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オリキャラのキャキャキャ2  作者: 御餅屋ハコ
オリキャラのキャキャキャ2 第五章
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第五章 06 植物の名前1


06 植物の名前1


 広場の周辺はマス目のように地面が区切られていた。そこは畑や花壇のようになっており、マス目ごとに同じ種類の植物が植えられているようだ。

 広場の一番近くにあったのは、背丈が人間の膝ぐらいで、こんもりした葉の茂る上に小さい花が咲いている植物の並ぶ花壇だった。だが手前に立てられた看板を読むと、それは花を観賞する植物ではなさそうだった。

『ジャンガ芋

 地下の芋部分を食用とする。荒れた土地でもよく育つため、世界中で栽培されている。芽の部分に毒があるため、調理の際には芽を取り除かなければならない』

「じゃがいもだ」

 三人は声を潜めてささやき合った。

「どこの料理でもちょくちょくお芋入っとったし、じゃがいもっぽいなーとは思っとったけど、多分あの芋がこれだよね!」

「そういえば小学校でじゃがいもって育てたけど、花はこんな感じだった気がする!」

「それがこの世界におけるじゃがいも……ジャンガ芋というわけですね……!」

 幸いまだほかに客はおらず、三人は存分に驚くことができた。興奮を抑えきれないまま隣のマス目に進む。そこにも背が低くこんもりした葉が地面近くにたくさん茂っていた。花もところどころに咲いており、手前の看板にはこう書かれていた。

『サチュンマ芋

 地下の芋部分を食用とする。ジャンガ芋同様、荒れた土地でもよく育つ。ジャンガ芋と違って毒はなく、甘みが強い。料理だけでなくお菓子にもよく使われる』

「さつまいもだ!」

 三人は小さい声で驚き合う。

「さつまいもの花ってこんなんだっけ?」

 ユージナが首をかしげる。数は多くないが、アサガオのようなラッパ型の花が葉の間に少し咲いていた。

「さつまいもではなく、サチュンマ芋ですからね……。私たちの知るさつまいもと、少しは違う部分もあるのかもしれません」

「そういえば、この世界の季節ってどうなってるんだろ? 今が四月で、一年が十月までってのはヴァルルシャが買った手帳でわかったけど、何月がどの季節に対応してるんだろうね?」

 リユルが疑問を口にする。

「花が咲いとるで、今は春か夏ぐらいって気がするけど……」

「今日も過ごしやすい温度ですしね。ただ、ルフエ島は気候が独特だそうですから、同じ月でも島の外とは気候が違うかもしれませんね」

「確か、王様の結婚記念日は五月十五日だったよね。現実世界じゃジューンブライドで六月に結婚するのがいいって言うけど、この世界にもそういうジンクスってあるのかな? ジューンブライドは六月がヨーロッパだと季候のいい時期だからで、日本じゃ梅雨だから結婚式に向いてる時期でもないけど、日本でもそれなりに定着してるよね」

「船で定期的に行き来しとるで、ジンクスも伝わっとるかもしれんね。それにこの島と外とは日本とヨーロッパほども離れとらんし」

「伝書トーハ……鳥で情報のやりとりができる距離ですしね」

 三人はそう話しながら、次のマス目に歩いて行った。

 そこには、人間の腰ぐらいの高さの植物が並んでいた。丸い実がたくさんついており、緑色の実が熟すにつれて赤くなっていくようだ。

『マトマ

 実を食用とする。生でも加熱でも多くの料理に使われている。品種によって甘味や酸味の強さ、実の大きさや固さが異なる』

「トマトだ」

「トマトだねえ」

 三人はうなずき、次のマス目へ行く。

 トマト、いやマトマと同じぐらいの背丈の植物が並んでいる。実はマトマより固そうで、筒型をしていた。

『カプリパ

 実を食用とする。実は品種によって赤、黄、緑、紫、白、さまざまな色があり、味が異なる』

「パプリカですね」

「だねえ」

 その次とさらに次のマス目は、似たような植物が並んでいた。どちらも大きな葉が玉のように丸まっている。

『レスタ

 葉を食用とする。キャツベに似るが、葉を切ると乳のような白い液体が出る』

『キャツベ

 葉を食用とする。レスタに似るが、レスタより肉厚で、切ってもレスタのような白い液体は出ない』

「レタスとキャベツだ」

「ネーミングがどれも雑すぎん?」

「そもそも『フルーエ湖』や『ルフエ島』も、『エルフ』の簡単なアナグラムですしね……」

 三人は小声で話し合い、その辺りのマス目を見て回った。にんじんらしき植物が植えられている場所には『ロキャット』、大根かカブらしき植物の場所には『ディラッシュ』、たまねぎらしき植物の場所には『ニオニン』という名前が書かれていた。

 広場の周辺は、食用の農作物として持ち込まれた植物を展示していた。ルフエ島に持ち込まれたということは、島の外の農地でもこれらを栽培しているということだ。

「あいたち、いままでいっぱいおいしいもの食べてきたけど、その名前がようやくわかったね」

「畑も何度も見かけたけど、こういうのが育てられとったんだね。それがうちらのご飯になっとったんだ」

「食事内容は現代日本の水準に近くて、現実の中世の庶民がそこまで豊かな食生活だったかは疑問ですけど、ここは異世界ですからね。私たちの……そして作者の理想が優先されてもいいですよね」

「うん。育ててくれる人に……そして料理を作ってくれる人に感謝だね」

 リユルが言い、三人はうなずいた。

 植物の植えられたマス目とマス目の間は、歩行用の通路になっていた。通路には時折、道案内の看板が立っている。

 島の外からもたらされた植物の展示は東西にまだ続き、先の方には観賞用の花のコーナーがあると看板に書かれていた。

 だが、ここで道を北に曲がると、島の内外で共通して生える植物の区画に行けるようだ。

 そろそろ中央の区画にも行ってみようと、三人は道を北に進んだ。

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