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オリキャラのキャキャキャ2  作者: 御餅屋ハコ
オリキャラのキャキャキャ2 第四章
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第四章 07 水辺の魔物


07 水辺の魔物


 弁当を食べ終え、トイレのあるところまで戻り、三人は昼の休憩を終えた。新たな魔物を探し、もう一度木々の茂みの中を進む。

 やがて、水の音が聞こえ始めた。川のような流れる音ではない。広々とたたえられた水がさざ波を立てる音だ。

「湖だ」

 ユージナが声を上げた。木々の茂みの隙間から湖の水面が見える。茂みを抜けると視界が開け、広々とした湖を見渡すことができた。

「けっこう湖のギリギリまで木が生えてるんだね」

 リユルの言う通り、木は水際に近いところから生えていた。だが草地になっている空間もあり、三人が立っているのはそういう場所だった。

「茂みの中は薄暗かったですけど、外に出ると結構明るいですね。昼頃ということもあるでしょうが」

 ヴァルルシャが空を見上げる。雲は無く、太陽は空の中央辺りで光を放っていた。湖もそれを反射してキラキラ輝いている。

「水辺に来たで、水関係の魔物がおるかもしれんね」

 ユージナは水面を覗くが、魔物らしきものの姿は見られなかった。

「ちょっと、水際に沿って歩いてみましょうか」

 ヴァルルシャが言い、三人は湖のほとりを、町から遠ざかる東方面に向かって歩き始めた。

 時おり弱い風が吹き、木々の葉を揺らす。湖はさざ波の音を立てている。静かなその空間に、草や小枝を踏み分けて進む三人の足音が響く。

 やがてその中に、ぱしゃん、と水の音が響いた。

 三人は顔を見合わせ、湖の方に目をやる。

「魚? ……じゃないよね。もっと大きい感じがする」

 リユルが水面を見て言う。水面には波紋が広がっていたが、それは魚が跳ねたにしては大きな揺れだった。

「魔物が出てきたんかもしれんね」

 ユージナが刀の柄に手をかける。

 この辺りの岸は直線ではなく、少し湖に張り出したり引っ込んだりしていた。そして水際から木が生えているところも多いので、死角になる部分も多かった。湖自体は広々と見渡せ、水平線もよく見えるが、近場の方が見通しが悪かった。

 波紋の発生源は三人がさっき通り過ぎた低木の向こうのようで、三人が今いる場所からは木々に遮られて様子が見えなかった。

「行ってみましょう」

 ヴァルルシャが言い、三人は警戒しながら音のした方へ進む。身構えつつ木々の隙間から湖を覗き込むが、水面の波紋は小さくなって消えていくところだった。

 その時、左の方から音が聞こえた。小さくて硬い物がたくさん集まり、ぶつかり合って立てるカチャカチャ、ジャラジャラというような音だった。

「あっ!!」

 三人の一番左側、音に最も近いところにいたヴァルルシャが声を上げ、身をかわす。何かがヴァルルシャに突進してきたのだ。

 リユルとユージナも戦闘態勢を取り、走り抜けたものを目で追う。

 三人の視線の先には、初めて遭遇する魔物がいた。

 大きさは、人間の三分の一ぐらい。形も人間のような二足歩行をするものの姿で、頭と胴と手足があった。だが服は着ておらず、水草と貝殻をひもでつないだものを服のように身に付けていた。

「これ……知ってる……確か……」

 リユルが記憶を探り、ヴァルルシャが言葉を続ける。

「ええ、確か、『シェリーコート』……。文字通り、貝殻の服、ですね……」

 作者が昔、本で読んだ記憶。それは外国の伝承にある、貝殻をまとった小鬼のような存在だったはずだ。

「貝殻の服を着とる、てことは貝の住んどる水場じゃないと現れん魔物だよね。湖で捕れた貝、町でいっぱい売っとったし」

 そう言うユージナを、シェリーコートは冷たい目で見据える。敵意しかない魔物の目だった。

「確か、本にはシェリーコートってそこまで凶暴だとかは書いてなかったよね? 人を惑わせて川に落とすとかだっけ? それだってたちが悪いけど……。そんなに大きくないし、この世界でもそんなに強くないのかな?」

