からそれらと、身支度用の品々を見つけ出したのだ。以後、それを使っている。
風呂用の荷物を持ち、三人が廊下に出て部屋の鍵を閉めたところで、リユルが言った。
「そういえばさ、あいたち、荷物の中から櫛とか手鏡とか見つけたじゃない? 眉用の小はさみとカミソリもあったし、ヴァルルシャはひげそり用のカミソリもあるんだよね? あんまり使ってないらしいけど」
「ええ、私は体毛が薄いみたいで……」
作者は物語やキャラクターを想像するのが好きな学生だったので、リアルに異性と付き合ったことが無い。なのでヴァルルシャは、『髪は長いけれど体毛は薄い』という、少女漫画の王子様のような設定なのだ、リユルとユージナはそう推測していた。
「でさ、身支度用品の中に、耳かきや爪切りもあったよね? 一枚刃のカミソリとか、耳に入れる細い棒なんかは中世風の異世界にあってもおかしくないけど、爪切り、普通に日本で売ってるようなやつが荷物に入ってたよね」
リユルの言う爪切りとは、金属製で、やすりの部分を裏返すとIの字の形からVの字の形になり、上下の歯をかみ合わせて爪を切り落とすタイプの爪切りのことだ。
「そういえば……普通に荷物に入っとったし、ちり紙みたいなのも入っとったから、作者がやるように普通に爪切ってちり紙にくるんで廊下のゴミ箱に捨てとったけど、ああいう爪切りって本当はいつぐらいに作られたんだろうね」
ユージナが自分の持ち物の中にあった爪切りのことを思い出す。飛び散り防止用のプラスチックのカバーこそ無いが、構造は現代日本で見かける爪切りと同じだった。
「言われてみれば、ああいう爪切りはいつ生まれたんでしょうね。赤ちゃんの爪ははさみで切ると言いますし、はさみなら歴史が古かったと思いますが……利き手で無い方ではさみを持って爪を切るのは難しいですし、すでにあの形の爪切りを荷物の中から見つけてしまいましたからね」
三人は廊下に立ち止まってしばし考え込む。やがてユージナが言った。
「出てきたもんは、この世界にはある、ってことだよ。電化製品みたいな複雑な構造じゃないし、誰かが思いつけば発明されとってもおかしくないよ」
「……そうだね。はさみとかで切った方が異世界っぽいのかもしれないけど、あの形の爪切りがあった方が便利だし。全部金属だし、あってもおかしくないよね」
「はさみより使いやすい、爪を切る専用の道具が欲しい、と誰かが考え、開発したというのはありえる話ですよね。現代日本ほど大量生産していないので高い、ということはあるかもしれませんが」
三人は納得し、あまり廊下で長話をしていると他の宿泊客の迷惑になるので、階段を降りて風呂へ向かった。
宿の一階に男湯と女湯がある。
この世界で最初に風呂に入ったのは、自分たちが最初に現れたリスタトゥーの宿屋でのことだった。あえて自分たちで設定を考えず世界任せにしてみたのだが、快適な入浴施設がそこにあった。ファスタンの町の宿屋でも、宿屋の風呂場は同じような作りになっているようだ。
ヴァルルシャと別れ、ユージナとリユルが女湯の扉を開けると、まずは玄関のような土間がある。下駄箱があり、靴を脱いで温泉宿のような脱衣所に上がる。脱衣所には鍵のかかるロッカーが並んでおり、その手前に二つのかごがある。
『大タオル、一人一枚』と書かれたかごには折りたたまれたバスタオルが入っており、使用後は『使用済み』と書かれたかごに入れる仕組みだ。
手ぬぐいは宿泊客が持参するが、バスタオルは宿の備品として宿で借りられることにしよう。バスタオルを持ち歩くのはかさばるから。この世界で最初に風呂に入る前に、それだけは自分たちで設定を決めた。
そしてかごから大タオルを一枚取り、ロッカーを開けて着替えと共にしまう。服も脱いでロッカーに入れ、鍵をかける。ロッカーの鍵と風呂用手ぬぐいを持って浴室へ向かう。
脱衣所の先の扉を開けると、浴室がある。水はけのよい石造りで、数人が手足を伸ばして入れる広さの浴槽と、体を洗う場所がある。壁からは等間隔に蛇口が並んでおり、シャワーもある。石鹸と木製の椅子、木桶も蛇口のところに一つずつそろっている。
風呂の構造の設定は世界に任せたといっても、現代日本人の作者から生まれてきた物だ。中世ヨーロッパ風世界観のはずなのに、日本の温泉宿や銭湯のような雰囲気が漂っている。しかし、同じ作者から生まれてきた存在であるユージナたちにはこの方が使いやすかった。
中世ヨーロッパ風ファンタジー、とはいえ、衛生面や生活習慣は現代日本人の作者が心地良いと思う物の方がいい。それも含めて『ファンタジー』なのだ。ユージナたちはそう納得している。
