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オリキャラのキャキャキャ2  作者: 御餅屋ハコ
オリキャラのキャキャキャ2 第四章
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第四章 08 鑑定屋

08 鑑定屋


 木々の茂みを抜けてコハンの町に戻り、三人は鑑定屋を探した。町の西側の大きな通り沿いに鑑定屋はあった。道を挟んだ正面に時計塔がある。鑑定屋は基本的に、町の時計塔の近くに設置されているようだ。今、時計の針は右下、4の手前あたりを指していた。現実世界で言う夕方の四時ごろだ。

 三人は『鑑定屋・コハン』の看板が掲げられた建物に入る。他に魔物狩り屋らしき人はおらず、すぐに窓口に行くことができた。人間の女性の職員と、女性型の鑑定屋の精霊、コハン・カンティーが三人を迎えた。カウンターに三つの蓄光石を差し出す。蓄光石はどれも銀色に輝いていた。

「では、鑑定いたします。こちらの蓄光石に蓄積された功績は……652テニエル、652テニエル、652テニエルとなります」

 精霊は落ち着いた声で金額を告げた。

「一日の宿代ぐらいにはなりましたね」

 ヴァルルシャが言い、ユージナとリユルもうなずいた。

「精霊の鑑定にお間違いはございませんか? でしたら、お金を準備いたします」

 人間の職員が尋ね、三人は準備が整うのを待つ。待っている間にユージナが精霊に聞いた。

「ねえ、木獣とシェリーコートって一匹がいくらぐらいするん? あ、葉獣も」

 精霊は穏やかに微笑みながら答えた。

「木獣は一匹が約500テニエルです。シェリーコートも一匹が約500テニエルです。葉獣は一匹が約200テニエルですね。個体差がありますので同じ魔物でも金額は一匹ごとに異なります」

「ええと、てことはあいたち、今日は木獣を一匹、シェリーコートと葉獣を二匹ずつ倒したから、三人で割るとだいたいこんなもんか」

 リユルが大まかな計算をする。やがてその金額、652テニエルが三つ、トレイに乗せられてカウンターの上に並べられた。

「では、こちらの蓄光石の光を、これだけのお金と交換いたします。ご確認ください」

 人間の職員が言い、三人は金額を確認する。

「では、光を吸い取らせていただきます」

 精霊が蓄光石に手をかざし、蓄光石は黒色に戻った。

「またよろしくお願いします」

 職員と精霊がそろって頭を下げる。三人はカウンターを離れ、壁の方に向かった。

 壁には地図と、掲示板がある。

 地図にはコハンの町とその周辺が描かれていた。地図の上半分はフルーエ湖だったが、湖は地図の中には納まりきらず、南の一部分が描かれただけで終わっていた。ルフエ島も描かれておらず、地図の北側部分に『この先、ルフエ島』という記述があるだけだった。

 地図の中央、湖と陸との境目にコハンの町が描かれていた。町の左右の岸辺は何もなかったが、岸を右になぞっていくと、湖沿いに木々が広がっている図が描かれていた。

「今日、あいたちが行ったところだね」

「うん。あんまり遠くへは行かんかったで、この辺かな?」

 リユルとユージナが地図を指さす。地図に描かれた木々は町に近いところはまばらだったが、町から遠くなるにつれて大きく広がっていた。地図の表記はざっくりしているが、今日行った場所の様子から想像するに、実際には町の近くに小さな藪が途切れ途切れにあり、さらに遠くに行くと木々が途切れず大きな森になっているという感じだろう。

「地図の左……町の西側も同じように木々が広がっていますね。明日はこちらに行ってみましょうか。今日よりもう少し多く魔物を倒せば、一日の宿代と食事代、両方賄えるぐらいの稼ぎにはなりますよね」

 ヴァルルシャが地図の左側を見て言う。

「そだね。日帰りで行けるぐらいの距離だとそんなに森が深くないで、あんまり強い魔物は出てこんかもしれんけど、強い魔物じゃなくても何匹も倒せばいいんだもんね。今日だってもう少し森におったらあと何匹か倒せたかもしれんし」

「この町を拠点にするなら、あんまり遠出はできないよね。でも今はそんなに強い魔物を探さなくてもいいよね。あいたちもうすぐまた船に乗るんだし、無茶して怪我でもしたら切符が無駄になっちゃうもん」

 三人はそう話し合い、目線を地図の下の方に向けた。

 コハンの町からは南にまっすぐ伸びる街道が描かれており、地図の下側で途切れるところに『この先、フェネイリの町』と書かれていた。

 コハンの町からはもう一つ、南西に伸びる街道が描かれていた。それは地図の左下で途切れ、『この先、ノーソーンの町』という記述があった。

「ああ、南西にも街道があったんですね。フェネイリ方面の街道の左右は農地でしたし、この辺りの農作物は、この二つの街道を使って大きな町に運ばれているのかもしれませんね」

 ヴァルルシャがそう推測した。

「あれ? でも確か、フェネイリの鑑定屋で見た地図には、西にノーソーンの町、東にマナヴィーの町っていうのが無かったっけ? コハンとノーソーンをつなぐ街道があるのなら、コハンとマナヴィーをつなぐ街道があってもいいのにね」

 リユルが以前見た地図を思い出しながら首をかしげる。

「地形的に、直通するのが難しいとかの理由があるんですかね。それにフェネイリの東西に二つの町があると言っても、どちらも同じ距離にあるとは限りませんよ。マナヴィーは結構遠くにあるのかもしれません」