 リユルは記憶を探りながら相手の出方をうかがう。下手に動くよりその方がいいと思ったからだ。

「でも魔物ですから、小さいから弱いとは限らないですよね……」

 ヴァルルシャがそこまで言ったとき、シェリーコートが動いた。己の服から貝殻をむしり取り、振りかぶって投げつけてきたのだ。

「ひゃっ!!」

 リユルが身をかわす。貝殻はリユルの背後の木に当たり、硬い音を響かせた後、地面に落ちる途中で消えていった。

 シェリーコートが服をちぎった部分には新たな貝殻が生まれ、元通りになる。

「こんな攻撃してくるって本に書いたったっけ? 音で人を惑わす、日本の妖怪で言う小豆荒いとか川赤子みたいなことするだけの存在じゃなかったっけ?」

 ユージナが詳しいことを思い出そうとする。が、それ以上は思い出せなかった。

「この世界のシェリーコートはこういう存在、こういう設定なんでしょうね。……おっと!」

 シェリーコートは今度はヴァルルシャに向かって貝殻を投げつけてきたので、ヴァルルシャが体をひねる。

「岩よ!」

 姿勢を戻し、精神を集中していたリユルが魔法を発動させる。それに気づいたシェリーコートは、岩が体に当たる前に飛び跳ねて攻撃を避けた。

「現実の伝承がどんなでも、この世界では人間に敵意しかない魔物なんだもん、倒すだけだよ!」

 リユルが言い、次の魔法のための精神集中に入る。

「そうだね。そこそこ強くないとお金にもならんし!」

 ユージナが逃げるシェリーコートを追いかけ、刀を振り下ろす。刀はシェリーコートの服をかすめ、貝殻をいくつか切り落とした。だがそれらはすぐに元通りになる。

「エネルギーの塊みたいなもんだから、貝殻はすぐに再生するんだ」

 ユージナがそれを理解する。服とはいえ切りつけられてユージナをにらみつけるシェリーコートの背後から、ヴァルルシャが魔法を投げつける。

「炎よ!」

 シェリーコートはそこそこ素早いが、葉獣より体が大きいため、葉獣より攻撃を当てやすい。やはり炎の魔法は効くようで、シェリーコートはうめき声を上げた。だが三人が次の攻撃に移る前に、シェリーコートはフルーエ湖の中に飛び込んでしまった。

「あっ、くそっ……」

 一番近くにいたユージナがシェリーコートの行方を目で追う。湖の水は澄んでおり、飛び込んだ直後はまだその姿が見えていた。だがすぐに岸から離れたところまで泳いでいってしまい、陸からは確認できなくなってしまった。

「追いかける……わけにはいかないよね」

 リユルが岸辺で踏みとどまる。普通の靴で水に入るのは危険だろう。岸でさえ水際まで木が生えていたりして、広く平らな歩きやすい場所というわけではないのだ。

「逃げたというよりは、私たちに反撃するチャンスをうかがっているという感じですよね」

 ヴァルルシャが水面を見回して警戒する。

「待っとれば、そのうち出てきそうだよね」

 ユージナが刀を抜いたまま、あたりの物音に注意を向ける。

 やがて、横の方から、ぱしゃん、という水音が聞こえた。

「いたっ……岩よ!」

「炎よ!」

 三人から少し離れた岸辺に、シェリーコートが姿を現した。準備をしていたリユルとヴァルルシャが魔法を発動させる。魔法はどちらもシェリーコートに命中し、ダメージを与えた。

「とどめだ!」

 ユージナがシェリーコートのところまで走っていき、一太刀を浴びせる。シェリーコートは断末魔を上げるが、最後に貝殻をむしり取り、ユージナの顔に向かって投げつけた。

「痛っ!」

 投げられたのは大きめの二枚貝だった。ユージナはそれが顔に当たる前に左腕でガードした。ユージナの左腕に痛みが走る。貝殻はユージナの左腕に傷をつけた後、地面に落ちる前に消えていった。シェリーコートも度重なる攻撃を受け、その体が消滅していく。光がその場にいるユージナと、離れたところから駆け寄るリユルとヴァルルシャの蓄光石に吸いこまれていく。

「大丈夫!?」

 リユルの問いに、ユージナは刀を鞘に戻しながら、「うん、まあ……」とうなずく。だがその表情は渋かった。

「ああ、血が出てますね。ここだけですか? 他に痛むところは?」

 ヴァルルシャがユージナの左腕を見て言う。そこには長めの切り傷ができており、血がにじんでいた。

「傷はここだけかな……あんま深くはないと思うよ。そこまで痛くないし」

「でも怪我でしょ。ちゃんと治さなきゃ」

「ええ、私が回復魔法をかけますから」

 二人に言われ、ユージナはうなずく。

「うん……じゃあお願い」

 差し出したユージナの腕をヴァルルシャが手に取り、精神を集中する。

 ヴァルルシャもリユルも、中級の回復魔法が使える。このぐらいの怪我ならばヴァルルシャ一人の魔法で大丈夫だろう。

「傷よ……癒えよ」

 ヴァルルシャがユージナの傷を撫でるように魔法の力を込めると、傷がふさがり、ユージナの腕から痛みが消えた。

「ありがとう」

 ユージナは言い、右手で傷跡をぬぐった。引き裂かれていた皮膚がつながり、もう血はにじんでこない。

「シェリーコート、無事に倒せてよかったけど、最後に悪あがきされるとは思わんかったなあ」

 ユージナは水際にかがんで右手で水をすくい、左腕についた血を洗った。

「あいたちは魔法使いだからちょっと遠くからでも魔物に攻撃できるけど、刀は近くに行って切りつけないといけないもんね」

「直接攻撃をするユージナさんが一番反撃を食らいやすいですよね……。怪我をしたらすぐに教えてくださいね。私たちが治しますから」

「うん、ありがとう」

 三人は戦いを終え、一息ついた。

「それにしても、場所が変わるとやっぱり魔物も変わるんだね。木獣もシェリーコートも、あいたちのレベルで普通に倒せるぐらいの魔物だからちょうどよかったけど」

「この森はそこまで深くなさそうですからね。森というか藪というか……。だから魔物も、そこまで強くないのかもしれませんね」

「そんなこと言って油断しとると、でら強い魔物が出てきて焦ることになるかもしれんよ」

 三人は談笑した後、また魔物を探して歩き始めた。そしてもう一度シェリーコートに遭遇したが、一度戦ってコツをつかんでいるので、苦戦せず倒すことができた。

 まだ日暮れまでには時間があるが、ある程度の魔物は倒したし、今日はそろそろ町へ戻って鑑定屋に行ってみよう。三人はそう話し合い、コハンの町に戻ることにした。


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