第四章 04 魔物狩り
04 魔物狩り
四月十八日。目覚まし時計はこのところずっと朝の六刻、現代で言う七時半に鳴っている。三人は身支度をし、近くの店で朝食をとった。貝のスープとパンで50テニエル。
今日はコハンの町を出て魔物狩りをしようと決めていた。フルーエ湖の湖畔の、町が広がっていない部分には魔物が出るという話だからだ。
三人が泊まっている宿は町の東側にあったので、食事を終えた三人は町の東の湖畔を目指して歩き出す。開いている店で弁当を買いつつ進んでいくと、やがて建物がまばらになり、舗装されていた地面がむき出しの土に変わった。
「道、って感じじゃあないね」
足元を見ながらリユルが言う。地面はある程度踏み固められていたが、街道ほど道らしくはなっていなかった。
「人が歩かんわけではないけど、大勢が行き来するわけじゃないって感じだね」
町の中程からそのまま東に移動してきたので、町を出ても湖の波打ち際というわけではなく、湖までは距離があった。そのため足元も水気は少なく、固めの土と短めの草の生えた地面が広がっていた。
町を出て建物が無くなったため見晴らしがよく、距離があるとはいえ湖の様子がよく見えた。
「船が浮かんでますね」
ヴァルルシャの言う通り、湖には何艘かの船が浮かんでいた。どれも小型で、数人が乗れるだけの手漕ぎ船のようだ。
「釣りしとるみたいだね。水産物料理の店があるってことは、誰かが材料を捕ってきとるってことだもんね。ああしてうちらのご飯が作られとったんだ」
船は小さく、遠くてはっきりは見えないが、湖に釣り糸を垂らしたり、湖から網を引き揚げたりしているようだ。
「でも、湖全体に広がって漁をするって感じじゃなくて、船は町の近くにしか浮かんでないね。町から離れた場所には魔物が出る……ってのは、陸も海も同じだから? 特に小型の船だと魔物に狙われやすいとか。あいたちフェネイリ行きの船で魔物に襲われたけど、あれは帆船だし、乗ってる船が襲われるのは初めてだってユマリさんが言ってたから、こういう釣り船のケースとは違うよね」
「大きい船なら一艘だけでも何十人も乗っとるで、魔物も普通は襲ってこんけど、数人乗りの小さな船が一艘しかおらんと、魔物に狙われやすいのかもしれんね。だで、ああして町の近くに船を浮かべて魚を捕っとるんだ」
「……そういえば、立ち寄ることは無かったですけどギョーソンの町は漁村で、魚を捕る船はあるけれど他の町に行く船は無いって話でしたよね。ギョーソンもこんな風に、町に近いところに何艘も船を出す形で魚介類を捕ってたのかもしれませんね」
「大きな漁船を作って大勢で乗ったら魔物に襲われんかもしれんけど、大きな船を作るのは大変だろうし、風の魔法を使える人がおらんと動かせんもんね」
「ああ、それにフーヌアデやフェネイリも、魚介類はよく売られてたけど、港にああいう釣り船って無かったよね。整備された港で大勢の人や荷物を相手にできるのは大きな客船だけで、個人所有の小さい漁船は各自の家の近くに泊めてあって、漁師たちがその日の天候とかを見て町の近くに船を出すって感じなのかもね」
三人は納得し、町の外を東に歩き続けた。
しばらくの間は湖に浮かぶ漁船たちが見えていたが、町から遠くなるにつれて船の姿は見えなくなっていった。
その代わり、遠くに見えていた木々の茂みが近づいてくる。
コハンの町の東は、短い草の生える平原がしばらく広がり、北は湖、南は農地になっていた。東のずっと先には木々が茂っていた。だがその木々に深い森という印象はなく、湖の岸辺から木々が生えて広がった藪という感じだった。
藪と平原との境目あたりには公衆トイレが設置されていた。個室一つ、使用料金20テニエルの物が二基。
「トイレがある。ありがたいね。誰かが管理してくれてるんだね」
リユルがそう言いながら20テニエルの準備をする。
「町から離れてるとはいえ、そこまで遠くはないですからね。町に住んでいるどなたかがやってくださってるんでしょうね」
「街道沿いのトイレよりは高いけど、魔物のおるとこでトイレの心配しんくていいんだから安いぐらいだよ」
三人はトイレを利用し、魔物を求めて藪の中に入っていった。




