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オリキャラのキャキャキャ2  作者: 御餅屋ハコ
オリキャラのキャキャキャ2 第七章
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第七章 13 謁見

13 謁見


 五月二十八日。今日はついに国王との謁見の予定が組まれた。昼の三刻、現代で言う午後の三時まで、三人はどことなくそわそわしながら過ごした。

 そして予定の時刻が近づき、三人は王宮に案内される。

 王宮の中の、絨毯が敷かれた広いホール。

 左右には鉛色の制服を着た兵士が並んでいる。

 絨毯の先、床が何段か高く作られた場所に、立派な椅子に座った二人の人物がいる。

 王冠をかぶった男性と、ティアラを着けた女性だ。

 年齢は、現実世界の暦で四十代から五十代ぐらいだろうか。

 三十年前に婚約指輪を無くした、というのはこちらの世界の暦での話なので、それを現代の暦に換算すると二十四年ほど前になる。その頃が結婚適齢期ならば、今はこのぐらいの年齢だろう、と三人は納得した。

 メーンクゥン八世国王は、ふさふさしたひげを蓄え、穏やかな笑みを浮かべていた。猫のメインクーンに似ている、と三人は思った。

 メイ女王は、金色の髪を複数のお団子にまとめた髪型をしており、それがじゃがいものメイクイーンに似ていると三人は思った。

 女王はフランス人形のような素敵なドレスを着ていた。近くに鉛色の兵隊が並んでいることもあり、三人は、おもちゃが箱を飛び出していく童謡を思い出した。

 絨毯の上に立ち、緊張した面持ちの三人に、国王が声を掛けた。

「指輪を見つけてくれたそうだね。ありがとう」

 見た目通りの、穏やかな声だった。

「指輪が見つかったという知らせ、とても嬉しかったわ。特に今年の五月十五日は私たちの三十回目の結婚記念日ですもの。その直前に発見の知らせを受け取るなんて、なんという巡り合わせかしら」

 女王はいわゆる『女言葉』を使っていた。この世界を動かし始めたとき、今時の若い女は『女言葉』なんか使わない、もっと自然な口調でしゃべろう、とユージナとリユルは決めた。そしてそう決めたことで、この世界で『女言葉』をしゃべる女性には今まで遭遇しなかった。

 だが現実世界でも年配の女性は『女言葉』を使っている。この世界でも、年配や上流の女性は『女言葉』を使うということだろう。

「まさか木にはまっていたとはね。でも、確かに私たちが無くした指輪だったよ。少しかわいそうだが、枝を切って取り外させてもらった」

「今、こうして私の指にはまっているわ。切った枝は挿し木にして根付くように処理しているの。せっかくの記念の木ですもの」

 女王は左手を三人に向けた。薬指にその指輪がはまっているのが見える。

「結婚記念日のある五月の間に、こうして指輪を手にすることができて良かった。君たちには十分な報酬を与えよう。

 まず、指輪を見つけてくれたお礼として、一人100,000テニエルずつあげよう」

 日本円にして一人百万円だ。三人は黙ったまま息をのむ。

「それから、王宮に来ていただく費用は使者に払わせたけど、使者が到着するまで町で待機してもらったでしょう。それに、魔物狩り屋のあなたたちのお仕事をお休みさせているわよね。だからその分のお金として、更に30,000テニエルずつ差し上げるわ」

 一人三十万円だ。三人は更に息をのむ。

「それからね、お金だけじゃなく、もう一つ褒美を用意したから、受け取っておくれ」

 まだもらえる物があるのか。三人は息をのみすぎて苦しくなった。

 大きく息を吐く三人を見ながら、国王と女王は微笑んでいた。

「詳しいことは後ほど伝えよう。下がって休みなさい」

 国王がそう言い、三人は謁見の間を後にした。

 兵士に案内され、近くの控え室のような小部屋に通される。長いテーブルと椅子があり、三人は並んで腰掛ける。

 兵士が去り、部屋に自分たちだけになったところで、三人はそろって机に突っ伏した。

「緊張したあ~!」

「てか、でら気前いい! 一人130,000テニエルももらえるなんて!」

「しかも更にまだ何かくださるんですよね!」

 脱力した三人の口から次々に感想が漏れる。

 王様、猫っぽかった、女王様の髪型、じゃがいもぽかった、などと小声でひとしきり興奮を伝え合い、三人はようやく落ち着く。

「あい、国名が『リーメイクン』って知ったとき、名君が納めてそうな名前だなって思ったけど、確かに名君そうだよね」

 リユルが指輪探しのチラシを受け取ったときのことを思い出す。

「うちらチラシを見て、『リメイク』をもじって『リーメイクン』になったんだろうって話しとったよね」

「そこから更にもじって、王様の名前の由来が猫のメインクーン、女王様の名前がじゃがいものメイクイーンなんだろうって、私たち推測しましたよね」

 ユージナとヴァルルシャもそのときのことを思い出す。

「あれが四月一日のことだから、あれから約二ヶ月かあ……」

「チラシ受け取ったときは、うちらまだこの世界の暦のこと知らんかったんだよね。それからヴァルルシャが文房具屋で手帳を買って、それから仕立屋に行って……」

「そう、仕立屋でようやく、その日が四月一日だとわかったんですよね。それからもいろいろと、この世界の設定を決めたり、世界の方で決められた設定を知ったり、この二ヶ月で、知識がどんどん増えましたよね……」

 濃密な二ヶ月だったね、三人がそう感慨にふけっていると、部屋のドアがノックされた。

 もう一つの褒美なるものを、兵士が持ってきたのだろう。三人はそう思い、「はい、どうぞ」と返事をする。

 その返事を受けて扉が開かれ、二人の人物が部屋に入ってきた。

 それは、国王と女王だった。

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