日本の温泉宿でやるように、湯船につかる前に木桶で湯を汲んで体にかけ、ユージナとリユルは湯船に入った。
今は二人以外に風呂に入っている客はいなかった。
「そういえば、蛇口も普通にこの世界にあったけど、あれってほんとはいつできたんだろ」
湯船につかりながらユージナが言った。『ほんと』とは、現実世界の歴史で、という意味だ。
「そういえばそうだね。……でも、あれも金属だよね? 爪切りがあるんだし、蛇口も誰かが開発したんだよ」
そんな話をしながら二人は湯船につかり、湯から出て蛇口の前に行き、頭と体を洗った。備え付けの石鹸を使ってもいいが、高級なものを使いたければ宿泊客が自分で持ち込むスタイルになっている。
ユージナとリユルは日本の銭湯でやるような形で入浴を済ませ、脱衣所に戻った。バスタオルを使い、新しい下着と寝間着に着替える。
使用済みのバスタオルは脱衣所に設置されたかごに入れ、使用済みの下着と手ぬぐいを持ち、土間に下りる。土間には下駄箱以外に、一つの扉があった。
その扉を開けると、洗濯をする場所がある。
石造りの床の一部が、浅く広くくぼんでいる。壁には蛇口が並んでおり、その下に排水口がある。大きめの木桶が何個も置かれており、ギザギザを刻んだ洗濯板、石鹸も並んでいる。宿泊客はここで洗濯ができるのだ。
洗い場の天井近くにはロープが張られていて、そばにはハンガーと洗濯ばさみが置いてある。ロープは、風の当たる場所に張られている。
洗い場の、脱衣所側ではない壁の上部には窓があり、そこから熱風が噴き出している。その窓の向こうは、湯を温めるためのボイラー室だと思われた。窓は覗ける高さではなく、直接隣の部屋を確認したわけではない。だが、上水タンクから水を溜めて炎の精霊の力で加熱する仕組みがあり、その熱風を外に出す時の風の通り道に物干しのロープを張り、洗濯物を早く乾かせるようにしているのだろう。ユージナとリユルは、以前リスタトゥーの宿屋で同じような構造の洗い場を見た時、そう推測した。
そのとき、ボイラー室についてそれ以上は調べなかった。自分たちが設定しなくても世界の歯車がうまくかみ合って動いている。それを実感できただけでうれしかったし、ならば世界のすべてを自分たちで把握しなくてもいいと思ったからだ。
ユージナとリユルは下着と手ぬぐいを洗い、ハンガーにかけて干す。熱風が当たるので乾くのは早い。
最初にこの世界で風呂に入った後、男湯の方も同じような構造だと二人はヴァルルシャから聞いた。
洗い場は男湯と女湯の入り口の先にあるので、男女で別になっている。なので下着を干しても盗まれる心配はあまりないが、紛失の可能性はあるし、高級な上着を干した場合は誰かが盗まないとも限らない。なので、熱風に当ててある程度乾かしたら、早めに回収して自室で乾かすという形をとる宿泊客が多いようだ。
ユージナとリユルは洗濯物を干したまま、ひとまず自室に戻る。上履きを取り出し、履き替えてくつろぐ。最初は靴を履き替えるという発想がなかったので荷物からも上履きは見つからなかったが、靴屋で室内履きが売られているのを見つけ、購入した。現代日本のトラベル用品で見かけるような折り畳みスリッパで、一足100テニエル。
ユージナとリユルは部屋で肌にクリームを付けたり、髪に整髪料を付けたりする。自分たちの荷物に入っていた身支度用品にも基礎化粧品は入っていたが、使えば減るので、雑貨屋で買い足した。この世界でも、日本で買えるそれらと価格帯はそれほど変わりなかった。
「風よ……」
リユルが自分の髪を櫛でとかしながらつぶやくと、髪の周りに風が起こった。風の魔法をドライヤー代わりに使って髪を乾かしているのだ。熱風ではなく、扇風機が起こす風のように温度に変化はない。
魔物を倒せるような強い風は中級レベルだが、扇風機程度の風は初級レベルだ。魔法使いのリユルとヴァルルシャは共に、初級の風の魔法が使える設定にした。その方が日常生活に便利だからだ。
「お待たせ。ユージナの髪も乾かしたげる」
リユルがユージナの部屋に向かい、ユージナの髪にも同じことをする。風の魔法の初級レベルとはいえ、習得するには最低でも10,000テニエルは必要になる。魔法屋にその金額を払って習いに行くのだが、うまく習得できなければ通う期間と費用は増える。
魔法が全く使えないユージナは初級であっても習得は難しいと思い、一度は魔法屋で説明を聞いたものの、習いに行くのはやめた。そのためリユルがユージナの髪も乾かしている。
