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オリキャラのキャキャキャ2  作者: 御餅屋ハコ
オリキャラのキャキャキャ2 第六章
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第六章 09 スフィアくん


09 スフィアくん


 双牙舎を出てからも、三人はしばらく無言だった。近くにカフェがあるのを見つけ、「あ、カフェがあるよ」「あそこにしましょうか」などと短い言葉を交わし、奥の席に座ってジュースを注文するまで、その雰囲気は続いた。

 注文を終え、店員が離れていったところで、リユルが大きく息を吐いた。

「ふあ~~~~! びっくりした~~~~!」

 そこでようやく、気まずい雰囲気が融解した。

「いきなりプロポーズだもんねえ」

「お母さんもいらっしゃいましたし」

 ユージナとヴァルルシャも、リユルが触れたのでやっとその話題に触れる。

「指輪、受け取ってあげないのかわいそうだったかな……。でも、結婚しますとも言えないしさ……」

 リユルは肩を落とす。

「そりゃそうだって。ユマリさんもわかってくれとったし、きっと今頃フォローしてもらっとるよ」

「そうですよ。というか、ユマリさんがお母さんだったんですね」

 プロポーズの衝撃でかすんでいたが、ユマリと再会したことも、ユマリの息子がスフィアだったことも十分な驚きだ。

 三人が双牙舎での出来事を反芻しているとジュースが運ばれてきたので、三人は喉を潤し、気持ちを落ち着ける。

「明日会ったらどんな顔しよう。あえて触れない方がいいのかなあ」

 ジュースを飲み干したリユルが頬杖をつく。

「それでいいんじゃないですか? スフィアくんも先走りすぎて恥ずかしくなってるころかもしれませんし……」

「うん、船で出会ったときのような、素敵なお姉さんしとればいいんと違う?」

「そうだねえ。スフィアくんも気まずいのは嫌だろうし……」

 リユルがそこまで言ったところで、ユージナが「スフィアくん? スフィアくん……」とつぶやいた。

「どうしたんです?」

「……いや、スフィアくんと出会ったとき、名前の由来なんだろねーってうちら話しとったけど、わかったかもしれん」

 スフィア。球体や天体を意味する英単語だ。彼だけ普通の英単語が名前に? とルフエ島行きの船で三人は疑問に思った。その答えがわかったというユージナの言葉に、リユルとヴァルルシャは耳を傾ける。

「スフィアくんのお母さんの名前がユマリで、お父さんがハニーでお姉さんがミーファでしょ? ユマリって、……みんなジュース飲み終わったで言うけど、日本の古語で『おしっこ』だって前言ったでしょ?」

 ユージナは声を潜めて言う。近くの席に客はいない。

 日本神話に、イザナミがヒノカグツチを産んで死ぬエピソードがある。ユマリの名を聞いたとき、ユージナが真っ先にそのことを思い出した。ユージナは東洋人の姿なので、作者が持つ日本の知識にシンクロしやすいからだ。

「イザナミが死ぬときに尿、ユマリから生まれたのがミツハノメとワクムスビで、大便、これは古語でも糞だったと思うけど、そこから生まれたのが、土の神、ハニヤスビコとハニヤスビメだった……はず。

 だで、旦那さんの『ハニー』はダーリンとかの意味でなくそう言う名前で、土の神から来とると思うし、お姉さんの『ミーファ』はミツハノメから来とると思うんだよね。だったらスフィアくんもこの辺から名前が来とるはずだよね。

 で、うちらみんな、『スフィアくん』て呼んどるでしょ。

 スフィアくん……すふぃあくん……すひあくん……すひわくん……すひわくむ……すひわくむすひわくむすひ、わくむすび、ワクムスビ、から来とるんじゃないかな?」

 ユージナの説に、二人は考え込んだ。

「えー……ちょっと強引すぎる気がするけど……」

「それに、くん付けも含めて名前の由来というのは、今までに無いパターンですよね……」

「あっでも、うちらがスフィアくんをくん付けしとるのは、スフィアくんが子供だででしょ。ワクムスビの『ワク』って、『若い』って意味があったはずだよ。だで、くん付けも含めた語呂合わせでワクムスビが由来になっとると……思うんは考えすぎかな?」

 少し考えて、リユルが言った。

「……作者の無意識が名付けに反映されてるってことなら、ユージナの考えは正しいのかもね。でも、ユマリさんはきっと、ユマリさんの考えで、スフィア、って名前が良いものだと思って付けたんだよ。スフィアくんはスフィアくん。ユマリさんはユマリさん。この世界では、日本神話とか関係なく、それぞれの人生において、この国の言葉で、付けられた名前なんだよ」

 ユージナは少し黙り、答えた。

「……そうだね。ごめん。うちらだけがわかる由来にそこまでこだわる必要なかったね」

「いや、謝ることはないよ。あいだって町の名前の元ネタとか考えるのは楽しいしさ。野菜とかの名前はネーミングが雑すぎて想像の余地も無かったけど」

「野菜は確かにそうでしたね……。ああ、そういえば、この世界の言語ってどうなってるんでしょうね。以前、後回しにしましたけど」

 ヴァルルシャが話題を変えた。

「私たちが今使っている言語は、私たちには日本語訳されて目や耳に入ってきているという建前ですが、町名や人名から察するに、ヨーロッパ風の言語ではありますよね」

「そだね。世界観も、中世ヨーロッパ風ファンタジーなんだし」

 リユルもその話題に乗り、ユージナも続いた。

「ルフエ島でも言葉が通じとるで、リーメイクンの国から出んければ、今話しとる言語しか知らんでもなんとかなりそうだよね。ただ、いつかはうちの出身国のことも考えないかんだろうし、この世界には言語が一つしか無い、って設定にはもうできんよね」

「うん。それに、もっといろんなところを旅して回りたいよね。『ファンタジー異世界で冒険の旅がしたい』っていうのは、作者の、そしてあいたちの願望なんだし。

 あっそういえば、スフィアくんが船で学校のことを教えてくれたよね。旅の魔物狩り屋とかにも、ほぼ無料で基礎的な読み書きは教えてくれるって。てことは、外国語を教える学校もあるんじゃない? そっちはそれなりにお金がかかりそうだけど」

「ああ、確かに、日本における英会話教室みたいなところがあってもおかしくないですね。ということは、言語が異なる国に行く場合、私たちはそういう学校に通って、日本で英語を勉強するように、この世界の言語を勉強すればいいんですかね」

「作者は英語すら覚えられんかったのに、うちらが外国語なんて覚えられる? ていうか、言語を丸ごと設定しないかんわけだけど、そんなん作者の能力を超えとらん? 馬車とか船とかは、作者が中世ファンタジー好きだで、記憶の底に知識が蓄積しとったかもしれんけどさ」

「うーん、そこは……あいたちが外国語を覚える必要に迫られたときに、また考えようか。警察の設定みたいに、作者の無意識がうまいこと調整つけるかもしんないしさ」

 それもそうか、警察……双牙舎も、必要になったらちゃんと出てきた、この世界の警察はあんな感じなんだ、そんな話をして三人は休憩を終え、店を後にした。

 日暮れにはまだ早い時間だったので、三人はまた少し町を歩き、日が落ちるころに夕飯を食べた。宿に戻り、明日の支度をして眠りについた。

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