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オリキャラのキャキャキャ2  作者: 御餅屋ハコ
オリキャラのキャキャキャ2 第三章
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第三章 02 生理の話


02 生理の話


 船室に戻った三人は、フェネイリに着いてからどう過ごすかについて話し合った。

 フーヌアデの宿は、港に近い方が高かった。おそらくフェネイリの宿もそうだろう。フェネイリに何日も滞在するなら、なるべく港から離れた場所で宿を探した方がいいだろう。日暮れまで安い宿を探して歩き、鑑定屋を見かけたらそこで昨日戦った分を換金しよう。三人でそう決めていった。

「船にはお風呂無かったし、あい、今夜は宿屋でゆっくりお風呂入ってのんびりベッドで寝たいな。薬は明日の朝でいい?」

「うん。うちも明日の朝にするわ。生理だと気軽に寝返りもうてんもんね」

「えっ、何で寝返りできないんですか?」

 尋ねるヴァルルシャに、リユルが答えた。

「変な姿勢で寝ると血が漏れるからね。血は布をあてがって吸わせるわけだけど、吸収力には限界があるし、体が横向いてたりすると、血が体をつたって服の方に染みちゃうわけ。だから生理中は気軽に寝返りもうてないの」

「日本のテレビCMで『多い日でも安心!』『生理中でも普段通り!』『寝返りだってうてちゃう!』とかよく言っとるけど、漏れるときは漏れるでさあ」

「そうだったんですか……大変ですね……」

 ヴァルルシャがそこまで言ったところで、ユージナがヴァルルシャに向き直った。

「ヴァルルシャは男の人だでさ、こういう話はうちとリユルだけでしとったらいいのかもしれん。

 でも、一緒に旅をしとるんだで、ちゃんと話をしないといかんと思うんだ。

 生理が来ても何事も無いように過ごすことは難しいんだよ。だって実際に具合は悪くなるんだから。

 腹が痛かったり、腹が重かったり、そういうわかりやすい苦痛じゃなくても、血がたくさん出るで貧血になったり、気が滅入ったり。そういうのが全く無い人でも、体から出た血の処理はしないといかんし。何事かは起こるんだよ。生理の時の女は普段の状態と違うの。

 それを隠して普段と同じようにふるまうのは、うちはおかしいと思っとった。具合が悪くても、男にそれを知られるのは恥ずかしいこと。生理であることを理由に何かを休むのは、良くないこと、甘えとること。そんな空気が現実世界にはまだある。どんなに生理痛で苦しんどっても、痛み止めを飲んで、痛くないふりをして過ごさなきゃならん。それはおかしい。

 心身ともに全く苦痛が無い人は普段通り過ごせばいいけど、苦痛がある人でも、それを隠してまで何事も無いようにふるまうのは不自然だと思う。

 だで、せめてこの世界では、生理の時の体調不良を隠さなくてもいいようにしたいと思ったんだ。

 そのためには、男の人に、女が生理の時にどうなるか、きちんと伝えないといかんはず。女が隠しとったら男の人にはずっとわからんままになる。それで何となく、口にするのは恥ずかしいこと、触れちゃいけないこと、そんな感じで生理がタブー視されていって、生理痛になってもそれを隠して過ごさなきゃならん世界になっていく。

 そんな世界にしたくないで、ヴァルルシャにも生理の話は隠さないで言おう、そう思ったんだ」

 ユージナの話を、ヴァルルシャは黙って聞いていた。

「……そうだね。何日も体調に変化があって、旅に影響が出るものなんだから、情報は共有しないと。あいたち、前の生理の時もヴァルルシャに話はしたけど、まだわかんないこといっぱいあるでしょ」

 リユルに言われ、ヴァルルシャはうなずいた。

「そうですね。実体験するわけではないので想像で補うしかないですし、想像だけでは理解できない部分もありますから。どういう風に具合が悪いのか教えてもらえれば、こちらも対応しやすいですし。だからお二人が嫌じゃなければ、隠さずに話してもらった方がありがたいです」

 ユージナは表情を緩めた。

「ありがとう。でも、ヴァルルシャにだから言えるんだよ。同じ作者から生まれたってわかっとるでさ。作者の記憶、女性的な部分はヴァルルシャには思い出しづらいみたいだけど、作者が生理痛で苦しんだ記憶とか、少しは頭に浮かんでこん?

 ヴァルルシャだったら生理の話をしても、からかったり嫌がったりせずに真面目に聞いてくれるはず……そんな安心感があるで、こっちも恥ずかしがらずに生理の話をしようって思えたんだ」

「そうだったんですか……。確かに、具体的なことは思い出せませんが、作者が憂鬱に過ごしていたような覚えはあります。私を信頼してもらえてるんですね。うれしいです」

 ヴァルルシャは微笑み、ユージナもほほ笑んだ。

「この世界ではもっと女が男に生理の話をするのが普通になってほしいし、そのためには、まずあいたちが仲間と話し合わないとね。

 ひとまず、明日から五日間ぐらいは旅は無理かな? 六日目ぐらいからはかなり楽だろうけど……街道沿いにあるっていう次の宿まで行けるかな?」

 リユルが問いかけ、ユージナとヴァルルシャが答える。

「体調はだいぶ良くなっとるだろうけど、ナプキン洗ったりしないといかんで、宿に着いてから時間がある方がいいよね。フェネイリから朝から晩まで歩き通し、だとちょっとつらいかも」

「鑑定屋で換金するときにでも、北の街道沿いの宿屋がどの程度の距離にあるか、聞いてみましょうか。それとお二人の体調と合わせて、何日後にフェネイリを発つか決めましょう」

「お天気の都合もあるよね。こないだみたいに雨に降られたら長距離を歩くのは大変だもん」

「街道は舗装されとらんだろうで、地面が乾いとる方がいいもんね」

「そう考えると、何かの理由でしばらく町に滞在するのは特別なことではないですね。私だって体調を崩すこともあるでしょうし。出発は焦らなくていいので、お二人でいいと思う日までゆっくりしてくださいね」

「ありがと。うちらに合わせてくれて」

「ヴァルルシャはいつも優しいよね」

「いえ、私も町でゆっくりしたいですし。月に一度、旅を休む期間があるのはいいと思いますよ」

 話し合いはそのようにまとまっていった。

 その間も、船は順調にフェネイリに向けて進んでいった。

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