そうしていると、ヴァルルシャが風呂から戻ってきた。ヴァルルシャは三人の中で一番髪が長いので、風呂にかかる時間も長いのだ。ヴァルルシャも風の魔法で自分の髪を乾かし、櫛に絡まった長い抜け毛を廊下の隅のゴミ箱に捨てに行く。個室は狭いのでゴミ箱は無く、廊下の物を共用で使う。
共用なのはトイレと洗面所もだった。中世風とはいえ、各建物には精霊の力を利用した上水タンクと下水タンクがあり、水道が使えるという設定は考えた。だが、現代日本のビジネスホテルのように各部屋にトイレ、風呂、洗面所があるほどの贅沢な設定にはしなかった。風呂やトイレは共用なのが標準で、それがこの世界でいうビジネスホテルのようなもの、と考え、宿の設備や代金を決めた。
風呂と同じくトイレも男女別になっており、各階に一つずつある。
「ええと、房楊枝、房楊枝」
ユージナがつぶやいて自分の荷物の中からそれを取り出す。
異世界での歯磨きはどうするのだろうか。この世界での最初の夜にそういう疑問が出てきた。ユージナは作者の知識を探り、江戸時代には房楊枝という、木の枝の先端を叩き潰して房状にした歯ブラシがあったという情報を得た。三人は、それは生活用品で消耗品なので、宿屋でも売っているのではないかという推測をした。そしてその通り、房楊枝は宿屋で売られていた。十本で10テニエル。
三人はそれぞれ房楊枝を取り出し、トイレの手前の手洗い場に行って歯を磨く。
男女別のトイレの入り口をくぐると蛇口と流し台が並んでおり、手を洗ったり歯を磨いたり顔を洗ったりできるようになっている。その奥にトイレの個室が並んでいる。もちろん手の乾燥機などは無いのでハンカチ類を自分で持参する。
トイレは水洗で、最後はウォシュレットのように体を洗う仕様になっている。現代日本ほどトイレットペーパーを使える世界でいいのかと考えた結果、そうなったのだ。
個室の中に、陶器でできた腰掛のような便器がある。上水タンクからつながる管で個室内のタンクにも水が溜まっている。タンクからはホースが二本伸びていて、一つは使用後に水を流すために便器につながり、一つはウォシュレットのためのホースとなっている。
便器の横に消毒液の溜まった容器があり、ウォシュレット用のホースはそこに浸かっている。便器に座って用を足した後、そのホースを持ってきて水を流すレバーを引き、体を洗う。水は便器内に流すようにする。トイレットペーパーもわずかながらあり、手のひらサイズの紙が個室内に置かれているので、ウォシュレットを使った後に体の水気を拭く。
紙も便器の中に落とし、便器用のレバーを引くと、タンクに溜まっていた水が便器内の物を下水に押し流す仕組みだ。
作者にかつて書き途中で放置されたときは、トイレの設定など全くなかった。世界の構造の根源に触れる壮大な構想や、かたき討ちという非情な宿命などは想定されていたが、異世界の人々の日常生活というものはまるで重視されていなかったのだ。
だが、人間の生活において、排泄は必ず行うものであるし、そのための設備も必ず必要になる。そして異世界でも清潔な水洗トイレを使いたいと考え、三人でトイレの設定をこのように考えたのだ。それ以降、異世界でも快適にトイレを使えている。
歯磨きとトイレを済ませ、三人は風呂場に戻り、干していた洗濯物を回収した。ほぼ乾いているそれをリユルとヴァルルシャが風の魔法で完全に乾かす。
「明日、何時に起きよう?」
後は寝るばかりという状態になり、自室の前の廊下で、リユルが言った。
「刀と服がいつできるかにもよるけど、あんまり遅いといかんって貸馬屋さんが言っとったね」
寝る前の支度をすべてすませたユージナも、扉の前でそう答える。
「とりあえず朝の五刻に目覚ましをセットして支度を始めるのはどうですかね。余裕があるのに越したことは無いですし」
ヴァルルシャの言う時刻は朝の六時のことだ。目覚まし時計も最初は所持していなかったが、時計屋で三人それぞれが購入した。文字盤が八等分で時刻用の針が一本しかないこの世界の時計だ。鳴らしたい時刻にアラーム用の針を合わせると、時刻用の針がアラームの針に重なったときに、時計の上に乗ったベルが鳴る仕組みになっている。動力が電池でなくねじ巻き式である以外は、三人がよく知る目覚まし時計と同じ構造をしていた。
今、その時計はそれぞれの部屋の中で、左斜め上を指している。夜の八刻ごろ、夜の十時半前後だ。
「そうだね。じゃあ、そろそろ寝よっか。おやすみ」
リユルが言い、自分の部屋の扉を開ける。
「おやすみ。また明日ね」
ユージナが自分の部屋の扉をくぐる。
「おやすみなさい」
ヴァルルシャがそう言って自分の部屋の扉を閉める。
三人は目覚まし時計をセットし、明かりを消してそれぞれの部屋で眠りについた。