「ああそれに、王様のチラシにルフエ島への行き方は書いてあったけど、フェネイリから北に行けってだけだったよね。それ以外のルートって書かれとらんかったことない? フェネイリは大きな港町だでコハンの代わりに名前が出とるんだと思うけど、例えばフルーエ湖の北とか東西にも町があってルフエ島と船で行き来しとるんなら、そのことがチラシに書かれとってもいいよね。でもなんの記述もないってことは、ルフエ島行きの船が出とる町はコハンしか無いってことじゃないかな。だで、この町の左右に広がっとる森、ずいぶん遠くまで広がっとるんと違う? もしかしたら、フルーエ湖の周りは基本的に全部森で、開けとるのはコハンの町がある南の一部分だけなのかもしれんよ」

「そっか。地図には森はここまでしか描かれてないけど、だんだん広がってる感じだもん、この先もぶわっと大きくなってるのかもね。それで湖の周辺だけじゃなく、マナヴィー方面にも森が続いてるのかも。だからこの町から直接マナヴィーには行けないのかもね」

「私たちがフェネイリからの街道で見た限りでは道の両側は農作地でしたし、今日この町の東側に出た時も、北には湖、南には農地が見えましたよね。でも人間の身長で見える範囲ですものね。西側はノーソーンへの街道があるわけですし、ずっと農地が広がっていて小さな農村などもたくさんありそうですが、東側に街道が無いということは、農地もあまり多くなく、しばらく行くとお二人の言うように森が広がっているのかもしれませんね」

 三人は納得し、隣の掲示板に目を向けた。

 木の掲示板には、こう書かれた紙が鋲で貼り付けられている。

『魔王予報』

『現在、魔王発生の予測はありません』

 どの町の鑑定屋にもある掲示板だ。

 魔王が発生しそうになったら、『魔王出没注意』という張り紙が増えるはずだ。

「やっぱり魔王はなかなか発生しないんですね」

 ヴァルルシャが言う。この掲示板は三人が設定した物ではない。だから初めて目にしたときは天気予報のようだと三人は思ったが、今ではすっかり慣れた。

「そういやさ、この掲示板って、お店とかが精霊を使った分と、うちらが退治した魔物の分とを差し引きして、魔王が出るかどうかを予想しとるんだよねえ」

 ユージナが自分の首から下げた蓄光石を服の上から撫でる。

 人間が精霊を便利に使えば、それだけ精霊のストレスが溜まる。そのストレスが魔物という形として現れ、人間に牙をむく。魔物退治の量が少なければ、それだけ強い魔物が生まれる可能性が高まるのだ。

「うん。だから蓄光石にはあんまりお金を貯めないで、こまめに鑑定屋に換金しに来た方がいいんだよね」

「でもさ、お店が精霊を使う方は、国に毎月税金を払うって話だで国がその合計を把握しとるのはわかるけど、うちらがこうして換金した分って、国はいつ知るん? 鑑定屋は町に一つずつだで鑑定屋の中では毎日集計しとるのかもしれんけど、それが国に報告されるのっていつだろ? 船や馬車で隣町に行くのだって何日もかかるよねえ」

 ユージナの疑問に、リユルもヴァルルシャも考え込んだ。

「確かに……。例えば一ヶ月ごとに鑑定屋が国に報告書みたいなのを出してるとしても、『今月は魔物狩り屋がみんな疲れててあんまり魔物を倒してません』って場合、その報告が国に伝わるのが遅くなるわけだよね。てことはあいたちがこまめに鑑定屋に換金しに来てもタイムラグがあるわけだから、すぐには魔王予報に反映されないってことになるよね」

「……それとも、精霊の使用量と魔物退治の量は、国ではなく各町で集計してその差を調べているんでしょうか。『この町での精霊の使用量に比べ、町周辺の魔物退治の量が少ないから、この町の近くに魔王が出る』ということをこうして掲示板に貼りだしているとか……」

「んーでもさ、蓄光石に溜まった光はどの町でも換金してもらえるでしょ? それに人里離れたところにも魔物はおるし、むしろひと気が無いところこそ魔物が出やすいわけだで、その町の鑑定屋で換金したからってその町の近所で魔物を倒したとは限らんと思うよ。……てことはやっぱり、国ぐらいの単位で使用量と退治量を把握しとるんかなあ。なんか、魔法的なアイテムみたいなのを使って……。

 あそうか、情報をやりとりすればいいんだで、手紙みたいな物を送るんでもよくない? 江戸時代にも飛脚がおったわけだしさ、手紙なら何日かに一回ぐらいの頻度で国に報告することも出来るんじゃないかな」

 ユージナが周りに他の人がいない事を確認してから、飛脚という言葉を口にした。

「ああ、確かに書類なら軽いですものね。そういえば街道を行くときも、馬車でなく馬にまたがって移動する人を見かけましたね。それならかなり早く移動できるでしょうし、そうやって郵便物を届けるシステムがこの世界にもあるのかもしれませんね」

「……あいたちの推測が正しいかどうかは、ちょっとそこの受付に行って聞いてみればわかるだろうけど、でも、あえて正解を知らなくてもいいかなって気がする。だってあいたちが知らなくても世界は機能してるんだもん、今知らなくても問題ないことまで無理に把握しなくてもいいかなって。長息人やルフエ島も実際にこの目で見るまでのお楽しみにしてるし、たくさん知らない事があった方が、これから知る楽しみがあるからワクワク出来るよね」

 リユルがいい、ユージナもヴァルルシャも笑顔でうなずいた。

 三人は鑑定屋を出て、宿に戻って少し休憩した。それから夕食を食べる店を探し、貝の料理をたくさん食べた。

 それから宿に帰ってくつろぎ、明日は町の西側に行って魔物を探そうと話し合って一日を終えた。


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